スタジオジブリ・高畑勲監督の14年ぶり最新作『かぐや姫の物語』（11月23日公開）。これまでに見たことのないアニメーション表現で、日本最古の物語文学『竹取物語』の筋書きはそのままに、かぐや姫の物語を描き出す。主人公の“絶世の美女”かぐや姫を演じているのは、女優の朝倉あき。どことなくかぐや姫と朝倉さんの顔が似ていると思いませんか？

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　今作では、先に声を録り、その声に基づいて画を描くプレスコ（プレスコアリング）という方法を採用。音声収録は2011年夏に行っており、映画の完成前に亡くなった俳優の地井武男さん（2012年6月没）も翁役で出演する。あまりにも生き生きとした翁の声を聞くと「ひょっこり地井さんが現れそうな感じがします」と朝倉。「地井さんの全身全霊のお芝居を間近で見ることができて、本当に勉強になりました」と感謝する。

　そればかりではない。プレスコという方法をとったことで、作画スタッフは朝倉の声を毎日聞きながら、かぐや姫のイメージをふくらませ、共有し、作業を続けたという。かぐや姫が朝倉に似ているのは偶然ではない。

　かぐや姫の声を求めて、高畑監督はオーディションを決行。参加した数百人の中から選ばれたのが朝倉だった。

　「オーディションの時は、自分としてはボロボロで、やっている最中からこれはダメだと思っていました。それが悔しくて、泣きながら駅までの帰り道を歩いたことを覚えています。高畑監督に『私のどこがよかったのでしょうか』とうかがったら、『悲しみ方が良かった』とおっしゃっていました。どちらかと言うと引っ込み思案な自分のマイナス面を見透かされた感じがして、素直に喜べなかったのですが、そう言っていただいた部分も大事にしようと思いました」。

　朝倉も子どもの頃からジブリ作品が大好きだった。「ミーハーな気持ちを抑えて、音声収録に臨んでいましたし、自分がジブリ作品に関われたことがいまだに信じられない」と言う。

　「高畑監督って本当にすごい方だと思ったのは台本をいただいた時。自然の草木の様子から登場人物たちの気持ちまで、ものすごい量のト書きに、どれだけの思いが込められているのかと思ったら身震いしました。すごいものがきっと出来上がると思いましたし、初めて完成した映像を見て、本当に作ってしまったんだと勇気をもらいました。高畑監督が見てきたもののすべて、アニメーションで伝えたかったことのすべてを出し切ろうとするすごみを感じました。彼女を通してすべての人の生きる苦しみや悲しみを汲み取ろうとされているような、言葉にできない感動が押し寄せてきました」。

　声優初挑戦にして、日本人の誰もが知っている“絶世の美女”を演じるのは「難しかった」という。「かぐや姫自身が難しい女の子ですよね。わがままな女の子にも映るかもしれません。ただ素直で自分の感情に正直な子なので、心からそう思っている声、そういう気持ちを表した声を出すのにだいぶ苦労しました。でも、自分の持っている全てを出せたと今は思っています」。

　同作の音声収録を終えた後に、朝ドラ『純と愛』（NHK）や映画『横道世之介』などの撮影に参加した。作品が世に出るのに前後はあるが、朝倉は「『純と愛』の撮影をしながら考えたこと、『横道世之介』を撮影しながら感じたこと、この2年の間の全てが『かぐや姫の物語』に帰結するような気もします。この作品に関わってわかったのは、苦しみ抜いて得た答えが一番自分の中でしっくりくるということ。これから先、どんな作品、役柄と出会っても、自分の力を出し切るために、自ら進んで、とことん、苦しんでいこうと思います」。