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ヒット続出 デアゴスティーニのパートワーク・シリーズ

“ナレッジ・フォー・ライフ”のスローガンのもと 人々の心に潤いと喜びを与えるパートワーク

 消費不況、出版不況と呼ばれる中で、確実に売上を伸ばしているデアゴスティーニのパートワーク・シリーズ。88年の日本マーケット参入(デアゴスティーニ・ジャパン設立は95年)以来、数多くのタイトル(それぞれ60〜100号までシリーズ化)が刊行されている。分冊とはいわず、パートワークとしてブランド戦略を図り、また発売時の集中したテレビCMや書店での店頭展開、1号目の低価格戦略で、いずれも大ヒットを記録している。最近は、『ゴールデン・ポップス』や『美空ひばり こころの歌』『青春のうた』などの音楽シリーズも本格的にスタートしたデアゴスティーニ・ジャパン谷氏に顧客のニーズを捉えるマーケティングの秘訣を聞いた。

谷健二氏
(?デアゴスティーニ・ジャパン マーケティング/商品開発担当 上席執行役員)
「消費者のホンネを商品にダイレクトに反映させる」

――イタリアを拠点にし、創立100年以上の歴史を持つデアゴスティーニ社ですが、日本での創立は95年ということでよろしいのでしょうか。

谷 出版社という形での設立はそうなりますが、市場への参入という意味では88年にスタートしています。それまでは、日本の出版社と提携し、94年まで一緒にやってきましたが、95年からは、デアゴスティーニ・ジャパンとして、出版社としてひとり立ちしました。デアゴスティーニ・グループとしての世界戦略のなかで、日本進出はかなり遅いほうで、アジアでは初でした。

――出版の実績は創立時には確立していたと。

谷 営業面など一から始める業務もありましたが、我々は当初から他社とは違う難しい商品を扱ってきましたから、独自の出版ノウハウを持っていました。92年に『イングリッシュ・フォー・ユー』を創刊した際には、カセットテープを添付することが予想以上に難しかったのですが、今では独自のフォーマットで雑誌内に付録を折り込むことを可能にしています。日本オリジナルの手法です。

日本独自のマーケティング

――当初、日本で事業を開始する際には、どのようなマーケティングを考えられたのでしょうか。

谷 ほとんどのやり方はこれまで世界各国で行ってきた方法を踏襲しました。ただ、ヨーロッパと違う点を、あえて申し上げるとすれば、これまでにない新しいフォーマットによるビジネスモデルであるということを書店さんに理解いただくことに、かなりの力を入れたということです。我々が行っているパートワークというフォーマットでは、最初の2週間だけに集中して宣伝をして、その後はまったくメディアを使った宣伝はしません。だから第1号の売上げは高いのですが、第2号以降は必ず落ちていくことになります。稀に前号よりも売上げが上回るケースがありますが、それもすぐに落下カーブのなかに組み込まれていきます。それを見込んだ上で展開するビジネスなので、常に安定した部数を発行していきたい従来の雑誌の分野から見れば、奇異に見えるようです。

――右肩下がりの売れ行きを見越しているからこそ、創刊号の値段を他号よりも抑えているのですね。

谷 それも大きな要素のひとつです。ただ、特別定価という方法は最初から取り入れていたわけではありません。もともとは20万部を25万部にするにはどうすればいいか等々、売上げの幅を伸ばす工夫を考えていくなかで、創刊号と第2号を合わせることで、2冊分のバリューを1冊分の代金で購入できるようにするなどの特典を考えてきました。そういった新しいアイデアのなかから、「1号を低定価に」という案が出てきたのです。これにより、雑誌のテーマに興味を持つ、より多く人たちが購入してくれるようになりました。

――雑誌のテーマに関しては、海外での実績を踏まえて日本にもってきたものと、全くの日本オリジナルと思えるものがありますが。

谷 97年までは、海外で人気のオリジナル企画を多少改定したものや日本のトピックを入れてシリーズを再構成したものが、大半でした。97年に発売した医学百科『メディ・ファイル』は、基本コンセプトは海外で出版されたものと同じなのですが、大部分を日本で作ったという意味では、最初の日本オリジナルと言えるのではないでしょうか。

成功の要因は何か

――デアゴスティーニのシリーズのなかで、特に目覚しい実績をあげたものを教えていただけますか。

谷 90年に西洋の画家を特集した『グレート・アーティスト』を発売したんですが、これは驚異的な売上げを記録しました。それまで絵画を取り上げた雑誌は、専門誌ぐらいしかなく、1万部も売れれば上出来という時代だったのですが、当社で最初に刊行した際には、創刊号が56万部、最終的には全体で1500万部を売り上げました。日本に限らず、出版業界というのは、他社が成功した企画はとにかく同じようなものを出すことになっていますから、後続企画も多数出現しましたね。

――成功の要因はどこにあったと思われますか。

谷 パートワークらしさが最大限に発揮できるのはどんな企画だろうかと、調査したことがあるのですが、そこで分かったのは、できるだけ多くの潜在読者の方々が「このことについてはある程度知っていたいよね」と思うような「ユーザーの知識を刺激」する企画であるかということです。我々のスローガンである「ナレッジ・フォー・ライフ」はまさに、それを体現しているわけです。また、94年に発売された『クラシック・コレクション』なども同様の主旨から生まれたもので、大ヒットを記録しました。それとはまったく逆の方向性で『ワールド・エア・クラフト』というシリーズに代表されるようなマニア向けの商品も出しています。こういったタイプは第1号が爆発的に売れるわけではないものの、最後までそれほど数字が落ちないことが、事前の調査で判明しました。

『青春のうた』創刊号は62万部

――CDショップよりも数の多い書店で、CDを添付した雑誌が買えるというのも、画期的なことではないかと思います。

谷 典型的なケースは、94年にスタートした『クラシック・コレクション』でしょう。音楽業界の方はご存じだろうと思いますが、これ実は創刊号だけで180万部も売れたんです。書店1店平均で100部ということですから、小売の方にとってもかなり大きかったと思います。これを10冊セットで箱に入れて売ったわけですが、大型書店では配置しきれなくて、書棚の上のところにズラリと並べてあったりしたそうです。また、こうした大部数の売上げが影響して、翌年のCDショップでのクラシック売上げもアップしたそうです。


――最近ではこういった音楽関係の雑誌も充実されていますが、従来の雑誌と比べると、売れ行きの方は違いますか。

谷 概ねいい数字を残していますね。最新作の『青春のうた』は創刊号で62万部を売りました。その後も順調に売上げを伸ばしています。あと『日本のうた こころの歌』という童謡、唱歌を扱った雑誌も、通常のCDショップではあまり伸びない商品ながら健闘しています。音楽をテーマにしたものは、やはり音、つまりCDを付けないと話題にならない気がしますね。
 我々の企画は各レコード会社の協力があって実現するのですが、誤解を恐れずに申し上げれば、我々のビジネスモデルをして初めてこのような売上げに結びつくことは申し上げたいと思います。手に取りやすいスタイルの商品が、書店という手に取りやすい場所で売られているという点が、やはりいちばん大きいのではないでしょうか。今ではCDショップに足を運ばなくなった世代の方でも、書店には足を運ぶ人は多い。また彼らは昔は確実に音楽に熱中していたわけですし、今もその思いが薄れたはずではない。そういった方々が我々のテレビCMなどで当時の思い出を呼び起こしてもらい、近くの書店で商品を手に取ってもらう。
 もうひとつ大きな点は、例えば昨年発売した『ゴールデン・ポップス』や今年発売の『青春のうた』の場合、歌詞やミュージシャンの紹介だけでなく、雑誌部分には彼らが当時没頭した若者文化や社会背景までカバーし、ある意味では自分史を振り返るといった、音楽を聴くだけにとどまらない楽しみ=付加価値を提供しています。それが、我々が近年発売しているCD付マガジンの基本的なビジネスコンセプトになっています。我々の商品はテーマによってターゲットは異なりますが、多くの商品の主要な購買層は、経済的精神的に余裕のある中高年以上と捉えています。団塊世代引退の07年を目前に控え、今後も彼らの求める商品を企画していきたいと思います。

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    オリコントピックス

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