スティーヴ・アオキ、“トップDJ”であり続ける理由「常に変化すること」 来年日本で新プロジェクトを始動
「安定は私にとって快適ではないのです。同じスタイル、同じツールで活動したほうが効率的かもしれませんが、それはつまらないし、刺激がない。音楽だけではなく、食べ物、ファッション、ライフスタイルを含め、冒険的な人生を送りたい。そのスタンスが自分の音楽にも反映されていると思います。ダンスミュージックシーンは確かに流行の動きが早いですが、大切なのはトレンドを追うのではなく、自分の感性を信じることですね」
合作は10回に9回は失敗 BTSとのコラボは「とてもうまくいったケース」
「私は1年のうち300日くらいはライブをやっていて、世界中を回っているので、各国でいろいろなアーティストと出会うことができます。スペインでもブラジルでも、『これは誰?』と驚くようなアーティストがいれば、有名、無名かかわらず会うようにしていて。コラボレーションは簡単ではなく、10回に9回は失敗しますが、上手くいった時は『つながることができた』という実感を持てるんですよね。BTSとのコラボレーションは、とてもうまくいったケース。彼らは最初からオープンマインドで、まるでカジュアルに遊んでいるような感覚で曲を作ることができました。大事なのは、その国のカルチャーに対するリスペクト。お互いを尊重できないと、コラボレーションは成功しません」
「ライブはコミュニケーション。皆が好きな定番曲、少し変化を付けた曲を混ぜながら、興味を持ち続けられるように意識しています。ケーキを投げることは、『これこそ、スティーヴ・アオキのショーだ』という個性だし、オーディエンスにとっては忘れられない体験になると思うんですよね。10年前のライブでどんな曲をプレイをしたかなんて覚えていないだろうけど、『ケーキが耳に入った』とか『頭に付いたケーキを誰かがかじった』という体験は忘れないでしょう?(笑)。 ライブは耳だけではなく、すべての感覚で楽しむもの。そのなかには、味覚も入っているんですよ(笑)」
2020年、日本カルチャーを世界に発信する「新プロジェクト」を発足
「もともと私は日本人ですし、人生のなかで何度も日本を訪れています。あらゆる国のなかで一番好きだし、音楽はもちろん、ファッション、カルチャー、アート、人を含め、多くのインスピレーションを得られるんですよね。日本人の友人もたくさんいますし、日本での活動を見据えて、来日のたびにいろいろな種を蒔いてきた。20年はしっかりと時間を取って、その種を育てたいと思っています」
さらにスティーヴは、来年の早い時期に「新プロジェクト」を発足させることを表明。シンガー、ラッパー、DJなどはもちろん、スタイリスト、ゲーマー、ファッションデザイナーなども含めた、“クリエイター・コレクティブ”を立ち上げるという。
「いまやステージに上がるのはミュージシャンやDJだけではありません。日本には優れたアーティストやクリエイターが数多くいるし、皆さんの才能やセンスを集め、日本のいろいろな部分を表現できる場所を作りたいと思っています。排他的ではなく、多くの人が参加できるスペースにしたいですね」
「日本の文化に興味を持っている人は世界中にいますが、いまはその魅力が隠されている状態だと感じています。実際に日本に来て、見てみないとわからないこともたくさんあるし、今後はそれをどうプレゼンするかがカギになるでしょうね。私の新しいプロジェクトが世界に向けたゲートになることを期待しています」
BTS、BLACKPINKのブレイクなどをきっかけに、アジアの音楽に大きな注目が集まっている現在。日本のアーティストが世界で活躍する可能性を聞いてみると、彼は笑顔でこう答えた。
「私がやれているんだから、できますよ。音楽は『ユニバーサル・ランゲージ』であり、世界中に共通している文化なので。そういうマインドセットを持って活動することが、まずは大事だと思います」
文/森朋之