インスタでも話題の17歳のジャズピアニスト・甲田まひる、プロも認める才能の原点とは
バド・パウエルとセロニアス・モンクに衝撃を受けて、自分でコピー
甲田 ありがとうございます。
――受賞のお話を聞いたときはどう思いましたか。
甲田 最初に聞いたときはやっぱり驚きましたね。作品が完成して、いろいろな人から感想が聞けて、リリースの実感はわいていたのですが、それに加えて賞という、目に見えるものをいただくのは光栄なこと。まず、評価してくださる方がいたというのがうれしかったです。
――当時16歳で、こんなに優れた作品を作ったというのは意外でした。
甲田 もともとは5歳からクラシックピアノをやっていたのですが、当時習っていた先生が、クラシックをジャズとかラテンにアレンジするのが好きな方で。それを弾いていると、クラシックに比べて楽しい気持ちになったり、響きとかコードが気持ちよくて、徐々に自分でもジャズをやりたいと思うようになりました。
――どんな勉強をしていたんですか。
甲田 お母さんもジャズを聴いたことがなかったので、一緒に図書館に行って、名盤と言われるものを借りてきて2人で聴くことから始めました。そこでバド・パウエルとセロニアス・モンクに衝撃を受けて、自分でコピーを始めました。クラシックとは別に、小学4年から、ジャズのレッスンにも月一で通っていました。
――即興演奏(インプロヴィゼーション)はすぐにできた?
甲田 いえ、最初は耳でコピーした即興演奏の音を楽譜に起こして、それで練習しました。
18歳の間にはリリースを。ジャズとは違った音源を出したい
甲田 いろいろなピアニストを聴いたんですが、もともとクラシックがピンとこなかったので、ビル・エヴァンスとかオスカー・ピーターソンのような、きれいな演奏にあまり惹かれなくて……。バド・パウエルとセロニアス・モンクも、彼らの精神状態が不安定な頃に惹かれたり。ボロボロの時代の演奏が大好きなんです(笑)。それから、モンクはファッションもカッコいいなと思っていました。
――甲田さんはジャズピアニストである一方、フォロワー13万人超を持つインスタグラマーでもあります。フォローしてくれている人たちにも、自分の音楽を聴いてもらいたいと思いますか。
甲田 はい、私たちの世代はジャズを聴かない子が多いので、今回もそういう人たちに「ジャズっていいな」と思えるようなものを作りたかったんです。だから、ジャケットを可愛らしくしたりとか、若い子向けのテイストを入れるようにしました。
――アルバムタイトルにもなっている「PLANKTON」は、甲田さんのオリジナル作品ですが、他の曲と違って、とても今っぽい曲だなと思いました。
甲田 最初はオリジナルを入れる予定がなかったんですけれど、収録曲にビバップ(ジャズの演奏形態の1つ)が多いなかで、自分らしいものもやらないと面白くないなと思って、急きょ作って入れさせてもらいました。そうしたら作品のなかで、いい感じに浮いた印象になって。それは自分が狙っていたものでもあります。
――次回作の予定を聞かせてください。
甲田 来月18歳になるので、10代の間にはリリースしたいと思っています。実は今、ブラックミュージックとかヒップホップとか、エレクトリック調のものを作ったり演奏しているので、ジャズとは違った音源を出せるように頑張っています。歌も歌いたいと昔から思っていましたし。
授賞式で配布された資料には、甲田について「天性のリズム感性はポップで、ヒップホップにも通じるものがある。閉鎖的なジャズの世界にこだわらない新しい世代のピアニスト」と説明されている。ジャズにこだわらず、自らのスタイルを常に変化させながら、これまでにない斬新な表現で新たな音楽を生み出してくれることを楽しみにしたい。
『PLANKTON』
ドラムスにジャズ界の俊英、石若駿、ベースにKing Gnuのベーシスト新井和輝を迎えたデビュー作。収録曲は「クレオパトラの夢」「ルビー・マイ・ディア」「ウン・ポコ・ロ−コ」など、バド・パウエルやセロニアス・モンクの名曲の他、甲田まひるのオリジナル2曲も収録。(提供:ソニー・ミュージックダイレクト)