大原櫻子が語る個人事務所設立の覚悟「恵まれた環境では生き残っていけない時代」

 デビュー5周年を迎えた大原櫻子が、ベストアルバム『CAM ON!〜5th Anniversary Best〜』を発売した。オーディションでヒロイン役の座を射止め、13年12月に佐藤健主演の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』で女優デビュー。同作は音楽業界を舞台に人気クリエイター(佐藤)と、ある日、才能を見出され歌手デビューすることになる女子高校生との恋模様を描いた物語で、大原はその役のごとくCDデビューも果たし、以降、女優と歌手の“二足のわらじ”を履き独自のポジションを築いてきた。そんななか、昨年10月には個人マネジメント会社を設立。「自分自身で考え、動いて、チャレンジすることが成長に繋がっていく」と考え、デビュー5周年の節目に新たな一歩を踏み出している。現在、23歳。大きな決意の裏にはどのような想いがあったのだろうか?

少し立ち止まりたいと思った時期にNYへ一人旅に「あれこれ思い悩むよりも、とにかく前に」

──ベストアルバム『CAM ON!〜5th Anniversary Best〜』に収録の23曲は、大原さんご自身でセレクトしたそうですね。
大原 はい。この1月に23歳を迎えたので23曲入れましょうということになり、どの曲を入れたらみなさんが喜んでくれるかなと考えて、ネットでいろいろリサーチしてみたんですね。そうしたら、意外とリードになっていない曲を、「ライブでこの曲が好きになった!」と挙げてくれている方も多くて。なので、ライブでみんなの笑顔が浮かぶような曲を中心にセレクトしてみました。特にDisc2はその傾向が強いですね。ライブですごく盛り上がる「Jet Set Music!」や「READY GO!」といったナンバーを頭の方に持ってきたり。
── 一方でDisc1はソロデビュー曲の「サンキュー。」に始まり、最新アルバム『Enjoy』(18年6月27日発売)からの曲も収録され、櫻子さんの5年間がギュッと凝縮されている感じがします。
大原 タイトルの『CAM ON!〜』というのは、ベトナム語で「ありがとう」という意味なんです。だけど英語風に読むとカモン、「さあ、行こう!」という意味にもなって、5年間の感謝と「これからもよろしくね」という2つの思いを込めています。そういう意味でも、最初に「サンキュー。」を持ってくるのは自然な流れだったかなと思います。

──初回限定盤に付属されるMV集では、櫻子さん自ら副音声の解説を収録されていますが、曲とともにどんな思い出が蘇ってきましたか?
大原 その当時の楽しかった出来事とか、悩んでいたこととか──。悩みというほどではないんですけど、8枚目のシングル「さよなら」(17年11月発売)を出した頃、少し立ち止まって考える時間が欲しいなと思った時期があって、MVを撮影した後にニューヨークへ1人旅に出かけたんです。3泊5日の超弾丸旅行だったんですけど、3日間で3本のブロードウェイミュージカルを観て役者さんの実力に圧倒されたり、いつかこんな場所で歌ってみたいと思える場所も訪れることができて、なんだか自分の小ささを思い知らされた旅でした。あれこれ思い悩むよりも、とにかく前に進もうというきっかけになりましたね。

芸能界が大きな変革期に来ている? 個人事務所を立ち上げた思いにあったもの

──昨年10月に個人事務所を立ち上げられたのは、先ほどおっしゃった葛藤から乗り越えたプロセスも関係があったのでしょうか。
大原 そうですね。もともと私は女優を目指してこの世界に入って、デビュー作の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』をきっかけに亀田誠治さんと出会い、アーティスト活動もさせていただくようになりました。私にとって歌は小さい頃からずっと日常のそばにあった大好きなものだから、音楽ができるのは本当に嬉しく、ありがたいことで。ただその一方でここ1、2年、もっと芝居を深めなければという思いがどんどん強くなっています。
──この5年間、音楽と演技を良いバランスで並行してきたイメージがありますが、ご自身のなかではどうだったんでしょうか。
大原 良い作品にも出合わせていただいて、とても充実していたなと思います。ただやはり、2つの活動を並行していくとタイミング的にできること、できなかったことがあったのも事実です。今後、女優として成長していくためにはもっと芝居を模索する時間や環境が必要で、そのためにも今いる場所よりももっと前に進んだほうがいい。それが私の意志であり、周りの方からもそんな後押しする言葉をいただいたのが、個人事務所として独立するきっかけにもなりました。

──“個人”ということに不安はなかったですか?
大原 もちろん黙っていても仕事をいただける状態ではなくなるので、大丈夫かな?という不安はありましたが、自分ではベストな選択だと思っています。個人事務所ではありますが、エージェント契約という形で活動を支えてくれたり、アドバイスをしてくれたりする心強いスタッフさんもいるので。アーティストや役者が自分で自分の活動、方向性をマネジメントするという形態は海外では一般的なんですが、日本の芸能界でもここ1、2年そういう動きがあるんです。それはやはり、ネットやSNSの影響も大きいと思うんですが、恵まれた環境に甘えてはいけない。アーティスト自身が責任を持って自分で行動できるようにならなければ成長もできないし、生き残ってもいけない時代になったからだと思うんですね。

──日本の芸能界も、これから大きく変わるかもしれないですね。
大原 本当に「これからどうなるのかわからないな」と思うような出来事が、ここ最近は周囲でもたくさんありましたね。私自身もこれから選択の連続だと思います。もしかしたら、またいつかどこかの事務所さんにお世話になるかもしれません。だけどそれはあくまで自分の意志で、そのときどきのベストな方向に進んでいきたいと思っています。

音楽と芝居、表現は違っても届けたい思いは同じ

──現在は戸田恵梨香さんとのW主演映画『あの日のオルガン』(19年2月22日公開)が劇場公開中です。先ほどのお話で芝居を追求したいという強い意志を感じましたが、すると音楽活動が控えめになってしまうのでは?と心配してしまいます。
大原 全然。むしろ5月から始まる『大原櫻子 5th Anniversary コンサート「CAM-ON! 〜 FROM NOW ON! 〜」』というツアーのタイトル通り、音楽についても「これからだ!」という思いがどんどん強くなっています。ベストアルバムという形で1つの区切りができたので、歌の表現についてもここからどんどん殻を破っていきたいですし、そんな私の「これから」を感じてもらえるようなライブ構成を考えているので、ぜひ楽しみにしていていただきたいです。
──櫻子さんにとって、音楽活動とはどんな意味のあるものなんですか?
大原 私が女優を目指したのは、たくさんの作品から感動をもらってきたからで、それを届ける側になりたかったからなんです。音楽はむしろずっと自分の人生に寄り添ってくれたもので、誰かに届けるなんて想像したこともなかったんですね。だけどステージに立たせてもらうようになり、私の歌で泣いたり笑ってくれたりするファンのみなさんの顔を見て、「同じなんだ」と思ったんです。大げさな言い方かもしれないけど、来週あの舞台があるから、あのライブがあるから生きていける、それくらい大きな希望になれるものなんだって。だったら、それに精一杯応えるのが自分の役割なんじゃないかと思うようになりました。

──これからどんな歌の表現を追求していきたいですか?
大原 やはり私は、聴く人を励ますことができる歌を歌っていきたいです。それも初期はポップで元気な、それこそ若い子の背中を押すような楽曲を多くいただいていたんですが、励ますのに無理やり背中を押さなくてもいいと思うんですね。むしろ落ち込んだ時にそっと隣で寄り添えたり、迷った時にふと思い出してもらえたり、そんな年齢を問わずに深く響くような歌を生んでいきたいと思っています。

文/児玉澄子

提供元: コンフィデンス

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