安室奈美恵、引退まで残りわずか 売上記録から見る25年の功績
沖縄からやってきた少女が10代のカリスマになるまで
そして、10代最後をメモリアルする同名シングル曲がリカットされたアルバム『SWEET 19 BLUES』(最高1位/1996年7月22日発売)は発売週にミリオンを達成。最終的には累積売上336.0万枚のトリプルミリオンを記録する自身最高のヒット作となっている。このリカットシングル「SWEET 19 BLUES」(累積売上45.3万枚/最高2位/1996年8月21日発売)は、安室の楽曲を聴いて育った若い世代以降にも影響を与えている。加藤ミリヤの「19 Memories」は、彼女がリスペクトする安室の「SWEET 19 BLUES」をモチーフにした楽曲。同じく“女子高生のカリスマ”と称され“ミリヤー”を多く生んだ加藤ミリヤを通して次世代にも、新たな形で楽曲が受け継がれた。
出産を経て、ストイックに音楽性と向き合った20代
ターニングポイントは2001年、24歳で小室哲哉プロデュースを離れたことだろう。折しも音楽業界全体がパッケージ産業の減少傾向を辿る時期とも重なり、安室もかつてほどの勢いのあるセールスは叩き出せなくなっていた。しかしそうした逆境こそが、自身の音楽性とパフォーマンスを追求する契機ともなった。20代中盤期は、ZEEBRAやVERBAL、AIといったR&B、HIP HOPのアーティストたちと活発に交流。これを期に楽曲制作において自ら選曲し、国内外の新世代クリエイターを起用するといったセルフプロデュースを行うようになる。
HIP HOP色を強く打ち出した「Put’ Em Up」(累積売上4.1万枚/7位/2003年7月16日発売)、レゲトンのリズムを大胆に取り入れた「WANT ME, WANT ME」(累積売上10.3万枚/最高2位/2005年4月6日発売)など、意欲的に楽曲制作されたのもこの頃のこと。当時はまだ日本では一般受けしづらいジャンルだっただけに、セールスは振るわなかったが、今なおファンの間ではフェイバリットな楽曲もこの頃に数多く生まれている。
パフォーマンスの成熟期を迎えた30代、そして40代で伝説に
しかしその後、安室は徐々に活動をライブ中心へとシフトしていく。2010年以降は2017年末の『NHK紅白歌合戦』まで地上波への露出は減り、熱心なファン以外はそのパフォーマンスを目撃することも難しくなった。そうした最中での引退発表だったにも関わらず大きな衝撃が走ったのは、平成を生きた日本人ならば誰もが安室奈美恵が不世出のアーティストであることに疑いがないからだろう。ことに自らの青春と重ね合わせて、『Finally』を手に取ったアムラー世代は多かったに違いない。
CDで記録を打ち立てるのがますます難しくなった現代。キャリア初のオールタイム・ベストアルバム『Finally』(17年11月8日発売)は発売から2ヶ月の1/15付オリコン週間アルバムランキングで200万枚を突破。これにより前人未到の「10代・20代・30代・40代の4年代連続ミリオンセラー」という偉業を成し遂げたが、実は安室は歴代アーティストでは唯一の「10代・20代・30代の3年代連続ミリオンセラー」のタイトルホルダーでもあり、自らその記録を更新した形となった。
近年、アルバム作品の売上枚数が200万枚を突破したのは、ザ・ビートルズのベストアルバム『ザ・ビートルズ 1』が2012年8/13付で記録して以来、実に5年5ヶ月ぶりとなる。226.9万枚という驚異的な数字は、平成を駆け抜けた歌姫のパッケージを手元に残しておきたいという多くの思いの表れ。そしてあと数日で伝説となる歌姫の新たな旅立ちへの祝福とエールでもある。8月29日に発売した安室のラストドームツアーのDVD&Blu-ray『namie amuro Final Tour 2018〜Finally〜』は、発売3日間で音楽映像作品史上初のミリオンセールスという偉業を成し遂げた(8/30付オリコンデイリーDVDランキング 3日間の累積売上枚数:DVDが56.7万枚、BDが52.5万枚、合計が109.1万枚)。新たな伝説をまた1つ生み、引退までのラストスパートに勢いをかける。
※累積売上枚数は、2018年8/27付。
(文/児玉澄子)
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