安室奈美恵、引退まで残りわずか 売上記録から見る25年の功績

  • DVD/Blu-ray『namie amuro Final Tour 2018 〜Finally〜』(5月東京ドーム公演)

    DVD/Blu-ray『namie amuro Final Tour 2018 〜Finally〜』(5月東京ドーム公演)

 デビュー記念日の9月16日をもって引退する歌手・安室奈美恵が、ソロアーティストとしては史上最多の動員を記録したラストツアーを収めたDVD&Blu-ray Disc『namie amuro Final Tour 2018〜Finally〜』が、109.1万枚を売り上げ、発売3日間で音楽映像作品史上初のミリオンセールスを突破した。さまざまな形でファンへの感謝を伝えてきた彼女だが、引退を惜しむ声は今なお止まず、キャリア初のオールタイム・ベストアルバム『Finally』(17年11月8日発売)は発売から2ヶ月の1/15付オリコン週間アルバムランキングで200万枚を突破。これにより前人未到の「10代・20代・30代・40代の4年代連続ミリオンセラー」という偉業を成し遂げた。平成の音楽史に刻まれる数々の功績を残してきた歌姫の、輝ける記録を年代とともに辿ってみたい。

沖縄からやってきた少女が10代のカリスマになるまで

 1992年、14歳でSUPER MONKEY’Sとしてデビューした安室だが、本格的にブレイクしたのは18歳となった95年より始まる小室哲哉プロデュース以降だろう。シングル「Body Feels EXIT」(累積売上88.2万枚/最高3位/1995年10月25日発売)でソロデビュー後、続く「Chase the Chance」(累積売上136.2万枚/1995年12月4日発売)で初の週間シングルランキング首位を獲得し、「Don’t wanna cry」(累積売上139.0万枚/最高1位/1996年3月13日発売)、「You’re my sunshine」(累積売上109.9万枚/最高1位/1996年6月5日発売)、「a walk in the park」(累積売上106.7万枚/最高1位/1996年11月27日発売)と次々とミリオンを記録する。サラサラの茶髪ロングヘアーにミニスカート、細眉、厚底ブーツといった安室のファッションを真似る同世代女性が多く街に出現したのもこの頃で、“アムラー”というキーワードは1996年の「新語・流行語大賞」のTOP10入りするほどの社会現象となった。

 そして、10代最後をメモリアルする同名シングル曲がリカットされたアルバム『SWEET 19 BLUES』(最高1位/1996年7月22日発売)は発売週にミリオンを達成。最終的には累積売上336.0万枚のトリプルミリオンを記録する自身最高のヒット作となっている。このリカットシングル「SWEET 19 BLUES」(累積売上45.3万枚/最高2位/1996年8月21日発売)は、安室の楽曲を聴いて育った若い世代以降にも影響を与えている。加藤ミリヤの「19 Memories」は、彼女がリスペクトする安室の「SWEET 19 BLUES」をモチーフにした楽曲。同じく“女子高生のカリスマ”と称され“ミリヤー”を多く生んだ加藤ミリヤを通して次世代にも、新たな形で楽曲が受け継がれた。

出産を経て、ストイックに音楽性と向き合った20代

 ウェディングソングの金字塔として今なお愛され続けるシングル「CAN YOU CELEBRATE?」(累積売上229.6万枚/最高1位/1997年2月19日)が発売されたのは、安室が20歳の誕生日を迎える直前のこと。同曲はフジテレビ系月9ドラマ『バージンロード』の主題歌だったが、同年10月に明らかにされた結婚を予言していたという話題も相まってロングセールスを記録。最終的にはダブルミリオンを売り上げる自身最高のヒット曲となった。また同曲が収録された3rdアルバム『Concentration 20』(最高1位/1997年7月24日発売)も、193.0万枚を売り上げてミリオンを達成している。さらに、1年間の産休の間にも、復帰を待ちわびるファンの思いがベストアルバム『181920』(最高1位/1998年1月28日発売)を169.8万枚のミリオンに押し上げた。

 ターニングポイントは2001年、24歳で小室哲哉プロデュースを離れたことだろう。折しも音楽業界全体がパッケージ産業の減少傾向を辿る時期とも重なり、安室もかつてほどの勢いのあるセールスは叩き出せなくなっていた。しかしそうした逆境こそが、自身の音楽性とパフォーマンスを追求する契機ともなった。20代中盤期は、ZEEBRAやVERBAL、AIといったR&B、HIP HOPのアーティストたちと活発に交流。これを期に楽曲制作において自ら選曲し、国内外の新世代クリエイターを起用するといったセルフプロデュースを行うようになる。

 HIP HOP色を強く打ち出した「Put’ Em Up」(累積売上4.1万枚/7位/2003年7月16日発売)、レゲトンのリズムを大胆に取り入れた「WANT ME, WANT ME」(累積売上10.3万枚/最高2位/2005年4月6日発売)など、意欲的に楽曲制作されたのもこの頃のこと。当時はまだ日本では一般受けしづらいジャンルだっただけに、セールスは振るわなかったが、今なおファンの間ではフェイバリットな楽曲もこの頃に数多く生まれている。

パフォーマンスの成熟期を迎えた30代、そして40代で伝説に

 30歳を迎える直前に発売されたシングル「60s 70s 80s」(累積売上29.3万枚/2008年3月12日発売)で、実に9年4ヶ月ぶりに週間シングルランキングで首位に。そして、セルフプロデュースの集大成ともいえるベストアルバム『BEST FICTION』(最高1位/2008年7月30日)は、155.5万枚を売り上げミリオンを達成。史上初の「10代・20代・30代の3年代連続ミリオンセラー」という記録を打ち立て、歌姫の健在ぶりを証明した。また、6週連続首位獲得という偉業も成し遂げた。

 しかしその後、安室は徐々に活動をライブ中心へとシフトしていく。2010年以降は2017年末の『NHK紅白歌合戦』まで地上波への露出は減り、熱心なファン以外はそのパフォーマンスを目撃することも難しくなった。そうした最中での引退発表だったにも関わらず大きな衝撃が走ったのは、平成を生きた日本人ならば誰もが安室奈美恵が不世出のアーティストであることに疑いがないからだろう。ことに自らの青春と重ね合わせて、『Finally』を手に取ったアムラー世代は多かったに違いない。

 CDで記録を打ち立てるのがますます難しくなった現代。キャリア初のオールタイム・ベストアルバム『Finally』(17年11月8日発売)は発売から2ヶ月の1/15付オリコン週間アルバムランキングで200万枚を突破。これにより前人未到の「10代・20代・30代・40代の4年代連続ミリオンセラー」という偉業を成し遂げたが、実は安室は歴代アーティストでは唯一の「10代・20代・30代の3年代連続ミリオンセラー」のタイトルホルダーでもあり、自らその記録を更新した形となった。

 近年、アルバム作品の売上枚数が200万枚を突破したのは、ザ・ビートルズのベストアルバム『ザ・ビートルズ 1』が2012年8/13付で記録して以来、実に5年5ヶ月ぶりとなる。226.9万枚という驚異的な数字は、平成を駆け抜けた歌姫のパッケージを手元に残しておきたいという多くの思いの表れ。そしてあと数日で伝説となる歌姫の新たな旅立ちへの祝福とエールでもある。8月29日に発売した安室のラストドームツアーのDVD&Blu-ray『namie amuro Final Tour 2018〜Finally〜』は、発売3日間で音楽映像作品史上初のミリオンセールスという偉業を成し遂げた(8/30付オリコンデイリーDVDランキング 3日間の累積売上枚数:DVDが56.7万枚、BDが52.5万枚、合計が109.1万枚)。新たな伝説をまた1つ生み、引退までのラストスパートに勢いをかける。
※累積売上枚数は、2018年8/27付。

(文/児玉澄子)
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提供元: コンフィデンス

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