• ホーム
  • 音楽
  • 海外の最先端事例に学ぶ 日本のライブ業界が参考にしたい「3つの視点」

海外の最先端事例に学ぶ 日本のライブ業界が参考にしたい「3つの視点」

 ここ数年、活況が続くライブ・エンタテインメント業界。とはいえ、“チケットの高額転売”、“会場不足”、“大都市集中”、“働き手/アルバイト不足”など内情をみると課題は多い。そこで、世界最大のプロモーター「ライブ・ネイション」のライブ作りなど、海外の最先端事例を参考に検証。今年度の収益が過去最高となったライブ・ネイションが、どのように最前線で事業を展開しているのか、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏がビジネスモデルから解説する。

日本と海外の2017年ライブ状況

 進化し続けるライブビジネス市場において、2017年は1つの分岐点だった。その理由は、世界最大のイベントプロモーション会社で、大物洋楽アーティストのツアーを運営する「ライブ・ネイション」が、チケット転売問題に対して本格的な改善策をついに打ち出したからだ。

 業界最大手が何に重点を置くのか。それは、この領域での今後のビジョンを明確化したに等しい。彼らの取り組みは、進むべき方向性を模索するプロモーターやアーティスト、マネジメントを含むライブエンタメ業界全体を左右すると言っていい。

 17年末の「チケットキャンプ」の閉鎖(サービスは18年5月末に停止)の衝撃により、日本国内で高額なチケット転売とダフ屋行為への対策は、健全なライブエンタメ市場をめざすうえで無視できない課題となっている。業界団体が解決策に向けた法規制に動き出し、メディアでの露出が増えた一方、今後の市場がめざすべき抜本的な対策や選択肢が提案されていないのは懸念材料だ。

 そうした転売問題に限らず、日本のライブエンタメ業界は、世界と同じ課題をいくつも抱え、共有できる状態にある。17年5月、イギリス・マンチェスターで起きたコンサート爆破テロ事件から生まれた安全確保への問題意識は、日本のフェスやイベント、握手会への応用、さらには20年に向けたテロ対策問題と同様に捉えることもできるはず。ノウハウや対策法を可能な限り蓄積する必要性は格段に高まっている。

 しかしながら課題を共有できるにもかかわらず、日本では独自の解決方法を求めてしまう傾向が強い。これは業界を進展させるうえで機会損失ともなりかねない。

 そこでここでは、現在海外アーティストたちやイベント会場を支援している世界のライブエンタメ企業の事例を取り上げ、市場全体が抱えている課題とその対策を整理し、日本市場の発展と収益拡大に向けたヒントを探ってみたい。

「提携型」運営で幅広いファンにアプローチ

 まず現状を把握するため、現在進行形のビジネスモデルのトレンドを取り上げたい。具体的な例を挙げるとすれば、ライブ・ネイションのビジネス構造がわかりやすいだろう。

 彼らのモデルは多角的でマネタイズがはっきりしている。主な収益元は4事業。「ライブ興行収入」「スポンサーシップと広告」「チケット販売」「アーティスト・マネジメント」で、連携しながら収益化をめざしている訳だが、おもな収入源であるライブ興行はツアーやライブの運営だけに留まらない。プロモーション戦略、SNS・動画メディアを通じたブランディング、ライブ会場運営、フェス開催までを包括的に行い、幅広い範囲をカバーするポートフォリオを展開する。これはライブ・エンタテインメントも、そのモデルが独立型・特化型から垂直統合型へ進化していることを意味している。

 具体例を挙げてみたい。近年の世界的なフェス人気の裏で、ライブ・ネイションや「AEG Presents」といった大手プロモーターと、既存のフェス運営者たちによる「提携型」運営が増え、これまで独立運営されてきた中規模から大規模なフェスの多くに変化が生まれている。

 ライブ・ネイションはアメリカの「ボナルー」「ロラパルーザ」「EDC」などメジャーなフェスの運営権を取得。最近ではイギリスやスウェーデン、オーストラリア、南アフリカのプロモーターとの提携も進めてきた。そうした新規市場への参入や既存市場におけるブランド力の拡大、イベントごとでの収益増加といった効果を狙う。

 そして何よりも膨大な数の音楽ファンに対するアプローチが可能になり、世代を超えた巨大な顧客データベースを横串で構築できるという大きなアドバンテージが生まれた。顧客を知ることで、より効果的なプロモーションやサービスを提供でき、イベント体験の満足度を高め、ファンの定着化を促進する戦略を実行できるようになったのだ。

「提携型」運営の実例

 ライブ・ネイションは、前述の提携を拡大した結果、17年の12ヶ月で3万以上のライブイベントを実施することに成功している。これは16年から4000回以上も多くなっている。この効果は、リーチできるファンの数にも影響が出ている。17年のイベント参加者は8600万人に到達。16年が7100万人以上だったことを考えると、12ヶ月で来場者を約20%増加させてきたのだ。ファン数の底上げは収益拡大に直結する。ライブ・ネイションは17年のコンサート事業単体での売上高が78.9億ドル(約8500億円)。前年同期比で26%増加している。

 イベント数とファン数が増えれば、提供するサービスの数とクオリティも上がる。チケット販売以外にも、VIPパス、飲食やグッズ販売の手数料、駐車場や交通手段、キャンプ施設の提供など、ユーザー体験と継続率向上のためのサービス開発が進み、さらなる収益化へとつながる。

 このように来場者数の成長率は、今後、日本でもライブ・エンタテインメントの成長を測るうえで、1つの業界指標として考えることができるはずだ。一方で、ファン数が増えるほど、機会損失は発生しやすくなる。しかし損失のリスクを抑えようとするだけでは大きな成長につなげることは難しい。むしろ今後求められるのは、業界の未来を示す抜本的な解決策の提示だろう。

提供元: コンフィデンス

【最新号】コンフィデンス 2018年10月15日号 詳細はコチラ バックナンバー 一覧

最新号コンフィデンス2018年10月15日号

<COVER STORY>
丸野孝允氏(エンズエンターテイメント代表取締役社長)
今はファン向けのサービスを充実させることが重要
顧客の層に合わせたきめ細かいサービスも不可欠

<SPECIAL ISSUE>
月間マーケットレポート9月度
映像ソフトへの需要喚起がますますカギに

お問い合わせ

オリコンニュース公式SNS

Facebook、Twitterからもオリコンニュースの最新情報を受け取ることができます!