羽山みずき、夢のまた夢だった歌の世界へ「巫女の経験が活かせる日がくればいいな」

一昨年、デビュー曲の「紅花慕情」で『第58回日本レコード大賞』新人賞を受賞した羽山みずき。出身地・山形の出羽三山神社で巫女を勤めていた2015年、「日本クラウン・新人オーディション」に応募し、グランプリを獲得。心の奥まで染み渡る伸びやかな歌声と、庄内弁が混じったおっとりした話し方で注目を集めている26歳だ。昨年12月6日にリリースした3枚目のシングル「酒田カモメ唄」は、山形の港町・酒田を舞台にした悲しくも明るい正統派演歌。やまがた特命観光・つや姫大使、鶴岡ふるさと観光大使としても活躍しつつ、出身地・山形を母胎とした楽曲で、さらなる飛躍を目指している。

今の自分の糧になっている 巫女として過ごした6年間

――演歌に興味をもったのは何歳くらいのときですか?
羽山 自分自身は記憶にないのですが、母から聞いた話では、3歳のとき、両親の結婚式のビデオを見ていて、親戚の方が余興で歌った『ふたり酒』をマネして歌ったのをきっかけに、演歌を歌うようになったそうです。その後、4歳のときに、「みずきちゃんは演歌が好きでいつも歌っているんだから、敬老会の舞台で歌ってみないか」と誘われて、初めて大勢の人の前で歌ったのですが、みんなが喜んでくれたことが幼心にとても嬉しくて、それからはますます演歌が好きになって、小学6年生から歌謡サークルに、高校1年生からは県の歌謡連盟に入って、お稽古をしたり大会に出たりしていました。
――歌手になったきっかけの「日本クラウン・新人オーディション」は、生まれて初めて受けたオーディションだったそうですが、どんな思い出が残っていますか?
羽山 それが自分が歌ったときの記憶がまったくないんです! 一緒に会場に来てくれていた母に「顔色が良くないけど大丈夫だか?」って言われるくらい緊張していて(笑)、前の順番の人が歌っているのを舞台袖で見ている時も緊張しておりましたが、歌が好きだという思いだけは大切に歌おうって自分に言い聞かせて舞台に出たところまでは記憶にあるんですが、そこからはまったく……(苦笑)。歌い終わった後もただただ放心状態だったみたいで、グランプリの発表で自分の番号が呼ばれたときも気がつかなくて、しばらく席に座ったまま、立たずにいた状態でした。
――オーディションを受けたときは、故郷・山形の出羽三山で巫女として働いていたそうですね。
羽山 歌はすごく好きだったのですが、歌い手になるというのは夢のまた夢の世界で、自分には手が届かないと思っていたので、高校卒業後、巫女になったんです。巫女を選んだのは高校受験の祈願に行ったときに見た巫女の姿が忘れられなかったことがきっかけでした。巫女になってからは、歌は車の運転中や家で歌う程度でしたが、日本クラウンのオーディションがあると聞いて、東京の舞台で歌えるなんて一生できない経験かもしれないからと思って、受けてみたんです。
――巫女出身の演歌歌手はおそらく今までいなかったと思いますが、巫女の経験が今の歌手生活に活きているなと感じることはありますか?
羽山 歌の指導をしていただいている作曲家の聖川湧先生に、きちんと歌詞を理解して歌わないとダメだと言われているのですが、そのためにはいろいろな経験を積むことが大切だと思うんです。ですから、巫女として過ごした6年間はすごく自分の糧になっていると感じています。組織の中で働いた経験もそうですし、舞のお稽古やお辞儀の仕方、袴のさばき方、お茶の出し方、参拝客を迎い入れるときにどういう気持ちで接するかなど、巫女時代には、いろいろなことを教えてもらいましたし、全国から訪れる参拝客と接することもできましたから。今も、たとえば広島に行ったら、「広島から来ていたあのおじさん元気かな」と思ったり、思い出に残る温かい時間もたくさん過ごすことができたので、とても貴重な経験を持てたと思っています。

お客さまが笑顔でハッピーになれるステージを作っていくのが夢

――最新曲の「酒田カモメ唄」は、山形県を舞台に失恋の悲しみを歌っていますが、同じ経験は?
羽山 いえ、私はまだ、歌詞にあるような恋を経験したことがないんです(苦笑)。演歌の歌詞は大人っぽい内容が多いですし、人の気持ちや恋愛の気持ちは理解するのはすごく難しいことだと思うので、常日頃から映画を観るとか、ドラマを観るなどして、感情の機微を学ぶようにしています。
  • 羽山みずき「酒田カモメ唄」

    羽山みずき「酒田カモメ唄」

――巫女の経歴から、「開運演歌女子」というニックネームがついていますね。
羽山 すごく照れてしまうんですけど(笑)、でも、お客さまと一緒に、笑顔に、ハッピーになれるようなステージを作っていくのが夢なので、少しでも名前に近づける存在になるようがんばりたいと思っています。
――経歴以外で、自分の売りや魅力はどんなところだと思いますか?
羽山 聖川先生には、優しい声質を大事にしてほしいと言われています。ですから、枯らすことがないよう、普段から声の使い方に注意して、はちみつを摂るなどケアも心がけています。
――最後に今後の目標を教えてください。
羽山 島倉千代子さんの歌と、歌う姿がすごく素敵だなと思うので、自分も毎日毎日一生懸命勉強して、島倉さんのようになれるようがんばりたいです。それから、家に巫女時代に買ったほら貝があるのですが、いつかコンサートでほら貝を吹くなど、巫女時代の経験が活かせる日がくればいいなと思っています。あとは、とにかく、小さい頃から、歌はみんなが笑顔になれて、楽しい時間が過ごせるものだと思っているので、私自身、何歳になっても歌が好きだという気持ちを忘れずに、お客さんと一緒に楽しめるような歌い手になれるようがんばりたいと思います。

文/河上いつ子

提供元: コンフィデンス

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