AKB48らの振付師が語るアイドルダンスのトレンド

 「遊び心を振り付ける」をモットーにCMやミュージックビデオの振り付け・ポージングなどを手がける2人組振付ユニットのCRE8BOY。アーティストのダンスが注目を集めるのと同時に、楽曲の世界観を振り付けで演出するコレオグラファーの存在感も増している。AKB48、SKE48、乃木坂46などのアイドルグループを多数手がけるCRE8BOYに話を聞き、アイドルグループの振り付けから見るヒットのカギを探っていく。

ダンス感度の高い若年層に響くアイドルの振り付けとは

 「遊び心を振り付ける」をポリシーとするCRE8BOYは、ともにダンサーとしても活躍してきた山川雄紀と秋元類を中心とする振付師ユニット。彼らが一貫してテーマとしているのが「思わず真似したくなる」「ひと目見たら忘れられない」振り付け・ポージングの創作だ。
「真似したくなるというのは、もはやオファーの大前提になっていますね。その上で僕らが目指しているのは、“インスタ映え”じゃないですけど一般の方がSNSや動画サイトにアップしたくなる、つまり真似した姿を見せたくなる振り付けです」(山川雄紀)

 AKB48グループをはじめとするアイドルグループの振り付けも多い彼らは、近年の傾向として若年層のダンスレベルの高さを指摘する。
「ダンスが必修科目になった影響は大きいですね。グループに入ったばかりでもまったく踊れない子はほぼいないですし、今は一般の10代も日常的にダンスに触れている世代です。なかでも例えばK-POP が好きな子とかはダンス感度が高かったりします。そうした流行からも、アイドルに関して言うとややハイレベルなダンスがトレンドになっています」(秋元類)
「ただ曲を通して全部の振りが超絶技巧のダンスになってしまうと、結局は見る側の印象に残らない。たとえばNMB48「ワロタピーポー」の両手でW の字を作るポーズのように、『この曲と言えばこの動きだよね』というポイントを入れることは常に意識していますね」(山川)

 もちろん若い世代のダンススキルが全体的に上がっているとは言え、レベルはさまざまだ。
「グループ全体のレベルをある程度見極めることも重要だと思っています。その上でメンバーや楽曲が映える振り付けをすると、さらに素晴らしいパフォーマンスになったりもするんです」(秋元)

平井堅と欅坂46・平手友梨奈のコラボ成功のカギは、丁寧なものづくり

 昨年末、CX系『2017 FNS 歌謡祭』にて平井堅の「ノンフィクション」のバックで踊った欅坂46・平手友梨奈の憑依型とも言えるダンス。この振り付けもCRE8BOYによるものだ。
「ノンフィクションは生きることについて問いかけるような、メッセージ性が強い曲だと思うので、歌詞の世界観や表現の内容についても平手さんとたくさん話し合いました。しかし彼女自身なかなか消化しきれない部分もあり本番直前まで悩み抜かれていました。そんな等身大の葛藤の中に渦巻いているであろう、複雑に絡み合う感情を表現したのがあの振り付けです。あの膝丈スカートの素朴な制服という衣装も、僕らから提案させてもらいました」(秋元)

 たった一夜の放送で大きな衝撃と話題を呼んだ振り付けの背景には、アーティストの思いを受け止め、振り付けという目に見える形で提示した丁寧なものづくりがあった。
「今は制作側のスケジュールもタイトですから、歌詞が決まってない段階でオファーされることもあります。それでも僕らは精一杯やりますが、やはり大前提として歌詞から見える景色を振り付けに盛り込みたいという思いはありますね」(秋元)
「歌詞ができてなくても、早い段階でクリエイティブの打ち合わせに参加させていただけるように心がけています。衣装や演出についてなど、そこではいろんなコメントが出るでしょうから、僕らはそれをキャッチして持ち帰り、振り付けに反映します。そうやって同期することで、より曲の世界観が明確な振り付けができると思っています」(山川)

 なお、振付師ユニットとして活動するメリットは、客観視しながら創作ができることだという。
「僕の基準の1つとして、パッと一発ポーズや動きをしてみせたときに、秋元が“フフッ”と笑うかどうかは大きいですね。瞬間的に心を掴んだことがジャッジできるというか。そのためにも日頃から、変わった動きをスマホにストックしています」(山川)
「真剣に創作していても、いい意味でどこかお互いにふざけられることが大事です。そういう瞬間に遊び心って生まれるので」(秋元)

(文:児玉澄子)

CRE8BOY プロフィール

CRE8BOY(クリエイトボーイ)
山川雄紀と秋元類を中心とした振付師ユニット。2012年に結成。AKB48や乃木坂46をはじめとしたアイドルグループやアーティスト、RIZAPや日本コカ・コーラ「ファンタ」CMなどの振り付けを手がける。振り付け・ポージングのほか、劇団4ドル50セントなど舞台の振り付けも行う。2017年、アジア最大級の広告賞『Spikes Asia 2017』において、振り付けしたハル・ロビンソン「アイデンティティ」のMVが、Music部門の「BRONZE SPIKE」を受賞した。

CRE8BOY オフィシャルサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索