倉木麻衣、『コナン』ヒット支える映画と音楽の世界観をつなぐ主題歌

 人気アニメの劇場版『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』が大ヒット中だ。4月15日の公開から5月31日までの累計動員500.5万人、64.19億円と5年連続でシリーズ最高興収を更新した。映画ヒットの一方で、倉木麻衣が歌う主題歌「渡月橋 〜君 想ふ〜」への注目度も高く、最高5位(4/24付)を記録し、未だその勢いは衰えず発売から7週目(46位、17年06/05付)でTOP50入りとロングセラーとなっている。倉木が『コナン』主題歌を歌うのは今作が実に21作目。すでにファンの間では倉木といえば『コナン』でおなじみ。映画と歌がお互いのヒットを支えあっている。

歌声と歌詞、『コナン』の世界観と合致し、相乗効果でそれぞれがヒット

  • (C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

    (C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 倉木と『コナン』の関係性は、2000年4月26日発売の「Secret of my heart」から始まる。同アニメ関連のシングル売上では、「Secret of my heart」が歴代1位の記録を持ち、世代問わず倉木の人気を印象づけた作品でもある。「誰にも言えない秘密」がテーマの倉木自身が手掛けた歌詞の世界観と独特のウィスパーボイスが、アニメのストーリー性としっかりと合致。もともとファンであった倉木の熱い作品愛がこもった歌は観客の心をつかみ、これらの相乗効果でそれぞれのヒットへと繋がった。

 その「Secret of my heart」から始まり、劇場版『名探偵コナン 迷宮の十字路(クロスロード)』の主題歌「Time after time 〜花舞う街で〜」(2003年)など、倉木とコナンのコラボは今回で通算21作目となり、同一アニメでの最多主題歌担当としてギネス申請された。また今回の主題歌では、ミリオンセラーとなったデビュー曲「Love, Day After Tomorrow」(1999年12月発売/最高2位/累積売上138.5万枚)から41作連続通算41作目のシングルTOP10入りを達成。自身が歴代1位記録を持つ、ソロアーティストによるデビューからのシングル連続TOP10入り作品数を41作連続に更新した(歴代2位=田原俊彦の30作連続)。

従来のタイアップとの関係性とは一線を画した倉木の楽曲

 京都を舞台に描かれた今作の主題歌では、歌詞だけでなく和楽器を取り入れたサウンドなど、映画の世界観を色濃く反映。ミュージックビデオの衣装では総重量24キロにも及ぶ十二単に初挑戦した。ネットでは、「今までにないサビのサウンドが良い」「優しく透き通った綺麗な声と詞に込められた熱い想い全てがマッチしている」など、コナンファンの心をしっかりと掴んでいる。

 一方で、同一アーティストが幾度となく同じアニメのテーマソングを歌うことは、一歩間違えばアニメの印象が強くなり、アーティストカラーに影響を及ぼす場合もある。しかし、倉木の場合は、自身のアーティストカラーを損なうことなく、ごく自然な形でアニメの世界観に寄り添っている。透明感溢れる歌声もそうだが、クリーンなイメージから『コナン』に限らずこれまで多くのタイアップ曲に起用され、NHK連続テレビ小説『オードリー』主題歌「Reach for the sky」など、作品の世界を上手く表現した歌詞に定評がある。

 近年は、『ラブライブ!』などの社会現象となったテーマソングもあるが、キャラクターを演じる声優が歌う楽曲や、『妖怪ウォッチ』(テレビ東京)といった企画性の高いタイアップものも多い。なかには、曲とアニメの内容が密接にリンクしていない単なるプロモーション的なケースもある。そうした従来の楽曲PRを主目的としたタイアップとは一線を画している倉木は、作品と楽曲の世界観をつなぎこむコンテクストがしっかりとある。最近では、アニメ映画『この世界の片隅に』でのコトリンゴや、『君の名は。』でのRADWIMPSなども通ずるものがあるが、倉木がその潮流をつくった元祖といっても過言ではないだろう。今作で改めてアーティストとして更なる可能性を感じさせた彼女に、今後も注視していきたいと思う。

提供元: コンフィデンス

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