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映画『四月になれば彼女は』山田智和の初長編監督作のミューズとなった森七菜の覚悟

(左から)森七菜、山田智和監督(C)ORICON NewS inc.

(左から)森七菜、山田智和監督(C)ORICON NewS inc.

 ウユニ(ボリビア)、プラハ(チェコ)、アイスランドでのロケを敢行したことでも話題の映画『四月になれば彼女は』が公開中だ。カメラを持って世界中を旅する伊予田春を演じた森七菜と、米津玄師「Lemon」、あいみょん「マリーゴールド」、宇多田ヒカル「Gold 〜また逢う日まで〜」など多くの伝説的ミュージックビデオ(MV)を演出し、本作で長編映画監督デビューした山田智和に、同作について聞いた。

 映画は、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』など新海誠監督作品をプロデュース、『映画ドラえもん のび太の新宝島』の脚本も手掛けた川村元気氏の小説(文春文庫)が原作のラブストーリー。

 主な登場人物は、3人。佐藤健演じる精神科医の藤代俊、長澤まさみ演じる坂本弥生、そして森が演じる藤代の大学時代の恋人で初恋の相手、伊予田春。弥生との結婚の準備を進める藤代のもとに、春から10年ぶりに手紙が届く。ウユニ塩湖、プラハ、アイスランドから手紙を送ってくる、春。そんな中、弥生が突然、姿を消してしまう。春はなぜ手紙を書いてきたのか?弥生はどこへ消えたのか?ふたつの謎は、やがてつながっていく。

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

 森は、旅先からかつての恋人に手紙を送る春を演じるにあたり、「春の真っ直ぐさ、純粋さが一切の淀みなく見ている人に伝わるといいな、と思いながら演じていました。春のことをどこか神格化して、あがめるような気持ちがありました」と振り返る。

 そんな森の演技について、山田監督は「ウユニ、プラハ、アイスランドを旅している春の顔と、大学生の時の春の顔が、全く別人のように見えました。藤代と別れた後、春がどんな年月を過ごしてきたのか、どんな覚悟を持って旅に出たのか、そういったことを自然と取り入れて、見事に表現してくれたからだと思います。ウユニのカットを長澤さんに見せた時も、『学生時代と違う顔してる。すごくいい表情』とおっしゃっていました」。

 長澤が絶賛していたことを聞いて、「うれしい!」と素直に喜んだ森。「佐藤さんや長澤さんの背中を見ていると、いつまでたっても追いつけないような気もしてくるのですが、あきらめずに追いかけていきたいと思います」と謙虚に語っていた。

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

監督の撮りたいものに全力で向き合うと決めていた

 森と山田監督は、少人数の撮影クルーとともに昨年1月から3週間かけてウユニ、プラハ、アイスランドへ渡り、本作を象徴するエモーショナルなシークエンスを撮影してきた。

 「荷物のパッキングとスムーズに飛行機を乗り換えるコツ、トランジットの時間を充実させるために手荷物として何を持っておくべきか、といったことにかなり詳しくなりました」と森は冗談めかして言うが、飛行機の乗り継ぎを含めて10ヶ国を旅することになった。その撮影は、「プラン変更の連続」(山田)だったという。

 本作には、ウユニ塩湖の水面が鏡のように見える絶景が収められているが、鏡状態になるのはさまざまな条件がそろった時で、その確率は50%程度とされている。山田監督は天候を見て、リハーサルを予定していた日に急きょ本番撮影をすることに。「ウユニの街は標高3700メートルという高地にあり、富士山の頂上(標高3776メートル)とほぼ同じ高さで空気が薄い。コンディションを整えるのも大変だった中、無理を言って挑戦させてもらいました」(山田)。

 「撮影チャンスを逃したくない」山田監督の思いに、森は100%応える覚悟で今回のロケに挑んでいた。「日本の映画で海外を何ヶ国も回って撮影する作品はなかなかないと思うので、監督には撮りたいものを全部撮ってもらいたいと思いました。どれだけ疲れていても全力で向き合うと決めていました」(森)。

 山田監督は「大袈裟でなく、森さんがいなかったら、この映画の監督としていまここに僕はいないと思う」と、絶大な信頼があったことを明かす。「全スタッフ、全キャスト、一人でも欠けていたらこの映画は出来上がらなかった。ですが、過酷な海外ロケの間、僕自身の心の状態をピュアに保ち、本当に撮りたいと思ったものを撮るトリガーみたいなものになってくれたのは森さんでした。森さんがいなかったら…と考えるだけでゾッとします。素晴らしい才能と出会えて僕はすごくラッキーだと感謝したい気持ちでいっぱいです」。

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画は自分にとって、一番大切なアート

 山田監督は、日本大学芸術学部映画学科映像コースを卒業後、宇多田ヒカル、サカナクション、米津玄師、あいみょん、藤井風などのMVやNIKE、TOD’S、PRADAなどの広告映像、ショートフィルムなどを数多く手掛け、オリジナル短編作品も発表。圧倒的な映像の美しさと人間を生々しく描き出す抜群のセンスとアイデアで今もっとも注目される一人だ。

 「僕は大学の映画学科に入ったところから映像をつくる人生が始まって、映画をつくるサークルにも入っていました。自分にとって、一番大切なアートが映画。いつか自分が監督を務めた長編映画をつくりたいと思いつつ、ミュージックビデオの仕事で拾ってもらって、見出してもらって、それが川村元気さんに声をかけていただくきっかけにつながって。肩書はなんでもいいと思っている反面、これでようやく胸を張って『映画監督です』と名乗れるうれしさもあります」(山田)。

 念願の長編映画を作り上げたことで、「自分が撮りたいのは人間の様(さま)で、映画だったんだな、と改めて気づくことができました。魅力的なストーリーで、人間をしっかり描くには映画というフォーマットが一番適している。今回、素晴らしい原作と佐藤さん、長澤さん、森さんら素晴らしい俳優たちと出会ってこの作品をつくることができたことを糧に、多くの人に見てもらいたい映像、伝えたいと感じた言葉、そして愛すべき人間たちを映画にしていけたらと思っています」(山田)。

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画『四月になれば彼女は』(公開中)場面写真(C)2024「四月になれば彼女は」製作委員会

映画『四月になれば彼女は』2024年3月22日公開

出演:
佐藤健 長澤まさみ 森七菜
仲野太賀 中島歩 河合優実 ともさかりえ 
竹野内豊

原作:川村元気「四月なれば彼女は」(文春文庫) ※発行部数:45万部
監督:山田智和
脚本:木戸雄一郎 山田智和 川村元気
撮影:今村圭佑
音楽:小林武史
主題歌:藤井 風「満ちてゆく」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作プロダクション :AOI Pro.
配給 :東宝

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