哀川 翔インタビュー |
俳優・哀川翔が芸能生活25周年の記念作に選んだのは、2004年に自身の主演100作品目として公開された『ゼブラーマン』の続編。「あの作品から、俳優人生の間口が広がった」と哀川自身の思い入れも深い伝説のヒーローが、6年ぶりにスクリーン帰ってくる。5月1日の公開を前に哀川が作品の魅力をたっぷりと語る。
◆現場ではずっと吊るされたまんまでした(笑)
―——続編のオファーを受けた時は?
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【哀川】 「やるんだー」みたいな、ちょっと油断していた感じでしたね。脚本を読み出したら2025年という設定で、これは大変なことになるなって、深読みするのをやめた(笑)。
――前作に続いてアクションシーンの多いハードな撮影は?
【哀川】 前作も結構きつかったんでね、大変な現場になるとは思っていたが、予想以上でした。カメラの前に立たないときは、しゃべらず、動かず(笑)。極力、体力を温存しておかないと絶対もたないと思いましたね。ゼブラーマンスーツを着るだけで、ものすごく体力を消耗するんですね。重いというか、厚い。ウエットスーツ3枚分くらいの厚みがあったんじゃないかな。身動きが取れない、座れない、腕が下ろせない。だから、現場ではずっと吊るされたまんまの形でいましたから(笑)、まぁ、大変でしたよね。
――話によると200時間以上も宙吊りにされていたとか、その時の気分は?
【哀川】 ゼブラーマンになりきっているというよりも、早く終わらないかなぁ〜みたいな(笑)。CGとの兼ね合いがあるから、監督の「OK」がなかなか出なくて。撮った画を見ながらCGの技術者と打ち合わせしている間、俺はずっと宙吊りですよね(笑)。だから、1カット撮るのに4時間くらいかかっちゃうんですよ。
三池監督にはスクリプター(記録係)がいなくて、自分の頭の中にすべて収めながら撮っているんですよね、それでいてものすごく的確でした。余計なカットも撮らないし、出来上がった作品を見て、あの時の撮影は無駄だったんじゃないか、と思うこともない。本当にギリギリのところで撮影していました。
三池監督にはスクリプター(記録係)がいなくて、自分の頭の中にすべて収めながら撮っているんですよね、それでいてものすごく的確でした。余計なカットも撮らないし、出来上がった作品を見て、あの時の撮影は無駄だったんじゃないか、と思うこともない。本当にギリギリのところで撮影していました。
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【哀川】 クドカンが俺のことを「ヘンだ」と言う。何が「ヘン」なのか聞いたら、「何を書いてもノーと言わない。そこがヘン」だって。俺は、“ノー”と言った時点で、“負け”た感じがするでしょ。最初から白旗振ったみたいで嫌でしょ。俺は受けた仕事は、監督の演出にも「ノー」は言わない。脚本がダメだと思ったら、「できません」と言います。たぶんその作品からは降りるね。 『ゼブラーマン』はある種、挑戦状みたいなものだよ。でも、それをやり遂げた時が勝利。劇場で観客が笑ってくれたら俺の大勝利だよ。笑わすつもりもないんだけどね。俺は大真面目に役を理解して、取り組んでいますよ。
――三池監督との仕事は?
【哀川】 実は、三池監督と組んだ過去の作品を思い出すようなシーンが今回の『ゼブラーマン』にはちょいちょい出てきます。やべぇ、これ、『DEAD OR ALIVE』(1999年、2000年、2001年)でやったな、『極道恐怖大劇場 牛頭 GOZU』(2003年)でやったなというシーンがね。それにはびっくりした。「25周年の集大成にしたい」と俺が言ったのを三池監督はちゃんと聞いていてくれていた。さすが三池崇史!
◆20歳の仲里依紗は「脅威であり、驚異」
――今作の見どころは仲里依紗さん扮するゼブラクイーンとの対決。
【哀川】 ものすごく真面目な悪の代表を彼女が演じている。僕が演じているのは不真面目な善。彼は善良で真面目に生きているんだけど、はたから見るとものすごく不真面目に見える。それが市川新一の生き方、彼の強さなんじゃないかな。真面目にやればやるほどおかしくなっていく、彼は。だから、ヒーローに選ばれた。真面目に取り組んだ成れの果てが壊れちゃっているわけ。だからヒーローになれる。
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【哀川】 脅威であり、驚異ですよね。すごいと思った。歌、踊り、殺陣も今回が初めてでしょ。なのに、淡々とやるんです。俺は芸能生活25年、映像作品も20年やってきたから、さすがに淡々とやっているけど、彼女、まだ二十歳でしょ。
――節目の記念作が『ゼブラーマン』。哀川さんにとってどんな作品?
【哀川】 俺にとっては新たな戦いの場。ほかの作品と同じようにカメラの前に立てないのが『ゼブラーマン』。節目っていうのはこういうことなのね、もっと頑張りなさいと言われる気がしますね。普通、もっと楽をさせてくれない?と思うんだけど、なんで節目に強力な相手が来るの?(笑)。 前作もそうだったけど、辛さとの戦いを乗り越えると、出来上がった作品は面白いですね。映画というのは、撮影が辛ければ辛いほど、面白い映像が撮れているってことね。そういうことを思い出させてくれる作品ですね。
哀川翔 あいかわ・しょう 1961年生まれ。一世風靡セピアの一員としてレコードデビュー。その後、俳優としてヒットシリーズを数多く生み出し“Vシネマの帝王”と呼ばれる。そして主演100本目の記念作『ゼブラーマン』(2004年)で、2005年日本アカデミー賞有終主演男優賞を受賞。1995年には『BAD GUY BEACH』で<あいかわ翔>として監督デビューも果たすなど多方面で活躍中。4月公開の主演映画『昆虫探偵ヨシダヨシミ』の主題歌「生きていることがいい」で15年ぶりにシングルCDをリリースした。 |
『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-』
舞台は西暦2025年、東京=ゼブラシティ。すっかり様変わりした東京の路上で、市川新市はいきなり目覚める。時間は午前5時。強烈なサイレンとともに“ゼブラタイム”が始まった! すると、いきなり警官(ゼブラポリス)に発砲され、白黒の町を逃げ惑う新市。何が起こっているのか理解できない。何人ものゼブラポリスに追われ、最後には胸を打ちぬかれ、意識を失ってしまう。5分のゼブラタイムが終了すると、朝日が昇り、普通の日常が動きはじめる。そこに、白装束の男が現れ、新市を連れ去る。 連れていかれた先は、ゼブラシティの外にあるコミューン“白馬の家”。ゼブラシティの犠牲者たちを匿い、自給自足の生活をしている彼らのリーダー・浅野は、新市を見て愕然とする。それは15年前に行方不明になった小学校の担任の先生、かつてエイリアンと戦い、地球を救ったゼブラーマン・市川新市だったのだから。「先生・・・」と呼ぶ浅野に対して、新市は何のことかわからない。15年間分の記憶が全く無いのだ。傷ついた心と体を癒すため、新市は“白馬の家”でリハビリ生活を開始する。 その頃、ヒットチャート40週連続1位のスーパーアイドル・ゼブラクイーン(その正体は都知事の娘・ユイ)と側近の新実は、世界征服の野望を着実に進めていた。それは、父の都知事が内密に保護していたが、研究施設から忽然と姿を消したエイリアンを探し出し、もう一度地球上で暴れさせ、それを倒すことで、“地球を救ったスーパーヒロイン”として全世界に君臨しようというもの。そのエイリアンが“白馬の家”にいることをつきとめ、さっそく行動を開始する! 新市は、“白馬の家”で白黒のパンジーを育てる少女・すみれと出会う。最初は何も喋らないが、徐々に心を開いていくすみれ。だが、新市とすみれがふと触れあった時、新市の全身に戦慄が走り、失った記憶が蘇った。新市の脳裏に謎の声が響く、「まだ終わっていないんだよ、ゼブラーマン」。今、地球の存亡をかけた“白と黒の戦い”が、始まる!! 監督:三池崇史 脚本:宮藤官九郎 出演:哀川翔 仲里依紗 阿部力 井上正大 田中直樹 ガダルカナル・タカ 配給:東映 5月1日(土)より全国公開 公式サイト |
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2010/04/30