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『アントキノイノチ』瀬々敬久監督、「世界に向かって、『元気ですか!』と叫ぶ」

 岡田将生榮倉奈々が初共演した映画『アントキノイノチ』が、あす19日から公開される。「生きること」に絶望した男女が出逢い、遺品整理業という仕事を通して失われた命や遺されたモノに触れ、生きる勇気を取り戻すまでを描いた作品。瀬々敬久監督は「“死”を扱うことによって、“生”が見えるような映画を目指した」と語る。

映画『アントキノイノチ』の瀬々敬久監督 (C)ORICON DD in 

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 同作はシンガー・ソングライターのさだまさしが、初めて若者に向けたメッセージとして書き上げた同名小説が原作。高校時代に友人を“殺した”ことがきっかけで、心を閉ざしてしまった永島杏平(岡田)は社会復帰の第一歩として、遺品整理業社「クーパーズ」で働き始める。職場で出会った同世代の久保田ゆき(榮倉)もまた、高校時代のある出来事がきっかけで、心に傷を負っていた。

 遺品整理とは、遺族に代わって故人の部屋を片付ける仕事。依頼主にはそれぞれ遺品整理ができない何らかの事情を抱えており、それは個人の問題であり、家族の問題であり、社会の問題であったりする。

 瀬々監督は「無縁社会の広がりや孤立死の増加が話題になっていた数年前に、どうしてそんな世の中になってしまったんだろう?と思って立ち上げた企画。映画作りはエンターテインメントでもあるけれど、僕の場合、脚本作りや撮影の現場を通して自分なりの答え探しをしているような部分もある」という。

 今回は、その答え探しの最中に東日本大震災が起こった。同作は今年の3月1日にクランクインし、3月11日も撮影していた。「映画を撮っている場合かと、気持ちが揺らいだこともありましたが、がれきの中から思い出の写真や遺品を捜そうとする人々の姿をテレビの報道で見て、この映画は『やっぱり作るべきだ』と思って、キャスト・スタッフともに一丸となって取り組みました」。

 映画の後半で、主演の二人が海に向かって「元気ですか!」と何度も叫ぶシーンがある。原作とは設定を変更して描いたそのシーンには、人間関係の希薄化、社会的孤立といった問題意識に対するこの映画の「明確な答えではないが、作品に込めたメッセージの一つになった」と瀬々監督。それは現場で生まれ、見つけた答えの一つだった。

 「本家・アントニオ猪木さんの『元気ですか!』により近いイメージです。猪木さんはいつも不特定多数の人に向かってあの言葉を言っているでしょう。家族、友人、恋人など、個人個人に伝えないといけないこともあるけれど、誰彼なくすべての人に向かって、いってしまえば世界に向かって、『元気ですか!』と言いたくなる気持ちも大事なんじゃないか、と。そういう気持ちになるだけで、実は人と、社会と、つながっている。この物語の主人公のような若者、青春時代というのは、目先の出来事一つで世の中のすべてが、未来のすべてが漠然とした不安に覆われてしまいがち。岡田くんと榮倉さんが表現してくれた『元気ですか』には、若者に限らず、モヤッとした不安感を抱えている人たちを浄化するような作用があると思いました」。

 瀬々監督は昨年、構想5年、撮影1年、上映時間4時間38分に及ぶ大巨編の社会派ヒューマン映画『ヘヴンズ ストーリー』を発表して話題を呼び、今年2月のベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞。『アントキノイノチ』も今年8月のモントリオール世界映画祭で革新的で質の高い映画に与えられるイノベーション・アワードを受賞するなど、世界の映画界からも高く評価されている。

 彼を創作に駆り立てるものは何か。「子どもの頃から死んだ後のことを考えると怖くてたまらなかった。僕は死ぬのが怖い。それは今は“生きている”から怖いと思うのだろう。ならば“生きている”とはどういうことなのか。僕の映画作りの多くはこの問題から始まり、付きまとってくるのです」。

 今後の映画作りについて聞くと、「世界中を見渡しても、現実はすごく厳しくなっていますよね。日本は震災からの復興のこともあるし、格差社会は広がっているし、閉塞感が充満していて、もはや格好つけている場合じゃない。こんな行き詰まった世の中なんかぶっ飛ばしてやる!みたいな勢いのある若者たちの青春映画を撮りたい。今の状況を打破する起爆剤の一助となるような映画が作れたらいいですね」と元気ハツラツに答えが返ってきた。

 映画『アントキノイノチ』は11月19日(土)より全国で公開される。

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  • 映画『アントキノイノチ』より(C)2011映画「アントキノイノチ」製作委員 

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