俳優の橋本愛が2年連続となる「第35回東京国際映画祭」フェスティバル・アンバサダーに就任。21日、都内で開催されたラインナップ発表会に出席した。「今年はもうちょっと自分にできることはないか、と考えた」という橋本は、映画業界のハラスメントや労働環境の問題についての私見を述べた。

　「今の日本の映画界に立ちはだかる課題について、自分の気持ちをお話しできれば」と切り出した橋本は、「自分が現場を経験していて一番に思うのは、世代間の溝」だといい、上の世代に対しては「もう少しお互いの声を聞き合う姿勢がこれからのモノづくりは大事なことなんじゃないか」と、言葉を選びながらも意見を述べた。

　また、自身を含む若い世代に向けても「自分の声を押し殺されることを何度も経験してきて、あきらめてしまいそうなところを、そこはめげずに、自分の意見をちゃんともって伝える、あきらめずに自分の意見を伝えていく、表現方法を鍛えて、伝わるように伝えるスキルを磨いていくことが大事だと思っている。お互いが歩み寄って、前よりすてきな映画をつくれる環境ができたらいいな」と話した。

　昨年の映画祭では「海外の監督さんや女優さんとお話する機会がありまして、自分の英語力のつたなさに絶望しながらも、映画、芸術を通してつながるコミュニケーション能力というものも自分は身につけていかなきゃいけないんだな、と考えるきっかけになりました」と、刺激を受けたよう。世界と比べて日本のLGBTQ＋への理解や世界の環境問題への意識の低さにも言及した。

　「歴史や伝統もすばらしいが、それを守ろうとするがゆえにこぼれ落ちてしまう人たちもいて、そういう人たちの苦しみや悲しみにちゃんと寄り添って、それでも生きていてほしいという気持ちを込めてモノをつくっていくのがきっと映画であり、芸術。助け合いながら、世界がちょっとでも良くなるお手伝いを、映画を通してしていければ。国際映画祭で改めて世界を見渡して、日本のすてきなところと、少し改善した方がいいなと思うことを見直すきっかけになったらいいな」と、東京で開かれる国際映画祭を、課題を希望に変えるきっかけにしてほしいと語っていた。

　この日発表されたさまざまな映画祭プログラムの中では、「青山真治監督の特集上映に足を運べたら。いつかご一緒したいな、と思っていた監督でした」と、昨年の同映画祭で審査委員も務めながらも、今年3月に急逝した青山監督への哀悼の意も表していた。

■第35回東京国際映画祭 開催概要
開催期間：2022年10月24日（月）〜11月２日（水）
会場：日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアのやホールなど
主催：公益財団法人ユニジャパン
公式サイト：www.tiff-jp.net