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『北区赤羽』『おこだわり』…“ドキュメンタリードラマ”はジャンルとして確立する?

 9日(金)よりスタートした松岡茉優主演の『その「おこだわり」、私にもくれよ!』が、テレビ東京の深夜ドラマらしいユニークな作風で注目を集めている。本作は、『モーニング』(講談社)で連載されている清野とおる氏原作の漫画を題材とする“フェイク・ドキュメンタリードラマ”。台本があるとはいえ、松岡&伊藤は本人役、ゲスト出演者の“おこだわり人”たちもモーニング編集者・笠井俊純、作家の戌井昭人など実在の人物。プライベートでも仲のいい松岡&伊藤の掛け合いは、素と台本の境目がわからないほどリアルで、「どこからがアドリブ?」と想像するのも視聴者の楽しみのひとつとなっている。

■虚実の見分けがつかない構造は“テレ東アプローチ”の真骨頂

 ドキュメンタリー風のドラマといえば、古くから現実の出来事をドキュメンタリータッチで描く“再現ドラマ”がよく見られたが、“フェイク・ドキュメンタリードラマ”は虚構の物語をドキュメンタリー風に描くという点で大きく異なる。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などでも知られる手法で、実在の人物を本人が演じることもあり、“虚実の見分けがつかない”構造が面白みになっている。ドキュメンタリー形式で撮影された日本の作品の筆頭といえば、『おこだわり〜』と同じ松江哲明監督が2015年に同枠で手がけた『山田孝之の東京都北区赤羽』。本作は、役者としてスランプに陥った山田が、清野とおる氏の漫画『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』(双葉社)に感銘を受け、赤羽に移り住んで自らと向き合う姿に密着したもの。“ドキュメンタリードラマ”と銘打った本作は、やはり虚実の境目が曖昧で、「これって現実? フィクション?」と大きな話題を呼んだ。

 ドキュメンタリータッチのドラマのスタイルを浸透させつつあるテレ東だが、そこにつながるような企画はすでに以前からあった。たとえば2012年の『撮らないでください!! グラビアアイドル裏物語』では、現役グラビアアイドル19人が本人役で出演。その私生活や本音をインタビューで探る内容で、フィクションとはいえ、素の部分も垣間見えるセルフパロディ的な作品だった。

 また、演じる本人の名前をそのまま役名にするなど、どこかドラマと現実とリンクさせるような作品も多い。2011年から放送された『ウレロシリーズ』では、劇団ひとり、バカリズムらが芸名そのままで出演。彼らが演じる弱小芸能事務所のメンバーが、ももいろクローバーZを思わせるアイドルを売り出す設定で、その歌声を実際にももクロが務めていた。ほかにも『好好!キョンシーガール〜東京電視台戦記〜』では川島海荷が本人役を、現在放送中の『ナイトヒーロー NAOTO』ではEXILE・三代目 J Soul BrothersのNAOTOが本人役を演じていることからも、テレ東が得意とする路線といえそうだ。もともと社会派のドキュメンタリーや経済番組に強く、質の高い番組を発信してきた局ならではのアプローチなのかもしれない。

■素人が出演しても“味”として成立 低予算でも成立できる利点も

 『おこだわり〜』に代表されるドキュメンタリードラマのメリットは、低予算でもアイディア次第で面白い番組が作れることだ。実際、『おこだわり〜』にも、派手なセットや大掛かりなロケ、特殊なCGなどは使われていない。また、出演者が全編にわたって本格的な“演技”をする必要がないため、チャレンジングなキャスティングがしやすい。松岡茉優&伊藤沙莉のような演技巧者が出演すれば、視聴者が“演技”と“素”の境目を想像する楽しみにつながる一方、たとえ演技が未熟な役者であっても、ただ存在するだけでドキュメンタリーとして成立してしまう。内容によっては、むしろ素人に近い存在のほうが味を出すこともあるだろう。

 ドラマや映画をヒットさせるためには、キャストの人気・実力に大きな比重がかかることは明らかで、キャスティングが作品の質やヒットに大きく影響することが多い。だが、それゆえにメインキャストの顔ぶれが定番化し、既視感を覚える顧客が増えている可能性がある。その点、ドキュメンタリードラマは、ブレイク予備軍のキャストを抜擢するなど、キャスティング面で冒険しやすいのが強みだ。キャストの発掘と斬新な企画のアピールができる上、制作コストもかからない。そんなドキュメンタリードラマは、番組にコストがかけられない時代の新たなジャンルとして確立されていくかもしれない。

(文・加藤恵)



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