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『花咲舞』好調の要因は“心地良い”マンネリ感 『水戸黄門』から脈々と受け継がれる勧善懲悪

 夏クールのドラマの視聴率が軒並み苦戦している。初回10%を越えたのが6作のみ。さらに、うち3作が2話で1ケタに落ち、初回16.9%で1位だった『デスノート』も3話で8.7%に。伝説的コミックのドラマ化で話題を呼んだ『ど根性ガエル』も、初回13.1%から3話では6.4%まで落ち込んだ。他もほとんどが右肩下がりだ。そのなかで唯一安定しているのが『花咲舞が黙ってない』(ともに日本テレビ系)。初回14.7%で、以後4話までのうち3話が14%台だ。『水戸黄門』にも通じる勧善懲悪で安心して観られるストーリーが、マンネリとも言われつつ支持されている。

◆数多く作られてきた『水戸黄門』型フォーマット

 『花咲舞』は今回が第2シリーズ。第1シリーズは昨年4月期に放送され、平均16.0%を記録。花咲舞役のは、NHK朝ドラ『ごちそうさん』の放送終了から間を置かずに主演した。舞台はメガバンクで、花咲は支店で起きた問題の解決に当たる“臨店”に携わっている。原作は最高視聴率42.2%の歴史的ヒット『半沢直樹』(TBS系)と同じ池井戸潤氏。銀行員が主人公なのも共通していて、当時は“女版・半沢直樹”とも呼ばれた。

 ただ、『半沢直樹』では5億円の融資の回収を巡るストーリーなどが描かれたのに対し、『花咲舞』では、たとえば今期の3話で起きたのが支店での300万円の紛失だったり、『半沢』の“軽量版”にもなっている。そのぶん、週の真ん中の水曜に気楽に観られる。そして、1話完結。支店長らの不正やハラスメントを突き止め、花咲が「お言葉を返すようですが」の決め台詞から、「立場を利用して部下に間違ったことをやらせているのはあなたでしょう!」などと、誰もが口にできなかったことをズバッと言って一件落着……というのが、毎回の定番になっている。

 こうした勧善懲悪で1話完結のドラマは、いわば『水戸黄門』型フォーマットとして数多く作られてきたが、『花咲舞』はとくに構図が似ている。諸国漫遊=臨店班の支店巡り、悪代官=支店幹部、町民=支店員、「この紋所が目に入らぬか」=「お言葉を返すようですが」といった感じ。第2シリーズでは第1シリーズで観たような展開も見受けられ、マンネリとの声もあるが、『水戸黄門』もそう言われながら42年に渡って続いた。予定調和ではあっても、スカッとする決着が用意されている安心感の方が、視聴者を引き付ける。

 『花咲舞』に限らず、近年はそうした傾向が強い。パソコン、スマホ、ゲームの普及でテレビ離れが進み、ドラマ全体の視聴率が下がっている現状。波乱万丈の展開や謎が徐々に明かされて「次回も観たい」と思わせるのが連ドラの醍醐味ではあるが、テレビに向かう時間自体が減るなかで、1話で話が終わらないドラマを毎週観てもらうのは容易でない。

◆安定した視聴率に繋がった『花咲舞』定番の追求

 『相棒』シリーズや『ガリレオ』『ドクターX』『HERO』などのヒットドラマは基本1話完結の定型パターンで、1回だけ観ても楽しめる。それで逆に毎週観るようになり、1週観逃しても、またチャンネルを合わせやすい。『ドクターX』の「私、失敗しないので」と言いながら難手術を成功させる展開など、お約束で半ばマンネリでも心地良い。『花咲舞』はそうした部分をより陽性な形で徹底させている。

 とはいえ、1話完結なら現クールでも、『ホテルコンシェルジュ』や『ナポレオンの村』などほかにもある。『花咲舞』の安定感が突出しているのはなぜか。第1シリーズがスタートから話題性があったことは大きいが、実際に観た視聴者の期待を裏切らなかった。杏が演じる花咲舞は情に厚く、誰が相手でも間違ったことは「間違っている」とハッキリ言うキャラクターで気持ちいい。花咲とコンビを組む臨店班の相馬健(上川隆也)が、彼女の暴走に手を焼きながら、結局は絶妙にアシストするコンビ感も良い味だ。

 加えて、1話完結は事件を解決する刑事ものと相性が良いが、『花咲舞』では300万円が消えたからくりを花咲がテラー(窓口係)経験を活かして突き止めたりと、不正の背景の謎解き的な要素を取り入れているのも、観始めたら最後まで引き込まれる要因になっている。

 展開が定番だからこそ内容は練られていなければならず、逆に練られたマンネリは一度捉えた視聴者を離さない。『花咲舞が黙ってない』はこれまでのところ、制作姿勢にブレがなく定番を追求しているのが、安定した視聴率に繋がっているようだ。
(文:斉藤貴志)



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