冬ドラマの中で印象に残ったことといえば、モデルで女優の菜々緒だ。フジテレビ系『ゴーストライター』（毎週火曜　後9：00）とTBS系『まっしろ』（毎週火曜　後10：00）の2作品に出演。「火曜は菜々緒デー」とネット上でも話題になった。ファッションモデルとして活躍しつつ、昨年放送された『ファースト・クラス』（フジテレビ）でのレミ絵役が当たり役となったことがきっかけで女優としてステップアップに勢いがついた。20代の女優としては悪役もできる貴重な存在として、独自の立ち位置を確立しつつある。

【写真】その他の写真を見る

■ドラマ初出演はシュールなコスプレ　悪女・レミ絵の毒舌が大人気に

　「これからもっと女優業にも力を入れていきたい」と意欲的な菜々緒。「悪女のイメージが強いかもしれないけれど、一つのイメージに固まらず、どんな役でも演じられる“謎の女”でいたい」と抱負を語る。

　今冬、2本の連ドラに出演。『まっしろ』では、茶髪のボブスタイルに白いナース服姿で主人公の朱里（堀北真希）にときどき意地悪を言う役どころで登場。一方、『ゴーストライター』では黒髪のロングヘアで大手出版社の文芸誌の編集者で、仕事をテキパキこなし、三浦翔平演じる同僚を思いやる優しい女性を演じている。

　「どちらの現場も充実して楽しかった印象が強く残っています。『まっしろ』も『ゴーストライター』もすばらしい俳優さんたちに囲まれてお仕事できるのがうれしくて。日々、刺激を受けながら仕事ができるのは本当にありがたいことだと感じています」。

　女優としてテレビドラマ初出演作は、初主演作でもある『主に泣いてます』（2012年7月期、フジテレビ）で、絶世の美貌を持つがゆえに薄幸な人生を送っている主人公・泉を演じた。「黒髪ではかなげな美人ならたくさんいるのに、何で私なんだろう？」と思っていたそうだが、ギャグ要素の強い作品で、美貌を隠すために「子なきじじい」などのシュールなコスプレを潔く“着こなせる” 美人はそうそういないのではないか。

　自他共に認める出世作の『ファースト・クラス』（14年4月期）では、帰国子女を気取る腹黒コネ入社の編集者・川島レミ絵の罵詈雑言が視聴者に大ウケ。木村白雪役の田畑智子との毒舌バトルも注目を集めた。

　「自分の名前を多くの人に覚えてもらえるきっかけになった作品。いまだに、ファッションショーで『レミ絵』と書いたプラカードを持った子がいるくらい、皆さんに愛された悪役。いい経験をさせてもらったと思っています」。

■“普通の経験”が作り出す、リアリティーのある女性像

　9頭身という恵まれた容姿を持っているが、学生時代は意外と「目立たなかった」という。「高校は一学年に800人くらいいるマンモス校で、読者モデルをやっているかわいい子が周囲にたくさんいました。一応、スカウトされて事務所に所属していましたが、芸能の仕事に就けると思うことも目指すこともなく、4年制の大学に進学しましたし、大学も女子大だったのでそこでもモデルをやっている子はいっぱいいましたから。いたって普通に学生生活を送り、アルバイトをして過ごしていた」と振り返る。

　芸能活動を本格的に始めたのは20歳の頃（2009年）。東京ガールズコレクション“ミスTGC”を受賞したあたりから、風向きが変わって来た。2010年度“三愛水着イメージガール”に抜てきされ、『non-no』のレギュラーモデル、『GINGER（ジンジャー）』のレギュラーモデルを務め、徐々にタレント活動も増えていった。

　「子どもの頃からモデルや役者をやっている方も多く、天賦の才能や積み重ねた経験を見せつけられ、私ももっと若い頃から芸能の仕事をしていれば…、と思うことがある反面、20歳から始めて逆に良かったのかなぁ、と思うこともあります。遅れているんだったら追い付けるように頑張ろう、何でもやってやろうという気持ちになれたことが、この5年間のいろいろな経験につながっていると思います」

　ごく普通の学生生活やアルバイト経験などが、地に足の着いたリアリティーある女性像を演じる上でもいい影響を与え、それが彼女の最大のスキルであり強みなのかもしれない。

　「お芝居は楽しいけれど、歯がゆい思いをすることもたくさんあります。でも、簡単にできるものだったら、こんなに興味がわかないと思う。できないことにチャレンジするのが好き。モデルの仕事も女優の仕事も、毎日、頭を抱えて試行錯誤を繰り返してやっているけど、もっと頑張りたいと思える刺激的で魅力的な仕事だと思う。そういった意味で、いい仕事に就けたと思いますし、もっと頑張りたいですね」と力強く語っていた。