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デビュー1年半でグラミー候補に! KATSEYEが起こした“ガール・グループ革命”の裏側を証言【インタビュー】
実力で現在の地位を築いた“ガール・グループ”
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「KATSEYEのもっともユニークな点は、3大陸6都市から集まってきたメンバーで構成されている点です。3人のアメリカ出身のメンバーと、韓国人、フィリピン人、スイス出身のガーナ系イタリア人という6人で、3人のアメリカ出身のメンバーに関しても、ハワイ育ちの中国系、インド系、そしてキューバ系/ベネズエラ系と、多様性のあるグループになっています」(ユニバーサルインターナショナル マーケティング部 阿佐美悠一氏)
DANIELA/ダニエラ(キューバ系/ベネズエラ系アメリカ人,アメリカ・アトランタ出身)、LARA/ララ(インド人,アメリカ・ニューヨーク出身)、MANON/マノン(ガーナ系イタリア人,スイス・チューリッヒ出身)、MEGAN/メーガン(中国系アメリカ人,アメリカ・ホノルル出身)、SOPHIA/ソフィア(フィリピン人,フィリピン・マニラ出身)、YOONCHAE/ユンチェ(韓国人,韓国・ソウル出身)からなるKATSEYE
ただし、デビューしてすぐに現在の状況にたどり着いたわけではない。Geffen RecordsとHYBEが手を組んでのプロジェクトというだけあり、その歩みはとても戦略的。分かりやすく言うならば「洋楽アーティストをK-POP方式で作り出す」という作戦だ。
まず2024年6月に、まさしく「Debut」と言う曲でデビューし、次に発表した「Touch」は、音楽的にもK-POP的なソフトなサウンドであり、これがTikTokなどでバイラルヒットとなり、まずKATSEYEは「アメリカのK-POPのグループ」「Touchの人」という見え方で知られるようになった。プロモーション自体も、この時期はK-POP式のノウハウを踏襲し、K-POPアーティストが多数出演する韓国のテレビ番組でパフォーマンスを行ったり、グループ同士で互いの曲を踊り合うなど、K-POP式のSNSプロモーションで地盤を固め、まずアメリカでK-POPファンを獲得。日本国内でも同様に、TikTokやInstagramのリール動画を中心に「耳に残る楽曲」「印象的な振り付け」といったところで、まずは「Touchの人」として若い世代を中心に、その存在を浸透させていった。
「そこで行ったKATSEYEのパフォーマンスが、もうキレキレで、圧倒的だったんです。そこから評価が上がり始め、じわじわとファン層が広がっていきました」(阿佐美氏)
「パフォーマンスのクオリティが断然高いですよね。これまでの洋楽のグループで、それこそK-POPグループのように、一瞬たりとも動きがブレずに、全員がピタッと合わせるようなパフォーマンスって見たことがなかった。どちらかと言うと洋楽では、R&B的に自由な動きが多い中で、KATSEYEはそうしたキレキレのパフォーマンスを、しかもアジア人ではなくグローバルなグループでやるということで、視覚的な刺激もすごいインパクトだったと思います」(川崎氏)
そして、今年4月30日(日本時間)にリリースしたセカンドEPからの1stシングル「Gnarly」で、KATSEYEの才能とポテンシャルを一気に爆発させた。その中身は、サウンドも、そしてミュージックビデオ(MV)での表現も、まるで別グループかと思わせるほどに大きく印象を変えての衝撃的なカムバックであった。
強烈なインパクトを放った「Gnarly」に続き、2ndシングルとしてラテンポップを取り入れた「Gabriela」をリリース。さらなる音楽的な幅の広さを示すことで「このグループは一体何者?」と、リスナーのフェーズを“認知”から“興味”へと変化させていく。そして、これら2曲を収録した2nd EP『BEAUTIFUL CHAOS』で、2024年からK-POPの文脈で彼女たちを応援するようになったK-POPファン層を置きざりにすることなく、さらに2025年に洋楽ファンをも取り込みながら、KATSEYEの本領を如何なく発揮する。
そして2025年11月末現在、KATSEYEのSpotifyの月間リスナー数が約3390万人と、世界の名だたる新旧“ガール・グループ”の中で1位となっており、Spotifyでの再生数は10億回を突破している。既にK-POPの枠を超えて“ガール・グループ”の頂点に立つ、今もっとも勢いのあるグループとなったのだ。
チームの力で世界を目指す KATSEYEの世界戦略
「R&Bを聴いて育ったメンバーもいれば、ポップからインディーまで幅広い音楽を聴いてきたMEGAN(メーガン)に、韓国人のYOONCHAE(ユンチェ)は大のK-POPファン。そしてラテンポップ「Gabriela」のスペイン語パートを歌うのはキューバ&ベネズエラ系アメリカ人のDANIELA(ダニエラ)です。しかも『Gabriela』のMVには、“テレノベラ”と呼ばれる中南米のメロドラマ風の演出が取り入れられるなど、ラテン・カルチャーへのリスペクトも強いクリエイティブとなっています。このように、さまざまな音楽ジャンルを取り入れながらも、それらが表面的にスタイルをなぞった程度のものではなく、きちんとした説得力のあるパフォーマンスになっているんです」(阿佐美氏)
ラテン人口は世界の約8%であり、ことアメリカにおいては、ヒスパニック・ラテン系人口の割合は約18%を占めている。言い換えれば、“ラテン風”くらいでは認めてもらえないアメリカで、「Gabriela」を“本物”と認めさせる基盤をKATSEYEはしっかりと形成しているのだ。だからこそ、「Gabriela」が、アメリカのシングルチャートで最高31位、Spotifyグローバルのシングルデイリーチャートで最高7位を記録、さらに、ポルトガルではゴールド認定され、ラテン地域で軒並みトップ10入りを果たすなど、世界的にもKATSEYE旋風を巻き起こす起爆剤になった。同時に、KATSEYEの活躍は、一種のアメリカン・ドリーム的な側面も持っているようだ。
ユニバーサル ミュージック 川崎たみ子氏
加えて、ネット世代ならではのKATSEYEのSNSとの相性の良さも重要だ。今やニュースですらTikTokでチェックするZ世代にとって、彼女たちが発信するダンスや音楽、そしてありのままの素顔は、ダイレクトかつに着実に届いている。結果、今年のTikTok「Top Artist Global」で年間1位の座にランクインし、次世代が日常的に触れるSNSでの存在感や影響力でも世界1位に。極端に言えば、「KATSEYEのTikTokを追いかけておけば最新ミームを知ることができる」と言うくらいに、時代のトレンドを反映させた存在となっている。
(C)Rahul Bhatt
「これまで3回来日していますが、スタッフの人数がものすごく多いんです。最初は『えっ、こんなに?』と驚きましたが、実際に帯同して、今度はその凄さに驚きました。事細かに担当が決まっていて、1人1人が責任を持って『これはこう』と判断できるプロフェッショナル。まさにチームKATSEYEといった集団で、メンバーも、ものすごくチームを信頼しているんです」(阿佐美氏)
「たとえばマネージャーとか、ある1人がクリエイティブの決断から、取材の内容、食事まで多くの決定権を握っていると、その人が止まってしまったらすべてが止まります。でも、KATSEYEチームは役割が細分化されているので、常に前進し続ける。そこが他のアーティストにはない強みですね。しかも全員すごく仕事が速くて、縦も横もすごいスピードで連携する。これはカルチャーショックでしたし、組織作りという面でも、ものすごく勉強になりました」(川崎氏)
“個”としても“チーム”としても世界トップクラスのKATSEYEを、今後どのように日本で広めていきたいのか、最後に2人に話を聞いた。
「「Touch」でついてくれたK-POPリスナー層と、今年についてくれた洋楽ファン層、この両方が交わるのって簡単なことではないので、そこの土台をさらにしっかりと築いていきたいです。日本においてK-POPファン層は、見方を変えればより広い一般音楽ファン層とも言えますから、そこを入口にしつつ、洋楽の中でのスターも超えるような国民的スターになってほしいですし、そんな彼女たちのポテンシャルに相応しい大きな会場でライブができるよう、その存在を広めていきたいです」(阿佐美氏)
ユニバーサル ミュージック 阿佐美悠一氏
「ヒットや認知度という意味で言うと、この十数年間は、洋楽における“ガール・グループ”不在の時期だと感じていて。そんな中で、人気と実績がともなった久々の“ガール・グループ”がKATSEYE。しかも彼女たちは、レジェンドたちもからも支持されているんです。例えば、元フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロは、今年のサマーソニックに出演した翌日、KATSEYEのショーケースライブを観に来てくれて、一緒にTikTokを撮ったりして話題になりました。またKATSEYEが10月末に初めてロンドンでイベントを行った際、司会をしたのは元スパイス・ガールズのメラニーC。このように、名だたる先輩たちが応援してくれており、そういう歴史を背負っているというアーティストだと考えています。ポップの“ガール・グループ”でグラミー賞の年間最優秀新人賞にノミネートされたのって、実はKATSEYEが初めてだと思うのですが、先人たちのバトンを受け継いで、今ここに立っている。そういう背景も含めて、我々も日本で『こういう“ガール・グループ”があるんだよ』ということを、もっともっと広めていきたいですね」(阿佐美氏)
※川崎たみ子氏の「崎」は「たつさき」が正式表記
取材・文:布施雄一郎
(左から)川崎たみ子、阿佐美悠一氏



