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タワレコ、音楽ファンに愛されて40周年 嶺脇社長が語るシーンの変化とリアル店舗の意義

ネット・スマホの登場で“CDが売れない時代” リアル店舗の役割は「ハブ」

――ところが、昨今は“CDが売れない時代”といわれて久しいです。
嶺脇社長 昔はYouTubeも配信もありませんでしたから、聴こうと思ったらパッケージを買うか、ラジオや有線で聴くしかない。やはりインターネットの出現がリスニングスタイルを変えたのでしょう。特にYouTubeは大きい。違法も合法も含めて無料で聴けるというので、「買わなくてもいいや」という感覚が生まれたように思います。

――レンタルや中古店全盛期の頃よりも大きな変化でしたか?
嶺脇社長 さらに大きいですね。だってお金がいらないんですもん。欧米では前からそういう動きはありました。例えばプリンスが新聞に新譜をつけました。アーティストが自身でプロモーションして音楽を配信し、自分のコンサートにつなげていく。その行き着くところは例えば、チャンス・ザ・ラッパー(米人気ラップアーティスト)みたいないわゆる「音楽は全部無料です。ただし、ライブに来て物販買ってくださいね」という形。パッケージ販売を生業としているうちとしては厳しい話です。

――そんな中でリアル店舗の役割はどこにあると思いますか?
嶺脇社長 アーティストとお客様が出会う場として、店舗はやっぱり機能していると思うんです。いろいろなご意見があるのは承知していますが…例えばAKBグループさんが握手券をCDに付けるとかもそうです。ほかにも、K-POPは新譜が出ると、本当にたくさんのお客様が渋谷店に来られるんです。そして写真をインスタグラムに上げたり、ファン同士でずっと立ち話をされていたり。そういうアーティストとユーザー、ユーザーとユーザーをつなぐハブのような中でビジネスが成立している面もあります。僕らの強みはそれらのリアルの場を持っているということですので、そこでの展開というニーズは、決してなくならないという自負はあります。それと、新人アーティストの発掘とプロモーションという点では、我々の果たせる役割というのが、非常に重要だとも思っています。大手のメディアは、売れているもの、人気のアーティストに集中しがちで、なかなか新人のプロモーションの場にはなりにくい。一方、インターネットは情報量が膨大すぎて、それこそ自分の好みにあったアーティストを探し当てるのがかえって大変だということもあります。その中から僕らが目利き役となって店舗やオンラインで紹介し聴いていただく、そしてインストアイベントで、実際に観ていただく。そうしたノウハウと機能を我々は持っていると思っています。
――ユーザーの変化にどう対応していくかは課題ですよね。
嶺脇社長 海外を見ていてもこれからはストリーミングが音楽リスニングの主流になる時代が来るんでしょう、ということは容易に想像できますね。ただインターネットやストリーミングで聴いて楽しいという人だけではないと思うんです。その時にどういうあり方が一番、音楽ファンが喜ぶリアル店舗なのかなと考えます。弊社でいうと象徴的なのは渋谷店だと思うんですけど、カフェがあったり、イベントスペースがあったり。加えてユーザーの意識や嗜好、トレンドも日々変わっています。それこそが多様化だと思いますが、音楽はファッションや食などそれぞれの生活の中に上手く溶け込んできました。タワーレコードではすでに、推し色グッズなど、コアファン向けのグッズの開発や音楽好きの方々をターゲットにしたアパレル、そしてコラボカフェや展示会の開催など、多様化されたお客様の生活に我々が様々な形で参加できるようにしていきたいですね。、そして、それらファンの方々がパッケージを買いたくなった時、訪れるのは「タワーレコードだよね」と思ってもらえるよう日々試行錯誤を続けています。

――CDを買わないからといっても音楽好きは多いですから。
嶺脇社長 そうなんです。インターネットも決して我々の敵というわけではありません。私自身も会社の行き帰りはSpotifyを毎日聴いてますし(笑)、やはりLPが欲しくなったらディスクユニオンさんに行きます (笑)。私がユニオンさんの袋を持って歩いているので、それを見て驚かれる方もいますが、先日ユニオンの社長さんから「いつも買っていただきありがとうございます」とお声がけいただきました。勲章を頂いたようなものです(笑)。だからこそ、「パッケージは終わりで次は配信だ」という声が音楽の送り手から聞こえてくると寂しいですね。配信で聴く人もいますし、CDでもLPでもパッケージで欲しい人もいると思うんです。多様なニーズに応えられるようパッケージをリリースし続けてほしいなと思います。

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