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薬師丸ひろ子、20年ぶりのオリジナルアルバム『エトワール』に込めた想い 「人生の応援歌となる、“背中を押す”言葉が集まりました」

 「セーラー服と機関銃」「探偵物語」「Woman“Wの悲劇”より」など日本の歌謡史に残る名曲を残してきた薬師丸ひろ子。1998年発売の『-恋文- LOVE LETTER』以来、実に20年ぶりとなるオリジナルアルバムが本日9日、発売された。薬師丸自身も2曲の作詞を担当した本アルバムについて、アルバム制作の背景、世界観など、薬師丸の音楽への想いを聞いた。

今でもライブは全て“原曲キー”「青春時代の記憶を思い出してほしい」

――20年ぶりのオリジナルアルバム『エトワール』の制作には、どんな気持ちで臨みましたか?
薬師丸ひろ子コンサートはこの数年続けていたので、聴いてくださる方々の顔を思い浮かべて制作しました。とにかくメロディーが美しくて皆さんがホッとできるようなものを作りたいなって。ピアノやストリングスの音色が好きなので、あるときはダイナミックなシンフォニーのようなもの、あるときはピアノが囁きかけるようなものになっていて、そういう要素がアルバムに入っています。

――作詞に、いしわたり淳治さんや脚本家の岡田惠和さん。作曲に松本俊明さん、さかいゆうさんなどの作家陣を迎え、そして薬師丸さんも2曲の作詞を手がけたそうですね。
薬師丸ひろ子メロディーに関しては、何曲か提示して頂きこのメロディーを歌いたい、その後、メロディーの世界観によって作詞家の方や岡田惠和さんに歌詞をお願いしました。この曲の世界観を書いてみたい、そう感じた楽曲は私が作詞をすることになりました。

――本アルバムを通しで聴いてみて、薬師丸さんがこれまで歩んできた“歳月”と重なるような「時間軸」や「歌詞」の世界観を感じました。
薬師丸ひろ子このアルバムは、人生の応援歌というか、生きていく上でちょっと後ろから背中を“ポンポン”と誰かに叩いて貰ったり、そっと気持ちに寄り添うもの、そんな言葉が多く集まったと思います。アルバムタイトルの『エトワール』は「星」という意味もあり、うつむくんじゃなくて、ちょっと上を向いてみてとか「遠くの空から自分のことを見守ってくれている人がいる」とか、いろんな意味合いが込められています。

――透き通る歌声は健在で、キーもデビュー時から変わっていないそうですね。
薬師丸ひろ子今もライブでは全部原曲キーで歌っています。私が(デビュー曲「セーラー服と機関銃」などの)当時と変わらないキーで歌うことで、皆さんに青春時代や大切な思い出を振り返ってほしい。声だけじゃなく体力的にもいろいろ変化してきていますが、だからこそ、このアルバムを私の新しいスタートとして、やっていきたいなと思っています。

女優・薬師丸ひろ子を育てた、相米慎二監督の“厳しさ”と松田優作の“熱量”

――1981年公開映画『セーラー服と機関銃』(東映系)の故・相米慎二監督は、厳しい演出でも知られる方でしたが、当時の印象的なエピソードはありますか?
薬師丸ひろ子特別な演技指導もないし、何が正しいのか、何が間違っているのかを一切教えてくれないところが、逆に厳しいと思います。朝9時から夜12時までずっと撮影をやって、ホントに“マル”もらったことがないし、“バツ”がほとんど。無言もありますけど(笑)、夜中11時頃になってようやく“サンカク”がもらえるくらい…(笑)。

――どういった演技をした際に怒られましたか?
薬師丸ひろ子例えば、撮影中に風が吹いてきて、髪が顔にかかったり口に入ったら、普通はみんな髪を払うと思うけど、そんなことをしたら絶対に叱られました。なので、今でも髪が口に入ろうが顔にかかろうが、全く気にしません(笑)。

――髪を払ってはいけない理由というのは?
薬師丸ひろ子最近、その話をある監督にしたら「すごくよく分かる。それって観てる側の気持ちが削がれるんだ」っていうんですね。それと、その監督に「薬師丸さんは、なんで毎回カメラテストで違うことをやるんですか?」って聞かれたんですけど、それも三つ子の魂(百まで)というか。相米監督の元で、とにかく9時から12時までやり続ける忍耐力はついているわけで、でも同じ芝居をいつまでもやって慣れた感じになってしまったら、オーケーが出なくて皆さんに迷惑をお掛けして朝になる…。そういう恐怖心がどこかで植えつけられている。だから、自然と毎回違う演技をしてしまうんでしょうか。それから色々と試してみたい気持ちもあります(笑)。

――2年後には映画『探偵物語』(東映系)で故・松田優作さんと共演しました。松田さんの演技からはどんな影響を受けましたか?
薬師丸ひろ子「現場は“戦いの場”なんだ」というのを見せてもらいました。作品に対する想いや集中力を出演者スタッフに求めるというか引き出していきます。

――「求める」ということは、松田さんが直接何か言ってくる?
薬師丸ひろ子スタッフに強制するものではなく、優作さん自身が発する“熱”を受けたスタッフも熱を帯びるんですね。それで、そういうみんなの気を優作さんが吸収して、それ以上の熱量で演技を見せてくれました。

同年代の俳優・香川照之は“本当の夫婦”のような感覚!?

――薬師丸さんにとって、同世代の俳優で気になる方は?
薬師丸ひろ子香川照之さんとは夫婦役でご一緒させていただく中で、同年代として分かり合えるところが沢山ありました。年老いた役を一緒に演じて、何か本当の夫婦みたいに私は感じあえる瞬間が何度もありました。何十年とこの世界で生きてきて、たぶん言葉にしなくても分かり合える共通項がある。そういう仲間がいるというのは本当に素敵な仕事だと思います。

――デビュー当時から今に至るまで、女優業や歌手業に対する考え方、向き合い方に変化はありましたか?
薬師丸ひろ子若いときは、「望んだから手に入った」ものじゃなくて、「望まなかったから神様が与えてくれた」ものがいっぱいありました。例えば演技で賞をいただいたときも、「これはもらえそう」とか、私自身が望んだものではありませんでした。

――有名になっても謙虚でいたことが、その後の成長に繋がったということでしょうか。
薬師丸ひろ子私がこれまでの人生で感じたことは「謙虚であれ」ということです。人って「望むと自分の手から離れていく」ことが多いと思います。平常心で前を向いて歩いていれば、たまには神様が見ていてくれるかも知れないと。

(取材・文/水白京)

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