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米津玄師の歌詞への思い、祖父の死乗り越え「果たして正しかったのかどうか」

「普遍的なものを目指そうとすればするほど大変」、ポップミュージックへの考えは?

  • 配信ヒット中の「Lemon」

    配信ヒット中の「Lemon」

――カップリングの「クランベリーとパンケーキ」は、“こんな馬鹿な歌ですいません”といった歌詞もあります。
米津玄師 僕はお酒が好きなんですよ。朝まで飲んで、陽射しがガンガン入ってくる昼に気だるいなぁと思いながら二日酔いの状態で作ったのが、「クランベリーとパンケーキ」です。ものすごく僕の生活に根ざしている曲なので、歌詞は全体的によく書けたなと思います。

――二日酔いで制作するのも悪くないなと(笑)。
米津玄師 (笑)。二日酔いって、完全なる無駄な時間じゃないですか。でも、無駄だと思えることがあるから、反対側にいいと思えることがある。だから、無駄なものも愛していかなければいけないと思っていて。これは今年の僕の目標になっています。やっぱり、合理的に物事を突き詰めていっても面白くないんですよね。僕の音楽は聴いてくれる人がいて、感化し合う。何をもって感化し合えるかを考えると、合理的なものの先には見つからないんです。非合理的で、ある種の矛盾をはらんでいるものこそ、いいなと思える。かといって、非合理的なことばかりやっていても仕方ないんですけどね。

――なるほど。
米津玄師 ドロドロとしたものが芯にあるから、ポップミュージックとして成り立っているところもある。合理的なものと非合理的なもののバランスなのかな、と思います。たまに、“こんな風に作ればいいんでしょ?”というものを聴くと、ポップミュージックを舐めているなって思う瞬間があるんです。実は、普遍的なものを目指そうとすればするほど大変なのに。

――もう1曲の「Paper Flower」は、どのような思いから?
米津玄師 トラックでは、今までとは違うことを、という制約のもとに、夜中に散歩しながら目に入った光景などを盛り込みました。パソコンの前で作業をしていると頭が煮えてくるときもあるので、たまに散歩をするんです。窓やベランダからその家の生活が垣間見られて、“どんな風に暮らしているのかな?”と想像したりして。以前は、一般の方が日常を書き連ねているブログを読んだりしていたし、なんでもない生活に対して興味があって。ブログって、他のSNSとは違う“個室感”があるのが面白いと思っています。

ニコニコ動画出身者の活躍はあれど、「まだまだ舐められている」

――米津さんはニコニコ動画出身。昨今、このような動画サイトから生まれたアーティストが多く活躍されていますが、それについては?
米津玄師 とてもうれしいことです。でも、ニコ動出身というだけで、まだまだ舐められていることもある気がします。そういった見られ方をだんだんと払拭できたらいいなと思いますね。

――テレビの音楽番組にも出演するネット出身者も多くなりましたが、米津さんはいかがですか?
米津玄師 僕は、ステージに立ちたくて音楽を始めたわけではないので、自分の作るものがいろいろなところに波及しているのはありがたいことですが、向いていること、向いていないことはちゃんと自分で把握しています。でも、向いていることばかりやっていても仕方ないので、面倒くさいなと思うことでも美しいものになればいいなと思っていて。一度経験してみたい気持ちはあるので、いつかテレビで歌えたらいいですね。
(文:洲崎美佳子)

米津玄師 「Lemon」ミュージックビデオ

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