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【桐谷健太インタビュー】「海の声」ヒットからアルバム発売へ「自分の中の哲学にもつながった」
「俺、南から来てる」、中学時代にあった沖縄との接点
桐谷健太 THE BOOMにユニコーン……、洋楽ではオジー・オズボーンとかニルヴァーナ……もういろいろ。基本僕はドラムで、ときどきボーカルでした。
――そのとき、プロになりたいと思ったりは?
桐谷健太 ずっと役者をやりたかったので……。もちろん、「歌もええなぁ」と思ってましたよ。ステージで歌って演奏するってカッコイイ!って。ただ、歌の場合はそもそも……、自然に曲が生まれてきたことがなかったんですよ。ちゃんと書こうとしたわけじゃないんだけど、生まれてこないってことは、自分は曲を作る才能はないんやろな、って思っていました。もしプロでやってくなら自分で創らないとあかんやろうし、じゃあ音楽は、今のまま、大好きなことでええわと。
――当時、どうしてドラムをやろうと思ったんですか?
桐谷健太 単純に、見ててカッコイイから。しかも叩いたら音が鳴るってなんてシンプルなんや、って(笑)。ギターの場合は、「コード? 難しそやな」と。実際、後に、Fコードでつまづきましたしね(笑)。まぁでも、モテたいと思ったら、普通ギターにいきますよね。淀川かどっかの河川敷で、ポロ〜ン、「歌います」って言って、女の子の前で歌うこともできるやないですか(笑)。ドラムなんて、ドラムセットがないと叩けない。でもそのシンプルさが好きなんです。三線も、中学校の時に初めて親と一緒に沖縄に行って、空港に降り立って風を感じた瞬間、ぶわーって鳥肌が立った。「懐かしい!」って思ったんです。「俺、ここからや、南から来てる」って。初めて行った場所であんな感覚になったことが、今でも忘れられへん。そこから沖縄民謡とかも聴くようになって。だから、俺の場合楽器は、何かに生かそうとかそういうことじゃなくて、単純に好きで始めたものばかりですね。
――三線に実際に触れたのは?
桐谷健太 23歳か24歳か……。中学の時「沖縄、サイコー!」と思って以来、ちょいちょい沖縄には行ってました。大阪に帰っても沖縄のことを思い出してたんです。で、あるとき、役者としてデビューしたあとで、撮影で大阪に帰ってオカンと一緒に実家の近くを歩いていたら、三線の音色が聴こえてきて。バッと見たら、そこに三線屋があったんです。大阪に、三線屋さん。普通ないでしょ?(笑)。そこで初めて三線を買いました。今、音楽番組に出るときに弾いている三線も、その実家の近くの三線屋さんで買ったものです。
「好きでやってたことが仕事につながった。そこが自分らしい」
桐谷健太 そうなんですよ。何かを狙って始めたんじゃなくて、映画の『BECK』でやったラップにしても、ドラムにしても、三線にしても、単純に好きでやってたことが仕事につながった。そこが本当にありがたいし、自分らしいのかな、と思います。今回、「海の声」がいろんな人に受け入れられたことは、自分の中のちょっとした哲学にもつながったというか。
――哲学?
桐谷健太 今、目の前にあること、今、出会ったものを愛して、遊び心を持ちながらも全力でやれば、いいことにつながっていくねんな、と思いました。ヘンに、「こうしないといけない!」とかより、ただ好きなことをやるっていう、シンプルな動機が大事なんじゃないかと。
――小さい頃から、歌うことも好きだったんですか?
桐谷健太 もともと音楽が好きな家族で、オトンは、シャンソンみたいなのをよく歌っていて、オカンと兄貴はアコギが弾けて、ようみんな歌ってました。兄貴も風呂場で大音量で歌ってて、次の日小学校で、「昨日、お前の兄貴歌ってたな」とか友達に言われて、「はずかしー」みたいな(笑)。でも、自分もよう歌ってましたね。でも子供の頃は、あんまり歌が上手いとか思ったこともないし、言われたこともない。20代後半になって初めて、いろんな人に「声がいいね」って言われるようになって。「え? ホンマ?」って(笑)。
長瀬智也らと出演した音楽フェスで、クドカンに確認をとり……
桐谷健太 あのときは、単純に「CDを出せる」ってことが嬉しかったです。カッコええ楽曲やったし、お世辞は言わない役者仲間たちが「これが音楽だと思った」なんて言って褒めてくれたり、いろんな人に紹介してくれたり。でも不思議なのが、音楽の作品は、楽器の練習をずーっとやっても全然しんどくならない。楽しくてしゃあないんですね。そして、この時初めてボイトレをやらしてもらったんですけど、出ない音が出るようになったり、意外と喉強いとか、発見もありました。
――音楽系の作品ではしんどさを感じないということは、1時間半かかるという地獄図のメイクも……? 5月に行われたフェス『METROCK 2016』では、朝からフルメイクでのパフォーマンスが印象的でした。
桐谷健太 落とすのにも40分かかるんです(笑)。でも音楽をやっているときって、体力は使うけれど精神的にどんどん解放されていくから、疲れない。寝たらいいだけ、寝たら回復。『TOO YOUNG〜』の撮影もメチャメチャ健康的でした。めっちゃ体使って、寝て、また体動かして。心の風通しが良かったから。
――『METROCK 2016』では、間奏のときにドラムの桐谷さんがステージの前にぐいぐい出てきて、叩いていないのにドラム音は鳴っているというコント風の演出が、会場でものすごくウケていました。ロックフェスで、あのパフォーマンスは勇気があるな、と。
桐谷健太 予想以上にウケましたね(笑)。僕は後ろなんで、事前に「前に出ていいですよね?」って確認をしたら、宮藤(官九郎)監督も「いいよ」と言ってくださって(笑)。エアードラムの出来上がりですね。やっぱり、音を楽しむと書いて“音楽”だから、俺は常に全力で楽しんでやってます!