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再始動の宇多田ヒカルは再び社会現象を起こせるのか?

 近年、音楽界に“スター”が不在とも言われている中、宇多田ヒカルが、4月スタートのNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK総合)主題歌、さらに4月からの『NEWS ZERO』(日本テレビ系)新エンディングテーマとして新曲を提供し、いよいよ再始動する。2010年12月10日の横浜アリーナ公演を最後にアーティスト活動を休止してから5年4ヶ月、日本中のファンが待ち望んでいた復活と言っても過言ではないが、音楽関係者にとっても低迷する市場における、“起爆剤”として、大きな期待を寄せられている。果たして彼女は再び社会現象を巻き起こす存在となれるのだろうか?

10代半ばにして歴代1位の売上 あまりにも“早熟”すぎた天才

 1998年12月にシングル「Automatic/time will tell」でデビューした宇多田。当時、まだわずか15歳の少女が作り上げたとは思えないほど完成された楽曲、他を魅了する圧倒的かつ唯一無二の歌声、それでいてあっけらかんとしたキャラクターは多くの人々の心を捉え、結果的にデビュー作は新人としては異例のミリオンセールスを記録する大ヒットなった(8cm・12cmシングルの売上を合わせるとダブルミリオン)。その後も立て続けにヒットを飛ばし、翌年発売された1stアルバム『First Love』は、累積765.0万枚という驚異的なセールスを記録。歴代のアルバム売上1位という金字塔を打ち立てた『First Love』の記録は、発売から17年経った今でも破られていない。その後もミリオンヒットを量産し、最も日本国内で成功した歌手として君臨している。

 宇多田の全盛期はCD市場がまだ辛うじて元気だったという時代背景はあるにせよ、CDパッケージが徐々にコアファン向けの商品となっていく中で、当時は普段音楽を聴かない人まで宇多田のアルバムを購入していた記憶がある。“1家に1枚”どころか、“1人1枚”だったかもしれない。それくらい、幅広い世代の人たちが宇多田の音楽を夢中になって聴いていたのだ。しかし、あまりにも“早熟”な天才だったせいか、私生活に変化があった20代に入った頃から、音楽的にも変化がみられるようになった。いや、音楽性の変化というよりは、“宇多田ヒカル”という存在との向き合い方を模索し始めたのかもしれない。そして2010年、アーティスト活動をやめて“人間活動”に専念することを宣言。表舞台から姿を消したまま、5年以上の月日が経過することになるのだ。

待望の再始動 シーンの再興を“担わなくてはいけない”重圧

 そして2016年、待望の再始動。CD市場が低迷している今、音楽業界全体が否が応でもかつてのような社会現象とも呼べる復活劇を期待していることだろう。それぐらい期待されるべき女性シンガー・ソングライターの最高峰であるし、事実、誰か今の日本の音楽シーンに一石を投じるとしたらこの人しかいないと思わせるほどのカリスマ性を持っているアーティストだ。

 日本の音楽を“担わなくてはいけない”重要なポジションにあることは間違いなく、過度なプレッシャーがかけられるだろう。それは今後二度と破られることのない、文字通りの“金字塔”を成し遂げた彼女にとって、あまりにも酷な要求であることと知りつつもだ。

ファンは“今”の宇多田に何を望むのか?

 アーティスト活動休止直前の楽曲を振り返ってみると、本人がブログで「アーティスト活動中心の生き方をし始めた15才から、成長の止まっている部分が私の中にあります。それは、人として、とても大事な部分」と語る迷いのようなものもあってか、彼女なりに確立していたR&Bや洋楽のテイストを取り入れた独自のポップスから大衆ポップスへと変化しており、CD不況と相まってセールスも全盛期ほどの売り上げを残すには至らなかった。
 宇多田はアーティスト活動休止前、休止期間を「むしろ熱心に、そして謙虚に、新しいことを勉強したり、この広い世界の知らないものごとを見て知って感じて、一個人としての本当の自分と向き合う期間」とし、「人として少しは成長できたかな、と思った時、自然とまた、音楽をみんなに聴かせたい!と思った時がきたら、そうする時」と、ゆくゆくはまた復活することを示唆するコメントを残していた。今回、再始動と銘打たれた動きは、その時がきた、ということなのだろう。

 5年間の“人間活動”を経た今、宇多田は音楽で何を語るのか。そして、彼女の復活を待ち望んでいたファンは、“今”の宇多田ヒカルに果たして何を望むのか? 『First Love』を彷彿とさせる爆発力か、それとも5年の間に紡いできた新たな側面なのか。ファンの間でも非常に意見が分かれるだろう。

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