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ラブソングの聴き方に変化? 今どきの若者の恋愛事情

 今も昔もラブソングが若者の心をつかむのは、時代は変わっても「恋のときめき」や「片思いの切なさ」、「失恋の痛み」といった人間の感情に変わりはないから……それが音楽業界の定説だった。しかし、昨今は「若者の恋愛離れ」が叫ばれて久しい。NHKが今年の新成人に調査したところ、47.8%が「交際したことがない」と答えたほどだ。それでは現代の若者はラブソングを聞かなくなったのかというと、ヒットチャートを見る限りではそうとも言い切れない。むしろ「ラブソングの聞き方」や「共感する歌詞」に、現代の様相が現れているのではないだろうか?

恋愛離れの影響? 「恋愛への憧れ」が強い10代

 そんな仮説のもと、ORICON STYLEでは10〜20代の女性を対象にラブソングにまつわる意識調査を実施。若者たちに支持されている楽曲から、現代の恋愛事情を探る試みを行ってみた。まず、「恋愛にまつわるどんなシチュエーションで音楽を聞きますか?」という問いでは【片思いのとき】が77.2%と最も多く、次いで【失恋したとき】が51.6%、【恋愛がスタートしたとき】が41.7%となったが、「恋愛したことがないので……」(宮城県/10代)という回答もチラホラ。やはり恋愛離れは深刻!? と思いきや、「恋愛してる気分を味わいたいとき」(東京都/10代)、「恋愛小説やマンガを読んだとき」(静岡県/10代)といった回答もあり、特に10代に関しては「恋愛への憧れ」が強く感じられた。

 さらに20代になると、「彼とドライブしているとき」(大分県・20代・女性)とシチュエーションにも具体性が増す。思春期から大人へと移り変わる10代から20代にかけては、感情の揺らぎも最も大きな世代。恋へのほのかな憧れから、リアルな恋愛体験へと進展しても、その繊細な心情のそばには常にラブソングが寄り添っていることが浮き彫りとなった。ではさらに調査を進めて、シチュエーション別に重視するラブソングの要素や具体的な作品についてみていこう。

 まずは「恋愛がスタートしたとき」。重視する要素として最も多かったのが、【メロディー】で、61.9%を占めている。具体的に支持が高かった曲は、「うきうきしちゃうような曲調が好き」(埼玉県/20代)という西野カナ「Darling」や、「明るくて可愛いメロディーに、キュンキュンする」(兵庫県/10代)というYUI「CHE.R.RY」など。恋の始まりは楽しい反面で、「この幸せがいつまでも続いてほしい」「こんなことしたら嫌われるのでは?」といった不安も付き物。そんなときに明るい未来を喚起させるようなポップソングに、背中を押してもらいたいという思いが回答からも滲み出ているようだった。

具体的なシチュエーションまで共感できる【歌詞】がポイント

  • 「高嶺の花子さん」が収録されているback numberの『ラブストーリー』

    「高嶺の花子さん」が収録されているback numberの『ラブストーリー』

  • シクラメンの「100年初恋」ジャケット写真

    シクラメンの「100年初恋」ジャケット写真

 一方で「片思いしているとき」「失恋したとき」に重視するのは【歌詞】がそれぞれ81.6%、76.0%と圧倒的に高くなった。昨今、幅広い世代が共感できる言葉よりも特定の年齢層に刺さる“日記風”“ブログ風”とも言える歌詞の曲が人気だが、作品ではmiwa「片想い」や、西野カナ「会いたくて 会いたくて」など、具体的なシチュエーションが描かれたものに多くの支持が集まった。調査対象が10〜20代だったにも関わらず、聴きたい曲として、aiko「花火」(1999年発売)やプリンセス・プリンセス「M」(1989年発売)、竹内まりや「元気を出して」(1984年発売)といった往年の名曲も多くあがったのも特徴的だった。片想いソングや失恋ソングはスタンダードになりやすいのだろうか。

 最新曲では、「片想いのときに聴くのにピッタリな歌詞だった」(東京都/20代)、「歌詞も雰囲気も良い。共感した」(高知県/10代)というコメントのあったシクラメン「100年初恋」や、「可愛らしい歌詞が印象的で、共感できるから」(京都府/20代)など女性でも共感できるというコメントが多かったback number「高嶺の花子さん」、「歌詞がどんぴしゃで共感できるから」(東京都/10代)など20代から支持が高かったchayの「あなたに恋をしてみました」などが多くの支持を集めたが、これらの楽曲も時を超えて愛されるスタンダード・ナンバーになっていくことが期待できそうだ。

 さて、今回の調査でラブソングに思いを重ねる若者たちの姿からも見えてきたように、「人を好きになる」という感情は今も昔も変わりがない。しかし「若者の恋愛離れ」の原因として、よく「SNSの普及を背景とした人間関係の複雑化」が槍玉にあがるように、かつてに比べて若者の心はより傷つきやすいものになっていると考えられる。「恋愛の始まり」に元気が出るようなポップソングが、そして「片思い・失恋」の際にはただしんみりするのではなく、落ち込んでいる自分を肯定してくれる楽曲が支持されていることからも、デリケートな若者たちの姿が浮かび上がる。時代によって支持されるラブソングは変われど、J−POPはいつだってリスナーの恋を応援している。若者たちよ、恐れずに恋に突き進もう!

(文/児玉澄子)

【調査概要】
調査対象:全国10〜20代未婚女性
サンプル数:580名
調査期間:2015年5月22日(金)〜5月28日(木)
調査手法:インターネット調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ

最新曲で人気だったシクラメンの「100年初恋」

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