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デビュー30周年 斉藤由貴インタビュー『自身が語る、様々な“愛のカタチ”』
アイドル時代から応援してくださる方もすっかり父となり母となり(笑)
斉藤由貴実は……発端は大したことではなくて(笑)。25周年の時に久しぶりに本格的なライブを行ったんですけど、その際、いわゆるアイドル時代から応援してくださる方々の前に立ちまして。皆さんすっかり父となり母となり(笑)。
――ファンの方も“大人”になられていたワケですね。
斉藤そうなんです。きっと、大学生くらいの子どもがいるんだろうなぁとか考えたり(笑)。その25周年のときに、私自身も月日の流れというか、人生を俯瞰で見られるようになってきたなって感じたんです。じゃあ、30周年で何かをするにあたって、また「人生とは?」みたいなテーマにすると、ちょっとウルサイかなって(笑)。
――30周年はもっとライトに行こうと(笑)
斉藤私の特徴として、この30年間、所属事務所を一度も変わることなく歩んできたということは凄く大きいと思うんです。ずっと一緒にいるスタッフが凄く多くて、当然、私のことをよく理解してくれている。そんな彼らが「こんな感じのコンセプトはどうか?」と言って持ってきたのが、今回のジャズスタンダードナンバーのカバーだったんです。
――ご自身で30周年のコンセプトを決めたワケではなかったんですね。
斉藤私からは一切言ってないんです。「せっかくだからやらない?」って言ってくれたので、「あ、そう? じゃあ……はい」って(笑)。
――そんな申し訳なさそうにお引き受けしなくても(笑)。で、そこからラブソングというコンセプトに至ったのは?
斉藤キラ星のごとくジャズの名曲ってあるじゃないですか? そこからどの曲を選んでいくか考えたときに、何かひとつジャンルを縛らないとって。じゃあ、失恋とか悲しい別れじゃなく、本当に幸せな、夢のようなひと時にフォーカスした曲を集めようって。これは私が決めました(笑)。
私自身の恋愛体験を表現するような曲も入っています
斉藤まぁ、私以上に私を知っている人ばかりですから。デビュー当時から私に付いてくれて、それこそ『スケバン刑事』のお仕事を持ってきた方々ですからね(笑)。
――でも、選曲ももちろんですけど、レコーディングも相当苦労されただろうなぁって思うんです。やっぱり、誰もが知っているナンバーだけに、どういう形で独自性を出すのかって凄しいですよね。
斉藤そうですね。正直、難しい曲もありましたね(しみじみ)。例えば、1曲目「トップ・オブ・ザ・ワールド」(カーペンターズ)は歌詞分量がビッシリなんですね。私自身、テンポがゆったりな人間なので、口が追いついていかない(笑)。ですから、レコーディング前に結構練習しましたね。
――ビートルズの「アクロス・ザ・ユニバース」も収録されてますけど、“恋愛”というフィルターを通すと、“聴こえ方”も違ってきますね。
斉藤「アクロス・ザ・ユニバース」だけは今回のアルバムの中で唯一“恋愛”という要素が入っていない曲なんです。実はこの曲を25周年ライブのオープニングで歌わせて頂いて。せっかくカバーアルバムを出すのだから、ちょっと入れようかって(笑)。ですから、私の中では今回のアルバムの中では“おまけ”的要素が強いですね。
――でも、全然違和感がなかったですよ。逆に必然性すら感じる位に。
斉藤嬉しい(笑)。実はこの曲の「Nothing’s gonna change my world」というワードも、もうひとつのテーマとして考えていたので、25周年のときに「何もかも変わるとしても」というキーワードがあって、変化とか月日の流れがあったんです。でも、そこから「何もかも変わるとしても…変わらないものがある」という繋がりがあって。
――続きが明確にあったワケですね。月日の流れに対する“答え”というか。
斉藤ただ、25周年の時に歌ったから、「入れちゃえ!」っていう勢いの方が強いかな(笑)。
30年経っても、やっぱり私、歌下手じゃんって(笑)
斉藤そうですね。私自身の恋愛体験を表現するような思い入れのある曲も入っています。ただ、それ以外にもディレクターさんが、「この曲、由貴ちゃんに歌って欲しいなぁ」とか、元マネージャーさんが「僕、この曲、凄く好きなんだ〜」っていう曲もありますけど(笑)。
――アハハハハ! 皆さん、「もし斉藤由貴がこの曲を歌ったら?」という思い入れは強そうですね(笑)。
斉藤ディレクターさんも、デビュー曲の「卒業」から一緒ですから、ある意味で私よりも私を知っている部分はあるのかなって思うんです。そういう方が望むならきっと上手くいくだろうなって。
――やっぱり信頼関係があればこそですね。
斉藤30年って結構長いと思うんです。それだけの歳月を共有してきた人間が“思い入れてくれる”というだけでも、とっても嬉しいことですよね。それに私自身も年を取りましたから(笑)。年を取った分歌える歌もあるんじゃないかなって。
――今の斉藤さんだからこそ歌いこなせる曲ということですね。
斉藤ある程度の年齢と経験を重ねたことで、歌っても無理のない曲というのがあると思うんです。今回収録された曲は、曲自体のパワーや後世への影響力が高い曲ばかりなので、私なりに薄っぺらな感じにはしたくなかったんです。そういう意味で言えば、やっと今になって歌えたのかなって。
――まさに30周年に相応しい曲。
斉藤ただ、レコーディングを終えて、アルバムを通して聴いた印象としては、「30年経っても、下手な人は下手なんだなぁ〜」って(笑)。
――いやいや! そんなことないですよ。
斉藤やっぱり、私、歌下手じゃんって(笑)。ただ、私をアイドル時代から応援してくれた方が、父となり、母となり、頑張って家のローンを返済してたり頑張っているんですね。それこそ恋愛どころじゃないって方が多いと思う。でも、昔は文字通り胸が締め付けられるような恋愛を経験して、月に吠えたり海に吠えたりしていたんですよ(笑)。
一同爆笑
斉藤そういう瞬間ってごく限られるじゃないですか? その切ない瞬間というもの、私のボーカルを通して思い出して、胸がキュンってなってくれたら嬉しいなって。
――以前、何かインタビューで、斉藤さんが「恋愛って、客観的に自分自身を見つめることとか、社会的地位を“踏み外す”行為」だということをおっしゃっていて、凄く実直なコメントだなぁって印象的だったんです。
斉藤私、そんなこと言ってましたっけ(笑)。まぁ、理性を超えた情動というのはありますよね。
――恋愛中の“溺れている感覚”がこのアルバムから凄く感じることが出来ました。
斉藤実はそれが狙いなんです(笑)。