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ORICON NEWS
仮面女子の躍進でさらに活性化 “地下アイドル”シーンの成り立ちと現状
「アイドル冬の時代」と言われていた90年代にひっそりと誕生
水野あおい、森下純菜、制服向上委員会が当時の代表格。世間には知られていないが、ファンにすればメジャーアイドルにない親近感、成長を見守り応援できる旨みがあった。つまり現在のAKB48らの「会いに行ける」路線を、小規模ながら昔から実践していたのが地下アイドルだった。アイドル界が再び盛況となった現在では、地下アイドルの形態は多様化し、「地下1階から5階まである」とも言われる。定義としては「メジャーデビューしてないインディーズ系アイドル」でほぼ変わらないが、「地下」という“日陰者”的なニュアンスを避けて、「ライブアイドル」という呼び方のほうが増えてきた。主流は「メジャーを目指す過程」とのスタンス。ももいろクローバーZやでんぱ組.incも通ってきた道で、この2年でメジャーデビューした小桃音まいや愛乙女★DOLLもCD売り上げやライブ動員がインディーズでトップになり、晴れて次のステップへ進む形だった。
ファンには「自分たちが支えて大きくなった」という感覚がリアルに味わえるのが嬉しい。多くのアイドルがメジャーシーンにいるなかでも、より近い距離感を求めてライブアイドルに流れるコアなファンも少なくない仮面女子は、そうしたコアファンのニーズに加え、「地下アイドル」としてのマイナスイメージも込みで引き受けることで、独占的な支持を広げてきた。そもそも仮面をかぶったアイドルとは怪しげだが、「地下」には似つかわしい。スチームガールズのガス噴射器といった小道具も、アイドルのライブではタブーとされるダイブも行う。
メジャーシーンをあえて目指さない地下アイドルたち
また、仮面女子は、秋葉原に常設劇場「P.A.R.M.S」を持ち、毎日公演を行っている。1年365日、休日も平日も。しかも、平日は夕方と夜の2公演、土日・祝日は3公演(うち1公演は無料)あり、急に時間ができた場合などでもチケットが取りやすく、新規ファンが入りやすい。
さらに、仮面女子は他の多くのライブアイドルと違い、メジャーデビューを目標にしていない。これまでもメジャーからの誘いはすべて断ってきたといい、「最強の地下アイドル」のキャッチフレーズ通り、売れても地下で活動を続けると宣言している。コアな地下アイドルファンは、メジャーデビューして“自分たちのもの”でなくなると興味を失いがち。売れるために応援することとの自己矛盾に悩んだりもするが、地下アイドルでいつづける仮面女子には心置きなくハマれる。
それでいて、今回のシングルでは1位獲得と20万枚突破、今年11月23日にはさいたまスーパーアリーナでの単独ライブ開催など無謀な目標をぶち上げるため、ファンがメンバーと一体になって燃えて、ある種のお祭り騒ぎを楽しめる。そうした構図が、仮面女子を地下から盛り上げての1位達成だった。
地下シーンはアイドルの実験の場
また、でんぱ組.incを生んだライブ&バー「ディアステージ」が拠点の妄想キャリブレーション、愛乙女★DOLL、Doll☆Elementsに続く「第3のDOLLオーディション」から結成されたAnge☆Reveらも、先輩に続く勢いを発揮中。妄キャリはオタク女子揃いなのはでんぱ組と同じだが、こじらせ感がなく、あっけらかんとしたオタぶりが楽曲に反映されている。Ange☆Reveは先輩2組を上回るヴィジュアルで、ハーフ、ミニマムなどメンバーが個性派ぞろい。
そうしたなかで今、最も注目されているのが、日本ツインテール協会から生まれた4人組のdrop。とにかく4人全員ヴィジュアル力が高い。結成から半年でパフォーマンスは“ヘタ可愛い”が売りだが、汗をかきながら(メンバー曰く)「幼稚園児のように」全力で踊る姿も魅力。そして、水樹奈々などのアニソンで知られるElements Gardenの上松範康が手掛ける楽曲は、メンバーの幼いイメージの歌声と相まって「脳を焼く」と言われ、中毒性が強い。
他にも挙げていけばキリがないほど、多種多彩なアイドルが活動している今の地下シーンは、見ていて面白い。アイドル界のすそ野の広がりも感じる。実験の場として機能していけば、仮面女子のように突き抜けた存在が今後も現れる可能性は十分にある。
(文/斉藤貴志)