(更新:)
ORICON NEWS
livetune『ボカロ第一世代だからこそ伝えたい生の声の魅力』
もっと生の声の力強さを再認識してもらいたい
「やっぱりボーカルのレコーディングは楽しい!」とアルバム制作を振り返るkz氏。そもそもaddingシリーズのスタートには、「生の声の力強さを再認識してもらいたかった」という、いわゆる“ボカロ第一世代”という出自からは意外すぎる思いがあった。
「ボカロにはボカロならではの魅力がある。だから僕も音楽ツールのひとつとして活用してきました。だけど最近、ボカロ楽曲しか聴かない小中高生が増えてるという話を聞いて、もったいないなと思ったんですよ。世の中には、こんなにいろんな声質や表現力を持ったボーカリストがいるのになって」
起用ボーカルの人選は、もともとつながりがあったアーティストが多いそうだが、「大前提として、僕自身がその人の音楽性や表現スタイルのファンであること」だという。そんなリスペクトが根底にあっただけに、楽曲はボーカリストが決まってから個々のカラーを引き出すことを意識して制作。ボーカリストたちもまた、それぞれの持ち味を存分に発揮しており、実に多彩かつ豪華なアルバムとなっている。
「生ボーカルのレコーディングって、予想外のマジックが起きるんですよ。鬼龍院くんとのレコーディングもまさにそう。もともと友人ということもあって、すごく楽しく作業してたんですけど、鬼龍院くんが突然『こういうときって、曲をイジりたくなるんだよね』って言い出して、『じゃあ、好きにやってみてよ』と僕が言ったら、GLAYのTERUさんのように歌声を高く持ち上げて響かせる歌唱をしたんです。僕には絶対に思い付かないメロディだったので、即採用って決めましたね」
音楽にまじめに取り組みすぎていた
「最近は、ボカロ楽曲=四つ打ちの早いロックというイメージがあって、それがひとつの「ジャンル」として括られてしまっているような気がします。だけどボーカロイドというのはあくまでシンセの一種であって、楽曲を構成する楽器のひとつ。もっと自由に音楽を表現できるツールだったと思うんです。シーンとして人気が出てきたことで、逆に狭いところに閉じこもってしまった印象もあります」
そしてkz氏自身、「ボカロで作品を作ってた時期は、音楽にまじめすぎた気がします」と振り返る。「もうちょっと肩の力を抜いてやってもいいのかなって。僕、ドン・キホーテにCDが置かれるようになりたいんですよ。CDショップは音楽が好きじゃないとなかなか行かないけど、ドン・キホーテは音楽に興味ない人も来るから、置いてあるCDは誰もが知っているようなヒット曲が多い。だからドン・キホーテに置かれるようになれば、お茶の間にも届いてるということなのかなと思うんです」。
そのため、これまでダンスミュージックを取り入れた楽曲が多い印象があるが、『と』に関してはメロディーやサウンド等、随所にJ-POPへのリスペクトが感じられる作品となっている。「僕は洋楽が好きですけど、今回は日本向けの新作なので、やっぱり日本人に耳馴染みのある音がいいのかなと。ただ、ダンスミュージックの中でも「EDM」は日本人の好みに近いと思うので、そのマインドは反映されています。フェスに出演したときに思ったんですけど、日本人ってライブではみんなで一緒に歌ったり、同じ振りを踊ったりする“トゥギャザー感”に喜びを感じる文化があると思うんですよ。同じく、「EDM」もフェスで大合唱したりしますよね」
『と』で意識した音楽の“ローカライズ”
「前にFukaseくんと、インドカレーをそのまま日本に持ってきても、国民食にはならなかったかもしれない。日本人が好きな味付けにアレンジしたから、カレーライスが生まれたんだよねという話をしたんです。音楽も同じで、自分のカラーを入れ込みながらも、その国の人が楽しめるサウンドを意識することが重要だなと、今回の『と』を作っている間もすごく考えたんですよね」
それはGoogle ChromeのCMソングに起用された「Tell Your World」以降、アジアやヨーロッパなど海外のイベントでのDJ出演が増え、日本の食や漫画とコンテンツの現地での受け入れられ方から考えるようになったという。最後に、livetuneの立ち位置はクリエイターか?プロデューサーか?と問うと、「プロデューサーであり、アーティスト」という答えが返ってきた。
「たぶんプロデューサーだけだと、届く世界は狭いと思うんです。小室哲哉さんですとか、中田ヤスタカさんのように、自分も表に出て、何かを発信していきたいですね。もっとリアルボーカルプロジェクトもやりたいですし、参加してくれたアーティストを集めてフェスもやりたいですけど、今後は1人か2人くらいのボーカリストを固定して、フットワーク軽く活動していきたいと考えています」
(文/児玉澄子)
livetune adding 鬼龍院 翔 (from ゴールデンボンバー)「大好きなヒトだカラ」MV
関連リンク
・公式サイト