hideさんが発案したサーキットイベント『MIX LEMONeD JELLY』が、9年ぶりにロックバンド・defspiralのRYO(Ba)プロデュースにより復活。6日に神奈川・CLUB CITTA’で開催された同イベントのオフィシャルライブレポートが届いた。
■オフィシャルライブレポート
日本におけるロックフェスの先駆けと言われている、hideが発案して始めたサーキットイベント「MIX LEMONeD JELLY」(以下MLJ)。同イベントは、その後も形を変えながら、hideの意志を繋ぎ続けられてきた。 2026年9月6日、そのMLJが9年ぶりにdefspiral RYO(Ba)のプロデュースで再起動を果たした。川崎CLUB CITTA'を会場に、メイン、サブ、A'TTICと3ステージを用意。hide、machine、Cuon(クオン)、DJピエール中野、Girls be bad、メリー、XANVALA、チャンス大城、西崎ゴウシ、YA/NA、Little Lilith、Mr.秋葉原ササキチ、defspiral、DJ-INA、木村世治、CUTT、桂りょうば、桃知みなみが出演し、あらゆる境界を越えて観客と共に自由に楽しむ、全7時間に及ぶイベントを繰り広げた。
開幕は13時、2Fバーエリアに設けられたA'TTIC StageではDJ-INAプロデュースによるイベントが先陣を切ってスタートした。プログラムは、DJ PLAY、アコースティックライブ、トークイベント、ラジオ公開収録、チャリティーオークションなど多岐にわたり、トップバッターとして登場したのがDJ-YA/NA。hideが見出したロックバンドZEPPET STOREの元ドラマーであり、「ピンク スパイダー」や「FLAME」など、hideの楽曲でもドラムを叩いてきた彼が、 重厚でオルタナティブな音楽性が魅力の12ラウンズの「Me Again」からPLAYをスタート。スニーカー・ピンプスの「Underground」やスノー・アレグラの「Paradise」など、壮麗な空間を作り出す女性ボーカルナンバーなどへと繋ぎ、少しずつ楽曲の熱も上げながら、この空間を幻想的な世界に彩っていった。
ステージ背景のモニターにはイベント中継続的に、hideがプロデュースしたMLJのライブ映像が流れていた。果汁を使用したタトゥーアート「ジャグアタトゥーブース」も、人の列が途切れないほどの盛況ぶりだった。
A'TTIC Stageでは続いてCUTTのアコースティックミニライブがスタート。後にサブステージでの出番も控えているが、同一人物が異なるセットを披露するのもこのイベントの見どころである。アコースティックギターを掻き鳴らし、空の彼方で見守っているhideに思いと声を届けるように「ROCKET DIVE (acoustic ver.)」を歌唱。同期も用いながら「TELL ME (zilch-like ver.)」を披露すると、観客たちも心地よく身体を揺らし、ときに拳を振り上げて、彼と一緒にこの場に愛に満ちた空間を作り上げていった。リスペクトを込めてhideの楽曲を次々と届けていき、ひときわノリの良い演奏を作り出したX(現X JAPAN)の「Joker (SPEED OF LIGHTS ver.)」では、歌声と演奏が跳ねるたび、フロアからも声と拳が突き上がる。最後にCUTTは、hideが発掘したバンドであり、自身が在籍していたshameのデビュー曲「GOOD-BYE(shame debut single happy ver.)」を通して、この場をハッピーなパーティー空間に染め上げた。彼が歌い奏でるたびに、この場にカラッと晴れ渡る青空のような世界が広がる。外は生憎の雨模様だが、この会場にはずっと、眩しい音の陽射しの降り注ぐ開放的な空間が広がっていた。
1Fホールでは13時35分にMAIN STAGEがいよいよ幕開け。フロア左右のスクリーンには本イベントが始動した1996年を起点とするhideのドキュメント映像が映し出され、”今ここ”を示す「MIX LEMONeD JELLY 2026」のタイトルに辿り着くと、MCのチャンス大城がギターを構えて登場。出演者名をコールしていくと共に、自身が中学1年生の時にX(現 X JAPAN)に出会ったこと、hideの大ファンであることを熱く語ったあと、持ちネタを次々と繰り出して笑わせ、場を温めていった。
13時45分、アタック映像のあとに幕が上がり場内の空気は一変。赤い光に包まれたステージに登場したのは、HAKUEI(PENICILLIN/The Brow Beat)とKiyoshi(hide with Spread Beaver/MADBEAVERS/Lucy/freeman)によるユニット、machineだ。1999年に結成、2025年に約10年ぶりに再始動を果たし活動を活性化させており、この日はDEN(Ba)、CHARGEEEEEE…(Dr)、COLA(Manipulator)という濃密な顔ぶれが勢揃い。「機械児」に始まり、凶暴なデジタルビートと暗黒美が絡み合うサウンドを、容赦なくフロアに浴びせ掛けていく。MCでは「13時45分ということで……人生で一番早い時間のライブかもしれません(笑)」とHAKUEI。酒を飲んでいると明かし、「肝臓に自信がある方は」と断りを入れたうえで観客にも飲酒のススメ。「reset human」ではお馴染みのゲップ芸も飛び出して、Kiyoshiが「ゲップ失礼しました」とお詫びを代弁する場面も。圧倒的なテクニックとカリスマ性に裏打ちされた中毒性の高い世界観を鮮烈に提示して、ゴージャスなトップバッターは風のように去っていった。
machineのライブと時を同じくしてA'TTIC Stageでは、西崎ゴウシの司会のもと、hideの実弟で、hideのオフィシャルマネジメント事務所「HEADWAX ORGANIZATION」の代表取締役を務める松本裕士氏がトークイベントに登壇した。9年ぶりのMLJ開催理由について、「お客さんに楽しんでもらう場をもう一度作りたいことと、今後も若手を中心に、このイベントを継続していくため」と語り、そのうえで、hideが1997年に立ち上げた当時を懐かしむようにこう語り出した。MLJは、hideが「いろんなアトラクションが並ぶ会場を、お客さんに自由に歩き回り、自分なりにイベントを楽しんでほしい」という思いから始まったこと。開催に向けて「これこれ!これをやりたいので、あとはよろしく」と無茶ぶりをしていたこと。それを受けてhideの求める遊び場を構築していったこと。先鋭的なイベントだったこともあって、観客たちが戸惑いつつも楽しんでいた姿を懐かしむように話していたのも印象深かった。
オールナイトイベントの前日にhideが帰国し、そのままリハーサルに入り本番を迎えるなど、若さゆえに突っ走れたイベントでもあったようだ。当時はまだネット(ISDN)回線も弱い中、様々なトラブルがありながらも果敢に新しいことに挑戦していったことが、2人のやりとりから見えてくる。hide自身はイベントの規模を拡大したいと考え、よみうりランドを舞台にMLJを行おうと企画していた裏話も。hideは、日本における野外フェスやサーキットイベントの先陣を切って切り拓いてきた。ここでは、改めてhideの奇想天外な発想が、今に繋がる音楽文化を作ってきたことについても検証していた。
最後に、「10月から始まるZepp Tourがhide with Spread Beaverの活動としては最後になるかもしれない」という話も飛び出したが、「でも、hideを中心に据えた企画案はまだまだあるので、楽しいことを続けていくから、これからも楽しみにしていてほしい」とも述べてイベントを締めくくった。
ライブバーA'TTIC Stageだからこそ、と言えようか。defspiralのTAKAとメリーのガラ、2人のボーカリストがアコースティックなスタイルで共演した。先に登場したTAKAが、アコースティックギターを手にhideの「FLAME」を艶めいた、でも芯の太い声を響かせて朗々と歌い出し、観客たちのハートを強く抱きしめる。ここでTAKAが、ライブを観ていたdefspiralのRYOを呼び入れ、2人が届けたのが「DICE」。時にRYOへマイクのバトンを渡すなど、息の合った関係だからこそ、その場のアドリブから生まれる空気を一緒に作り上げていく。さらにその場にTAKAがガラを呼び込み、新鮮な組み合わせの2人で歌ったのが「HURRY GO ROUND」。ここではガラを中心に、TAKAがコーラスで寄り添う形で進められた。癖が強く個性的なガラの歌声に、TAKAの芯の太いコーラスが重なり合うことで、存在感の強い歌声の重奏がこの場を包み込んでいく。気持ちの揺れ動くまま、その思いに導かれるように歌い上げるガラ。そこへTAKAが寄り添うように歌声を重ね、息の合った絶妙なコンビネーションを聴かせた。
14時15分、SUB STAGEが明るく照らされると、「今日は行ったり来たり忙しいと思いますが、楽しんでください!」と観客に呼び掛けたトップバッターの木村世治。hideに見出されLEMONeDレーベル発足のきっかけとなったロックバンドZEPPET STOREのフロントマンである。呼び掛けずともクラップが自然発生する中、アコースティックギター弾き語りで届けられるシンプルな歌声は、驚異的な吸引力がある。「9年ぶりのMLJということで、随分昔な気がしますが、楽しんでいきたい」と語ると、この後DJやチャリティーオークションにも参加すると予告。「もうね、これを歌わないとね」との言葉からスタートしたのは「FLAME」。hideがZEPPET STOREのこの曲を再構築して「MISERY」が生まれたという逸話を持つ名曲である。「降り注ぐ悲しみすら抱き寄せ」「Life is going on 枯れるまで」という歌詞は色褪せるどころか、2026年の今だからこそ一層リアリティを帯びて心に響いた。「サンキュー、2Fで会いましょう!」と、A'TTIC Stageでの再会を呼び掛けて手を振り、温かな拍手の中でステージをあとにした。
その頃A'TTIC Stageでは、DJ-INA presents 「令和8年熊本地震災害義援金」チャリティーオークションが行われていた。出演者や関係者の方々から様々な商品を提供していただき、訪れた人たちにオークション形式で販売。ほんの一部をご紹介すると、NEW ERAとのコラボレーションで作られたhideキャップの試作品(未使用非売品)や、defspiralのRYOが提供した「いにしえのhideグッズ」、DJ-INAが出品した2008年の再結成ライブからずっと一緒に世界中を旅してきた、赤髪のhide人形など、貴重なアイテムの数々がラインナップ。 具体的な金額の明記は控えるが、集まった売上金はすべて「令和8年熊本地震災害義援金」として寄付される。このチャリティー精神も、hideから受け継いだスピリットだ。会場には募金箱も用意され、オークションに参加せずとも、購入したドリンクのお釣りを寄付するなど、それぞれが募金箱に寄付をしていたことも伝えておきたい。
14時40分、MAIN STAGEの幕が上がると、ひんやりとした青いライティングの下、ドラマーがスタンバイする深い海の底のような空間に、青い髪が際立つCuonが登場した。雨音のSEと共に始まった「Ghost Dance」を激しくギターを掻き鳴らしながら歌い、観客はじっと立ち尽くして見入っていた。クラップを自ら先導して盛り上げ、一人ひとりに語り掛けるようなコミュニケーションから真摯な人柄が伝わってくる。情感豊かな歌唱から激しいシャウト、語りパートも含む幅広い表現を繰り出し、繊細な心の内を届けていく。「テレビの向こうの憧れの方が始めたイベントのステージに立つことができて、本当にうれしいです」と感無量な様子で語り、hideと同じく神奈川出身だと語り、「うれしくて両親を呼んじゃいました」と明かす初々しい一面も。凄まじい声量で圧倒したラストの「Echo」まで、全7曲をひたすら真っ直ぐに届けた。
A'TTIC Stageでは、 西崎ゴウシの司会進行のもと、トークイベントにmachineのHAKUEIとhide with Spread BeaverのKiyoshiが登壇した。終えたばかりのライブの感想を2人は語り出し、HAKUEIが「人生で一番最高のステージでした」と述べていたのが印象的。KiyoshiはMLJを初めて開催した当時のエピソードも語ってくれた。西崎が「hideさんはどんな人?」と質問すると、HAKUEIが「ミュージシャンとして選ばれた人。でも、めちゃくちゃな人です」と語り出す。さらにHAKUEIが、恵比寿にあった屋台にKiyoshiとhideに朝8時頃に呼ばれて行ったとき、その場にいたBUCK-TICKの櫻井敦司と並べられ、hideに「はい、新旧ヴィジュアル系対決」と突っ込まれたことなどを2人は懐かしむように話していた。machineが「DOUBT」をカバーした際の話では、ジャジーにアレンジした背景を2人は語り、さらにはmachineの今後の展望についてもトーク。10月30日と31日に開催する「HALLOWEEN BUSTERS 2026」では、ポニョと未散(ゴスロリ)のコスプレをすることを、その微笑ましい理由も含めて語ってくれた。
Cuonのライブが終わった直後SUB STAGEでサウンドチェックを始めたCUTTは、「TELL ME」を弾き語りして場内を沸かせ、「曲に申し訳ないので、1コーラスだけやります」と切りの良いところまで披露。アタック映像を差し挟み、すぐさま本番がスタートした。「自由に楽しむ」というイベントのテーマに沿って自身もテーマを決めてきたと語り、「僕の歌いたい歌、90年代の世界を代表するロックを歌いたいと思います」と宣言。アコースティックギター弾き語りでマリリン・マンソンやNIRVANA、NINE INCH NAILSなどの楽曲をノンストップで歌い繋いでいく。hide の「LEMONed I Scream」ではフロアにシンガロングを求めて盛り上げ、「自分の曲も歌います」と最後に「Indiscribable」を披露。感謝してもしきれない想い、愛を描いたナンバーに乗せて、hideへの想いを高らかに歌っているように感じられた。
CUTTがステージをあとにすると松本裕士氏が二階席に現れ、フロア目掛けてタイムテーブルの紙束をバラ撒くと、見上げて手を伸ばす観客は誰もが楽しそうな笑顔。サウンドチェックの音が響き、ほどなくしてMAIN STAGEに登場したのはヴィジュアル系バンドXANVALA。観客はペンライトを灯し、白と赤を基調とした衣装に身を包んだ巽(Vo)、Yuhma(Gt)、宗馬(Gt)、70(Ba)、知哉(Dr)を出迎えた。疾走感あふれるダークロック「DICE」で幕開けると、「XANVALAです、よろしくどうぞ。始めようか! hideさんへのリスペクトと愛を込めて」(巽)と第一声。緻密に構築された世界観を打ち出しつつも、曲の間には幾度も「初めましてXANVALAです」「よろしくどうぞ」と律義にあいさつを繰り返し、一期一会を大切にする姿勢が感じられた。ラストの1曲を残したMCで、「hideさんのイベントに初めて参加させてもらって、あったかい人だったんだろうなって思いました」と語る巽に、メンバーたちは同意するように頷いた。「それを観て育った人を見て、俺たちは育ちました。次は俺たちが受け継ぐ番だなって」と、令和のヴィジュアル系バンドとしての使命感も滲ませる。そんなスピリットを体現するようなライブで存在感を示した。
A'TTIC Stageに今度はDJとして出演した木村世治。洋楽ディスコ曲を中心に選曲し、アースウィンド&ファイアーの「セプテンバー」からPLAYはスタートした。レニー・クラヴィッツの「自由への疾走」やジグソーの「スカイハイ」、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」などノリの良い名曲ばかり。大勢の人たちが両手を上げて飛び跳ね楽しくダンスに興じていた。そんな中へhide feat.東京スカパラダイスオーケストラの「Beauty&Stupid TOKYO SKA VERSION」を組み込んだセンスもさすが。DJ TIME中、何度もステージ前に出てきてはPLAY中のアーティストの仕草を真似るなど、木村自身が一番楽しんでいるように見えた。
木村世治からのバトンを受け取ったDJ-INAは、主に90年代のディスコ系J-POPナンバーを選曲。SMAPの「SHAKE」から始まったDJ PLAYでは、観客たちが曲に合わせて掛け合いを見せるなど、最初からノリノリの空間を作り出す。その後も、ブラックビスケッツの「Timing〜タイミング」やモーニング娘。の「LOVEマシーン」、TRFの「EZ DO DANCE」から、E-girlsの「おどるポンポコリン」までPLAY。ときにサイリウムを振りながら観客たちと声を掛け合うなど、ライブに負けない熱狂の景色を作り出していった。流行歌の数々に慣れ親しんだ世代が多かったのもあったのか、フロアは常に熱気に満ちており、まさか羽根扇子(ジュリ扇)が舞う景色まで生まれるとは。そんな予想外の展開も飛び出すほどの熱狂ぶりだった。
SUB STAGEでは、ブースに出展しているボランティア団体の方々が代わる代わる登壇しての告知タイム。チャンス大城と西崎ゴウシの進行のもと、詳しい活動内容やhideとの関係性などを観客に語り掛けていた。
続いてMAIN STAGEに登場したのは、松隈ケンタがプロデュースするガールズグループGirls be bad。サウンドチェックの時点で凄まじい声量とエネルギーの塊のようなものが幕の向こうから迫ってきて、慄くほどだった。このようなイベントに出演すること自体が初めてだとMCで口々に明かしたが、りんか(リーダー担当)、あやか(元気娘担当)、蝶(クール担当)は堂々と歌い踊り、度胸のあるパンキッシュなステージを展開。「DOUBT」のカバーを含む多種多様な全9曲を、自分たちでペイントしたというhideモデルのギターを代わる代わる手に取りながらパフォーマンスした。本イベントへの出演は目黒鹿鳴館でのライブで「X」の完コピをしたことがきっかけだと語った蝶は、「この日のためにhideさんカラーで髪を染めました」と赤髪の理由を明かし、hideへのリスペクトを示した。
A'TTIC Stageでは、ナビゲーターをdefspiralのRYOが担当しているコマラジの番組「Radio MIX LEMONeD JELLY」の公開収録が2本行われた。1本目には木村世治とCUTTが出演し、「今だから言えるhideさんのあんなこと、こんなこと」をテーマにトーク。10月から始まるhide with Spread BeaverのZepp Tourに木村が帯同することから、そのライブに向けての会話が繰り広げられた。木村から「defspiralは今、一番格好いいと本気で思っている」と熱い言葉が飛び出し、それを受けてのCUTTの発言からも、RYOの人柄が滲み出ていた。 この日絆を再確認したという3人は長い付き合いのLEMONeD FAMILY。今後企画しているhide関連のイベントでも一緒にやっていこうという前振りも兼ねていたのか?! そんな含みを持たせた会話も。hideのMLJに賭けたスピリッツもしっかりと受け継いでいく決意を示し、その新たな始まりがこの日になる、と確信させる3人のトークだった。
2本目の収録には、XANVALAから巽と宗馬が出演した。XANVALAが今回のイベントに出演したのは、RYOからの熱烈なオファーがあってのこと。互いの出会いは、謎のLINEからだという。宗馬は「hideさんの『DICE』が大好き」と熱く語り、「ピンク スパイダー」のギタープレイへのリスペクト発言からは、彼のhideへの愛が見えてきた。巽もhideへの愛を、低音域の利いた魅惑の声で語った。曲を例に挙げ、演奏や歌詞の魅力について語っていたXANVALAの2人。hideのスピリットを受け継いだ思いにも、番組を実際に聴いてぜひ触れてほしい。彼らも、この日からhide FAMILYの仲間入りだ。
3本目のトークイベントは、CUTTの司会のもと、hideの専属ヘアメイクとして活動、現在はヘアサロン「SQUASH代官山」代表の宮城浩さん、hideのスタイリストをしていた高橋恵美さん、そしてINAが登壇し、「ヴィジュアル」を題材にしたトークを繰り広げた。hideのソロデビューの発表を記念し、原宿・神宮前の交差点でMVを公開するイベントを開催したところ、3000人超が集結。hideはその場で1曲演奏する予定だったが、あまりにも人が多すぎて、MVは公開したが、ライブは中止に。その裏ではスタッフが警官に事情聴取を受けたことなど、当時の裏エピソードを高橋さんは語っていく。宮城さんは、hideが急に「ロングヘアーを切りたい」と楽屋で言い出したことで、腰まであったロングヘアーをばっさり切ったところ、「本当に切りやがった」と軽いジョークを口にしていたこと、その頃からヘアメイクを任せてもらえるくらい信頼を寄せ合う関係になったことなどを明かした。「MISERY」のMVではhideが「みんなで作る手作り感を大切にしていたこと」や、「アイデア次第で誰でもできることをhideが『MISERY』で証明してくれた」ことなどを3人が語っていた。他にも、浅草の花やしきで雑誌の撮影をしたときに、hideがそこにあったプリクラを撮影したエピソードなども語られていた。高橋さんは「ヴィジュアルの表現者としてのhideについて、今後もずーっと伝え続けたい」、宮城さんは「自分のヘアメイクの引き出しを開けてくれた人」と語り、コーナーを締め括った。
ここからラストまで、A'TTIC StageはDJ TIMEに。ふたたびDJ-YA/NAが登場し、ダウナーながらもモダンな、美しくも破壊的なセンスを持った女性ボーカル曲を中心にPLAY。続いては秋葉原界隈を活動の主戦場にしているMr.秋葉原ササキチ、hideイベントではお馴染みのDJ-桃知みなみ、パンザブロウへとバトンタッチ。このチームが最初に流したClariSの「コネクト」からもわかるように、3人はアニソンの数々を連発した。中川翔子の「空色デイズ」、シドの「嘘」、MAKE-UPの「ペガサス幻想-PEGASUS FANTASY-」、MAHO堂の「おジャ魔女カーニバル」、L'Arc〜en〜Cielの「READY STEADY GO」、DALIの「ムーンライト伝説」、ゴールデンボンバーの「女々しくて」などが次々と流れる中、DJ-桃知みなみとパンザブロウが、時にMIXを打つなど、パフォーマンスを通してフロアを煽れば、耳になじんだアニソンが多く流れることから、場内でも身体を揺らし、パレードのように続くヒット曲の数々を楽しんでいた。ハムちゃんずの「ハム太郎とっとこうた」が流れたときには、フロアに生まれたサークルへパンザブロウも参加して、一緒に歩き回っていた。最後に3人は、hideの「子 ギャル」を届け、トリを飾ったDJ-INAにバトンを繋いでいった。
1階ホールのMAIN STAGEで型破りなDJを繰り広げたのは、ピエール中野。幕が上がるとステージ中央のDJ卓に中野がスタンバイしており、「今日はCLUB CITTA’で爆音でXの曲を掛けます」と宣言したとおり、「WORLD ANTHEM」に始まりX楽曲を繰り出すDJ PLAYで、通好みの選曲を織り込みながら話芸との合わせ技でフロアを沸かせていく。時にはスティックを手にドラムセットがそこにあると幻視させるほど精緻なエアドラムを繰り出しながら、 YOSHIKIが手がけるワインブランド「Y by YOSHIKI」をボトルでラッパ飲み。音量を下げて「おそらく浮かぶ景色があると思うので、ライブ会場をイメージして思い思いに楽しんでください」と観客に語り掛ける。それはHIDEのギターを爆音で聴くという至福の体験に他ならず、観客は大歓喜。中野自らも心底楽しそうな様子で爆音に没入していく。最後は「X」を選曲し、中野は卓から前へ出てきてステージを上手、センター、下手と動き回り各所でXジャンプして、フロアと一体化。「hideさんの素敵なお祭りに参加できて、僕のルーツを爆音で聴くことができました。やっぱりXってすごいな、hideってカッコいいな!と思える時間を一緒に過ごせて最高でした」と中野。愛とリスペクトの捧げ方は十人十色、自由なのだという真実を体現する熱いアクトだった。
そんな興奮の余韻の中、次の瞬間にはSUB STAGEに金屏風が出現、高座に落語家・桂りょうばが登場した。「Xのあとで落語するのは初めて(笑)」と語りドッと笑わせたが、ジャンル横断的で自由な本イベントの真髄を感じさせる場面転換でもあった。このイベント前後の怒涛のスケジュールをつらつらと述べていき、聴き入る観客を前に「そんな売れっ子だったらいいな、と」という落ちで場内は爆笑。いつの間にかりょうばの噺の世界へと足を踏み入れていたことに気付かされる、いわば虚実皮膜の芸ですっかり場の空気を掌握した。2016年のhideバースデーライブ、2017年のMLJに続いての出演となるりょうばはCUTTの実兄でもあり、「”お兄ちゃん!”って呼んでいいよ?」と観客に呼び掛けてコミュニケーション。桃太郎をモチーフとして現代風刺を交えた巧みな話芸で楽しませてくれた。
A'TTIC StageのトリにはDJ-INAが再登場、ここからはhideが手がけた曲たちが次々と流れ出していく。「ピンク スパイダー」からスタートしたDJ PLAYでは、DJ-INAの掛ける声に合わせてフロアからも熱い声が飛び交えば、曲に合わせて飛び跳ねる景色も生まれていた。その勢いを加速するように「MISCAST」をぶちかまし、続く「BACTERIA」でダウナーな衝撃を与え、「DOUBT」を通してカオスな世界へと観客たちを連れ出した。一転、「Hey!」と声を掛け合い、みんなで手を振って気持ちを一つにした「CELEBRATION」へ。zilchの「SPACE MONKEY PUNKS FROM JAPAN」も組み込みつつ、彼は「ever free」を通して、観客たちが欲しがっていた興奮や熱狂という感情のアクセルを、さらに力強く踏ませた。いつしか観客たちも前へ、前へと押し寄せ、湧き立つ気持ちを、DJ-INAと一緒に高め合っていた。そこへ「DICE」を突きつけたときの、魂の燃え立つ衝撃と興奮。最後にDJ-INAは「ROCKET DIVE」をスパークさせ、この場にいる全員を、現実を飛び超え、hideが手招いている最高に閃く世界へダイブさせた。PLAY中、DJ-INAが曲に合わせて一緒に歌えば、その勢いを受け、フロアからも拳の突き上がる景色がずっと生まれていた。
様々なプログラムがめまぐるしく繰り広げられつつも、最後はしっかりと、ライブ好きのhideにふさわしい熱狂した景色を作り上げ、A'TTIC Stageのイベントは幕を閉じていった。
MAIN STAGEの幕が上がり、赤く染められたステージにネロ(Dr)、結生(Gt)、テツ(Ba)、最後に登場したガラ(Vo)が机に乗ってマイクスタンドを高く掲げると、その場所はもうこの世のどこでもなく、メリーの漆黒の世界に様変わりしていた。「溺愛の水槽」で深く引き込み、続く「さよなら雨(レイン)」ではガラは脱いだジャケットをマイクスタンドに掛けると、人に見立てて妖しく抱き寄せる演劇的なパフォーマンスも交えて魅了。「hideさん、初めまして、メリーです」と、直接hideに語り掛けるあいさつから始めたガラは、「今日はこんな素敵なイベントに呼んでいただいて、とてもうれしいです。呼んでくれたdefspiralのRYOさんに感謝しています、ありがとうございます」と感謝を述べる。「hideさんがつくってくれたヴィジュアル系、僕ら今全力でやってます」と自己紹介。「こんな感じだったらいいな、というヴィジュアル系になってるんですかね?」と自問すると大きな拍手が起きる。「目黒鹿鳴館からメリーというバンドも今年25周年。あなたたちがつくってくれたヴィジュアル系を引き継いでます。これからも見ていてください」と再び語り掛け、「hideさんの曲をやりたいと思います」との言葉からスタートしたのは「TELL ME」だった。ネロは左右に頭を振って生き生きとプレイをし、結生、テツも前へ出て、ガラは「川崎!」とフロアに呼び掛け盛り上げる。「これが昭和最後のヴィジュアル系の姿、行けるか川崎!」(ガラ)と絶叫して披露した最後の曲は「ジャパニーズモダニスト」。鬼気迫るパフォーマンスで強烈な残像を観る者に残した。
一変してSUB STAGEには真っ白な衣装でLittle Lilithが登場。メタルシーンでジェントバンドとして活動している彼女たちだが、この日はレアなアコースティック・セットでパフォーマンス。デスボイスを封印したLILLY(Vo)は観客を積極的に煽りつつ澄んだハイトーンを響かせ、YUKI(Dr)はカホーンとウィンドチャイムで温かなムードを醸し、Mayto.がアコースティックギターを繊細に紡いでいく。MCでLILLYは、かつて西麻布のRallyで働いていたときにhideの存在を知り、「素敵だな、私も音楽をやりたいな」と志したのをきっかけに今の活動があるという。MLJに「また出られるとなったら、こっちじゃなく”あっち”」とMAIN STAGEを指さし、「もうこの場所には戻らない」という覚悟を乗せて「STRIKE」を晴れやかな笑顔でパフォーマンス。「最後に、僭越ながらhideさんのこの曲をカバーさせて頂きます。一緒に歌っていただけませんか?」と呼び掛けて「Hi-Ho」を放つと、「今日イチの大きな声をhideさんに届けていきましょう!」と曲間でも煽り、大合唱を巻き起こした。
サウンドチェックで「ピンク スパイダー」を歌い奏で、幕越しにも拘わらず大いに場内を沸かせたのはdefspiral。ほどなくしてMAIN STAGEの幕が上がり、和樹(Dr)、MASATO(Gt)、このたびのイベント・プロデュースを担ったRYO、最後にTAKAがセンターへ。「VIVA LA VIDA」「BLACK BIRD」と持ち曲を畳み掛けたあと、TAKAが「嘘つき」とフロアを指さして「DOUBT」のカバーへと雪崩れ込む。観客は「待ってました」とばかりに勢いよく拳を突き上げ、TAKAは自らもシャウトを繰り返しながら「川崎、叫べー!」と煽りに煽ってフロアを巻き込んでいく。逆光の中でミステリアスに始まった「ULYSSES」でムードを変えたあと、MCでTAKAは「9年という月日があっという間。このように皆さんと参加できてうれしい。hideさんの代わりにはいつまで経ってもなれませんけど…」と語り、「長丁場、皆さんありがとう。たくさんの出会いと喜びと、感謝を込めて送ります」との言葉から「HALO」を放ち、明るい光そのもののようなサウンドスケープを立ち上げ、すべてを包み込んでいく。「流星」で本編をこの上ない多幸感の中で締め括り、貫禄のステージを終えた。
アンコールで再登場すると、「まだ遊び足りないよね?」とTAKA。RYOは「9年ぶりなんですよ。(プロデュースを)”やれ”って言われて(笑)。今日までがむしゃらにやってきたつもりです」と立役者としての想いを語った。「再開したので、来年、再来年もやります。次の曲をテーマソングにするつもりです」と述べて、「手伝ってくれる仲間たちを呼びます」とメリーの結生、Kiyoshiをギタリストとしてまずは呼び込み。RYOによればセッションは自由参加の形を取っていたそうで「出てくれる人は誰か分からない(笑)」(RYO)とのことだったが、3ステージの出演者たちが勢揃いした。TAKAは「来年も再来年もやるらしいよ? 行けるか? 「ROCKET DIVE」! hide〜!」とコール。ステージ後方とフロアの左右、全3面のスクリーンにはhideが登場し、全員で時空を超えてセッションした。
RYOの声掛けで観客を背にして出演者がhideを取り囲み、集合写真を撮影。RYOは「楽しかったです。来年もやります! 10月にはhide with Spread Beaverのツアーもあります。12月には(hideの)バースデー?やっちゃう?」と今後の展開を語り、「まだまだあるので」と期待を持たせた。Kiyoshiは「来月、Spread Beaverのツアーで会いましょう。hideと遊ぼうぜ! hide! hide! hide!」とシャウトしてステージを去っていった。
最後に松本裕士氏とRYOが並んであいさつし、松本氏が「RYOちゃん、頑張りました」と労うと、RYOは「皆でつくったイベントでした」と謙虚なコメント。「来年もよろしくね、お疲れ様!」(RYO)と再会を願って最後のあいさつとした。3ステージで全7時間を超える濃密な長丁場。音楽のジャンルだけでなく活動ジャンルの境界もやすやすと超え、hideを愛しリスペクトするという共通項を持つ多種多様な表現者たちが一堂に会し、それぞれのファンも思い思いに楽しんでいる、そんなこの上なくハッピーな光景が、川崎CLUB CITTA'内のどこでも、どの瞬間にも広がっていた。イベント中に宣言されたとおり「MIX LEMONeD JELLY 2026」は単発の再起動ではなく、”再開”の起点となる重要な一日だった。hideを愛しリスペクトする同士たちとの再会は、まずは10月からスタートするhide with Spread BeaverのZepp Tourとなるが、今後発表されていくであろう様々な展開が待ち遠しい。
(文・MAIN STAGE/SUB STAGE 大前多恵 A’TTIC Stage 長澤智典)
【ライブ写真】『MIX LEMONeD JELLY』の模様をたっぷりと!
■オフィシャルライブレポート
日本におけるロックフェスの先駆けと言われている、hideが発案して始めたサーキットイベント「MIX LEMONeD JELLY」(以下MLJ)。同イベントは、その後も形を変えながら、hideの意志を繋ぎ続けられてきた。 2026年9月6日、そのMLJが9年ぶりにdefspiral RYO(Ba)のプロデュースで再起動を果たした。川崎CLUB CITTA'を会場に、メイン、サブ、A'TTICと3ステージを用意。hide、machine、Cuon(クオン)、DJピエール中野、Girls be bad、メリー、XANVALA、チャンス大城、西崎ゴウシ、YA/NA、Little Lilith、Mr.秋葉原ササキチ、defspiral、DJ-INA、木村世治、CUTT、桂りょうば、桃知みなみが出演し、あらゆる境界を越えて観客と共に自由に楽しむ、全7時間に及ぶイベントを繰り広げた。
ステージ背景のモニターにはイベント中継続的に、hideがプロデュースしたMLJのライブ映像が流れていた。果汁を使用したタトゥーアート「ジャグアタトゥーブース」も、人の列が途切れないほどの盛況ぶりだった。
A'TTIC Stageでは続いてCUTTのアコースティックミニライブがスタート。後にサブステージでの出番も控えているが、同一人物が異なるセットを披露するのもこのイベントの見どころである。アコースティックギターを掻き鳴らし、空の彼方で見守っているhideに思いと声を届けるように「ROCKET DIVE (acoustic ver.)」を歌唱。同期も用いながら「TELL ME (zilch-like ver.)」を披露すると、観客たちも心地よく身体を揺らし、ときに拳を振り上げて、彼と一緒にこの場に愛に満ちた空間を作り上げていった。リスペクトを込めてhideの楽曲を次々と届けていき、ひときわノリの良い演奏を作り出したX(現X JAPAN)の「Joker (SPEED OF LIGHTS ver.)」では、歌声と演奏が跳ねるたび、フロアからも声と拳が突き上がる。最後にCUTTは、hideが発掘したバンドであり、自身が在籍していたshameのデビュー曲「GOOD-BYE(shame debut single happy ver.)」を通して、この場をハッピーなパーティー空間に染め上げた。彼が歌い奏でるたびに、この場にカラッと晴れ渡る青空のような世界が広がる。外は生憎の雨模様だが、この会場にはずっと、眩しい音の陽射しの降り注ぐ開放的な空間が広がっていた。
1Fホールでは13時35分にMAIN STAGEがいよいよ幕開け。フロア左右のスクリーンには本イベントが始動した1996年を起点とするhideのドキュメント映像が映し出され、”今ここ”を示す「MIX LEMONeD JELLY 2026」のタイトルに辿り着くと、MCのチャンス大城がギターを構えて登場。出演者名をコールしていくと共に、自身が中学1年生の時にX(現 X JAPAN)に出会ったこと、hideの大ファンであることを熱く語ったあと、持ちネタを次々と繰り出して笑わせ、場を温めていった。
13時45分、アタック映像のあとに幕が上がり場内の空気は一変。赤い光に包まれたステージに登場したのは、HAKUEI(PENICILLIN/The Brow Beat)とKiyoshi(hide with Spread Beaver/MADBEAVERS/Lucy/freeman)によるユニット、machineだ。1999年に結成、2025年に約10年ぶりに再始動を果たし活動を活性化させており、この日はDEN(Ba)、CHARGEEEEEE…(Dr)、COLA(Manipulator)という濃密な顔ぶれが勢揃い。「機械児」に始まり、凶暴なデジタルビートと暗黒美が絡み合うサウンドを、容赦なくフロアに浴びせ掛けていく。MCでは「13時45分ということで……人生で一番早い時間のライブかもしれません(笑)」とHAKUEI。酒を飲んでいると明かし、「肝臓に自信がある方は」と断りを入れたうえで観客にも飲酒のススメ。「reset human」ではお馴染みのゲップ芸も飛び出して、Kiyoshiが「ゲップ失礼しました」とお詫びを代弁する場面も。圧倒的なテクニックとカリスマ性に裏打ちされた中毒性の高い世界観を鮮烈に提示して、ゴージャスなトップバッターは風のように去っていった。
machineのライブと時を同じくしてA'TTIC Stageでは、西崎ゴウシの司会のもと、hideの実弟で、hideのオフィシャルマネジメント事務所「HEADWAX ORGANIZATION」の代表取締役を務める松本裕士氏がトークイベントに登壇した。9年ぶりのMLJ開催理由について、「お客さんに楽しんでもらう場をもう一度作りたいことと、今後も若手を中心に、このイベントを継続していくため」と語り、そのうえで、hideが1997年に立ち上げた当時を懐かしむようにこう語り出した。MLJは、hideが「いろんなアトラクションが並ぶ会場を、お客さんに自由に歩き回り、自分なりにイベントを楽しんでほしい」という思いから始まったこと。開催に向けて「これこれ!これをやりたいので、あとはよろしく」と無茶ぶりをしていたこと。それを受けてhideの求める遊び場を構築していったこと。先鋭的なイベントだったこともあって、観客たちが戸惑いつつも楽しんでいた姿を懐かしむように話していたのも印象深かった。
オールナイトイベントの前日にhideが帰国し、そのままリハーサルに入り本番を迎えるなど、若さゆえに突っ走れたイベントでもあったようだ。当時はまだネット(ISDN)回線も弱い中、様々なトラブルがありながらも果敢に新しいことに挑戦していったことが、2人のやりとりから見えてくる。hide自身はイベントの規模を拡大したいと考え、よみうりランドを舞台にMLJを行おうと企画していた裏話も。hideは、日本における野外フェスやサーキットイベントの先陣を切って切り拓いてきた。ここでは、改めてhideの奇想天外な発想が、今に繋がる音楽文化を作ってきたことについても検証していた。
最後に、「10月から始まるZepp Tourがhide with Spread Beaverの活動としては最後になるかもしれない」という話も飛び出したが、「でも、hideを中心に据えた企画案はまだまだあるので、楽しいことを続けていくから、これからも楽しみにしていてほしい」とも述べてイベントを締めくくった。
ライブバーA'TTIC Stageだからこそ、と言えようか。defspiralのTAKAとメリーのガラ、2人のボーカリストがアコースティックなスタイルで共演した。先に登場したTAKAが、アコースティックギターを手にhideの「FLAME」を艶めいた、でも芯の太い声を響かせて朗々と歌い出し、観客たちのハートを強く抱きしめる。ここでTAKAが、ライブを観ていたdefspiralのRYOを呼び入れ、2人が届けたのが「DICE」。時にRYOへマイクのバトンを渡すなど、息の合った関係だからこそ、その場のアドリブから生まれる空気を一緒に作り上げていく。さらにその場にTAKAがガラを呼び込み、新鮮な組み合わせの2人で歌ったのが「HURRY GO ROUND」。ここではガラを中心に、TAKAがコーラスで寄り添う形で進められた。癖が強く個性的なガラの歌声に、TAKAの芯の太いコーラスが重なり合うことで、存在感の強い歌声の重奏がこの場を包み込んでいく。気持ちの揺れ動くまま、その思いに導かれるように歌い上げるガラ。そこへTAKAが寄り添うように歌声を重ね、息の合った絶妙なコンビネーションを聴かせた。
14時15分、SUB STAGEが明るく照らされると、「今日は行ったり来たり忙しいと思いますが、楽しんでください!」と観客に呼び掛けたトップバッターの木村世治。hideに見出されLEMONeDレーベル発足のきっかけとなったロックバンドZEPPET STOREのフロントマンである。呼び掛けずともクラップが自然発生する中、アコースティックギター弾き語りで届けられるシンプルな歌声は、驚異的な吸引力がある。「9年ぶりのMLJということで、随分昔な気がしますが、楽しんでいきたい」と語ると、この後DJやチャリティーオークションにも参加すると予告。「もうね、これを歌わないとね」との言葉からスタートしたのは「FLAME」。hideがZEPPET STOREのこの曲を再構築して「MISERY」が生まれたという逸話を持つ名曲である。「降り注ぐ悲しみすら抱き寄せ」「Life is going on 枯れるまで」という歌詞は色褪せるどころか、2026年の今だからこそ一層リアリティを帯びて心に響いた。「サンキュー、2Fで会いましょう!」と、A'TTIC Stageでの再会を呼び掛けて手を振り、温かな拍手の中でステージをあとにした。
その頃A'TTIC Stageでは、DJ-INA presents 「令和8年熊本地震災害義援金」チャリティーオークションが行われていた。出演者や関係者の方々から様々な商品を提供していただき、訪れた人たちにオークション形式で販売。ほんの一部をご紹介すると、NEW ERAとのコラボレーションで作られたhideキャップの試作品(未使用非売品)や、defspiralのRYOが提供した「いにしえのhideグッズ」、DJ-INAが出品した2008年の再結成ライブからずっと一緒に世界中を旅してきた、赤髪のhide人形など、貴重なアイテムの数々がラインナップ。 具体的な金額の明記は控えるが、集まった売上金はすべて「令和8年熊本地震災害義援金」として寄付される。このチャリティー精神も、hideから受け継いだスピリットだ。会場には募金箱も用意され、オークションに参加せずとも、購入したドリンクのお釣りを寄付するなど、それぞれが募金箱に寄付をしていたことも伝えておきたい。
14時40分、MAIN STAGEの幕が上がると、ひんやりとした青いライティングの下、ドラマーがスタンバイする深い海の底のような空間に、青い髪が際立つCuonが登場した。雨音のSEと共に始まった「Ghost Dance」を激しくギターを掻き鳴らしながら歌い、観客はじっと立ち尽くして見入っていた。クラップを自ら先導して盛り上げ、一人ひとりに語り掛けるようなコミュニケーションから真摯な人柄が伝わってくる。情感豊かな歌唱から激しいシャウト、語りパートも含む幅広い表現を繰り出し、繊細な心の内を届けていく。「テレビの向こうの憧れの方が始めたイベントのステージに立つことができて、本当にうれしいです」と感無量な様子で語り、hideと同じく神奈川出身だと語り、「うれしくて両親を呼んじゃいました」と明かす初々しい一面も。凄まじい声量で圧倒したラストの「Echo」まで、全7曲をひたすら真っ直ぐに届けた。
A'TTIC Stageでは、 西崎ゴウシの司会進行のもと、トークイベントにmachineのHAKUEIとhide with Spread BeaverのKiyoshiが登壇した。終えたばかりのライブの感想を2人は語り出し、HAKUEIが「人生で一番最高のステージでした」と述べていたのが印象的。KiyoshiはMLJを初めて開催した当時のエピソードも語ってくれた。西崎が「hideさんはどんな人?」と質問すると、HAKUEIが「ミュージシャンとして選ばれた人。でも、めちゃくちゃな人です」と語り出す。さらにHAKUEIが、恵比寿にあった屋台にKiyoshiとhideに朝8時頃に呼ばれて行ったとき、その場にいたBUCK-TICKの櫻井敦司と並べられ、hideに「はい、新旧ヴィジュアル系対決」と突っ込まれたことなどを2人は懐かしむように話していた。machineが「DOUBT」をカバーした際の話では、ジャジーにアレンジした背景を2人は語り、さらにはmachineの今後の展望についてもトーク。10月30日と31日に開催する「HALLOWEEN BUSTERS 2026」では、ポニョと未散(ゴスロリ)のコスプレをすることを、その微笑ましい理由も含めて語ってくれた。
Cuonのライブが終わった直後SUB STAGEでサウンドチェックを始めたCUTTは、「TELL ME」を弾き語りして場内を沸かせ、「曲に申し訳ないので、1コーラスだけやります」と切りの良いところまで披露。アタック映像を差し挟み、すぐさま本番がスタートした。「自由に楽しむ」というイベントのテーマに沿って自身もテーマを決めてきたと語り、「僕の歌いたい歌、90年代の世界を代表するロックを歌いたいと思います」と宣言。アコースティックギター弾き語りでマリリン・マンソンやNIRVANA、NINE INCH NAILSなどの楽曲をノンストップで歌い繋いでいく。hide の「LEMONed I Scream」ではフロアにシンガロングを求めて盛り上げ、「自分の曲も歌います」と最後に「Indiscribable」を披露。感謝してもしきれない想い、愛を描いたナンバーに乗せて、hideへの想いを高らかに歌っているように感じられた。
CUTTがステージをあとにすると松本裕士氏が二階席に現れ、フロア目掛けてタイムテーブルの紙束をバラ撒くと、見上げて手を伸ばす観客は誰もが楽しそうな笑顔。サウンドチェックの音が響き、ほどなくしてMAIN STAGEに登場したのはヴィジュアル系バンドXANVALA。観客はペンライトを灯し、白と赤を基調とした衣装に身を包んだ巽(Vo)、Yuhma(Gt)、宗馬(Gt)、70(Ba)、知哉(Dr)を出迎えた。疾走感あふれるダークロック「DICE」で幕開けると、「XANVALAです、よろしくどうぞ。始めようか! hideさんへのリスペクトと愛を込めて」(巽)と第一声。緻密に構築された世界観を打ち出しつつも、曲の間には幾度も「初めましてXANVALAです」「よろしくどうぞ」と律義にあいさつを繰り返し、一期一会を大切にする姿勢が感じられた。ラストの1曲を残したMCで、「hideさんのイベントに初めて参加させてもらって、あったかい人だったんだろうなって思いました」と語る巽に、メンバーたちは同意するように頷いた。「それを観て育った人を見て、俺たちは育ちました。次は俺たちが受け継ぐ番だなって」と、令和のヴィジュアル系バンドとしての使命感も滲ませる。そんなスピリットを体現するようなライブで存在感を示した。
A'TTIC Stageに今度はDJとして出演した木村世治。洋楽ディスコ曲を中心に選曲し、アースウィンド&ファイアーの「セプテンバー」からPLAYはスタートした。レニー・クラヴィッツの「自由への疾走」やジグソーの「スカイハイ」、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」などノリの良い名曲ばかり。大勢の人たちが両手を上げて飛び跳ね楽しくダンスに興じていた。そんな中へhide feat.東京スカパラダイスオーケストラの「Beauty&Stupid TOKYO SKA VERSION」を組み込んだセンスもさすが。DJ TIME中、何度もステージ前に出てきてはPLAY中のアーティストの仕草を真似るなど、木村自身が一番楽しんでいるように見えた。
木村世治からのバトンを受け取ったDJ-INAは、主に90年代のディスコ系J-POPナンバーを選曲。SMAPの「SHAKE」から始まったDJ PLAYでは、観客たちが曲に合わせて掛け合いを見せるなど、最初からノリノリの空間を作り出す。その後も、ブラックビスケッツの「Timing〜タイミング」やモーニング娘。の「LOVEマシーン」、TRFの「EZ DO DANCE」から、E-girlsの「おどるポンポコリン」までPLAY。ときにサイリウムを振りながら観客たちと声を掛け合うなど、ライブに負けない熱狂の景色を作り出していった。流行歌の数々に慣れ親しんだ世代が多かったのもあったのか、フロアは常に熱気に満ちており、まさか羽根扇子(ジュリ扇)が舞う景色まで生まれるとは。そんな予想外の展開も飛び出すほどの熱狂ぶりだった。
SUB STAGEでは、ブースに出展しているボランティア団体の方々が代わる代わる登壇しての告知タイム。チャンス大城と西崎ゴウシの進行のもと、詳しい活動内容やhideとの関係性などを観客に語り掛けていた。
続いてMAIN STAGEに登場したのは、松隈ケンタがプロデュースするガールズグループGirls be bad。サウンドチェックの時点で凄まじい声量とエネルギーの塊のようなものが幕の向こうから迫ってきて、慄くほどだった。このようなイベントに出演すること自体が初めてだとMCで口々に明かしたが、りんか(リーダー担当)、あやか(元気娘担当)、蝶(クール担当)は堂々と歌い踊り、度胸のあるパンキッシュなステージを展開。「DOUBT」のカバーを含む多種多様な全9曲を、自分たちでペイントしたというhideモデルのギターを代わる代わる手に取りながらパフォーマンスした。本イベントへの出演は目黒鹿鳴館でのライブで「X」の完コピをしたことがきっかけだと語った蝶は、「この日のためにhideさんカラーで髪を染めました」と赤髪の理由を明かし、hideへのリスペクトを示した。
A'TTIC Stageでは、ナビゲーターをdefspiralのRYOが担当しているコマラジの番組「Radio MIX LEMONeD JELLY」の公開収録が2本行われた。1本目には木村世治とCUTTが出演し、「今だから言えるhideさんのあんなこと、こんなこと」をテーマにトーク。10月から始まるhide with Spread BeaverのZepp Tourに木村が帯同することから、そのライブに向けての会話が繰り広げられた。木村から「defspiralは今、一番格好いいと本気で思っている」と熱い言葉が飛び出し、それを受けてのCUTTの発言からも、RYOの人柄が滲み出ていた。 この日絆を再確認したという3人は長い付き合いのLEMONeD FAMILY。今後企画しているhide関連のイベントでも一緒にやっていこうという前振りも兼ねていたのか?! そんな含みを持たせた会話も。hideのMLJに賭けたスピリッツもしっかりと受け継いでいく決意を示し、その新たな始まりがこの日になる、と確信させる3人のトークだった。
2本目の収録には、XANVALAから巽と宗馬が出演した。XANVALAが今回のイベントに出演したのは、RYOからの熱烈なオファーがあってのこと。互いの出会いは、謎のLINEからだという。宗馬は「hideさんの『DICE』が大好き」と熱く語り、「ピンク スパイダー」のギタープレイへのリスペクト発言からは、彼のhideへの愛が見えてきた。巽もhideへの愛を、低音域の利いた魅惑の声で語った。曲を例に挙げ、演奏や歌詞の魅力について語っていたXANVALAの2人。hideのスピリットを受け継いだ思いにも、番組を実際に聴いてぜひ触れてほしい。彼らも、この日からhide FAMILYの仲間入りだ。
3本目のトークイベントは、CUTTの司会のもと、hideの専属ヘアメイクとして活動、現在はヘアサロン「SQUASH代官山」代表の宮城浩さん、hideのスタイリストをしていた高橋恵美さん、そしてINAが登壇し、「ヴィジュアル」を題材にしたトークを繰り広げた。hideのソロデビューの発表を記念し、原宿・神宮前の交差点でMVを公開するイベントを開催したところ、3000人超が集結。hideはその場で1曲演奏する予定だったが、あまりにも人が多すぎて、MVは公開したが、ライブは中止に。その裏ではスタッフが警官に事情聴取を受けたことなど、当時の裏エピソードを高橋さんは語っていく。宮城さんは、hideが急に「ロングヘアーを切りたい」と楽屋で言い出したことで、腰まであったロングヘアーをばっさり切ったところ、「本当に切りやがった」と軽いジョークを口にしていたこと、その頃からヘアメイクを任せてもらえるくらい信頼を寄せ合う関係になったことなどを明かした。「MISERY」のMVではhideが「みんなで作る手作り感を大切にしていたこと」や、「アイデア次第で誰でもできることをhideが『MISERY』で証明してくれた」ことなどを3人が語っていた。他にも、浅草の花やしきで雑誌の撮影をしたときに、hideがそこにあったプリクラを撮影したエピソードなども語られていた。高橋さんは「ヴィジュアルの表現者としてのhideについて、今後もずーっと伝え続けたい」、宮城さんは「自分のヘアメイクの引き出しを開けてくれた人」と語り、コーナーを締め括った。
ここからラストまで、A'TTIC StageはDJ TIMEに。ふたたびDJ-YA/NAが登場し、ダウナーながらもモダンな、美しくも破壊的なセンスを持った女性ボーカル曲を中心にPLAY。続いては秋葉原界隈を活動の主戦場にしているMr.秋葉原ササキチ、hideイベントではお馴染みのDJ-桃知みなみ、パンザブロウへとバトンタッチ。このチームが最初に流したClariSの「コネクト」からもわかるように、3人はアニソンの数々を連発した。中川翔子の「空色デイズ」、シドの「嘘」、MAKE-UPの「ペガサス幻想-PEGASUS FANTASY-」、MAHO堂の「おジャ魔女カーニバル」、L'Arc〜en〜Cielの「READY STEADY GO」、DALIの「ムーンライト伝説」、ゴールデンボンバーの「女々しくて」などが次々と流れる中、DJ-桃知みなみとパンザブロウが、時にMIXを打つなど、パフォーマンスを通してフロアを煽れば、耳になじんだアニソンが多く流れることから、場内でも身体を揺らし、パレードのように続くヒット曲の数々を楽しんでいた。ハムちゃんずの「ハム太郎とっとこうた」が流れたときには、フロアに生まれたサークルへパンザブロウも参加して、一緒に歩き回っていた。最後に3人は、hideの「子 ギャル」を届け、トリを飾ったDJ-INAにバトンを繋いでいった。
1階ホールのMAIN STAGEで型破りなDJを繰り広げたのは、ピエール中野。幕が上がるとステージ中央のDJ卓に中野がスタンバイしており、「今日はCLUB CITTA’で爆音でXの曲を掛けます」と宣言したとおり、「WORLD ANTHEM」に始まりX楽曲を繰り出すDJ PLAYで、通好みの選曲を織り込みながら話芸との合わせ技でフロアを沸かせていく。時にはスティックを手にドラムセットがそこにあると幻視させるほど精緻なエアドラムを繰り出しながら、 YOSHIKIが手がけるワインブランド「Y by YOSHIKI」をボトルでラッパ飲み。音量を下げて「おそらく浮かぶ景色があると思うので、ライブ会場をイメージして思い思いに楽しんでください」と観客に語り掛ける。それはHIDEのギターを爆音で聴くという至福の体験に他ならず、観客は大歓喜。中野自らも心底楽しそうな様子で爆音に没入していく。最後は「X」を選曲し、中野は卓から前へ出てきてステージを上手、センター、下手と動き回り各所でXジャンプして、フロアと一体化。「hideさんの素敵なお祭りに参加できて、僕のルーツを爆音で聴くことができました。やっぱりXってすごいな、hideってカッコいいな!と思える時間を一緒に過ごせて最高でした」と中野。愛とリスペクトの捧げ方は十人十色、自由なのだという真実を体現する熱いアクトだった。
そんな興奮の余韻の中、次の瞬間にはSUB STAGEに金屏風が出現、高座に落語家・桂りょうばが登場した。「Xのあとで落語するのは初めて(笑)」と語りドッと笑わせたが、ジャンル横断的で自由な本イベントの真髄を感じさせる場面転換でもあった。このイベント前後の怒涛のスケジュールをつらつらと述べていき、聴き入る観客を前に「そんな売れっ子だったらいいな、と」という落ちで場内は爆笑。いつの間にかりょうばの噺の世界へと足を踏み入れていたことに気付かされる、いわば虚実皮膜の芸ですっかり場の空気を掌握した。2016年のhideバースデーライブ、2017年のMLJに続いての出演となるりょうばはCUTTの実兄でもあり、「”お兄ちゃん!”って呼んでいいよ?」と観客に呼び掛けてコミュニケーション。桃太郎をモチーフとして現代風刺を交えた巧みな話芸で楽しませてくれた。
A'TTIC StageのトリにはDJ-INAが再登場、ここからはhideが手がけた曲たちが次々と流れ出していく。「ピンク スパイダー」からスタートしたDJ PLAYでは、DJ-INAの掛ける声に合わせてフロアからも熱い声が飛び交えば、曲に合わせて飛び跳ねる景色も生まれていた。その勢いを加速するように「MISCAST」をぶちかまし、続く「BACTERIA」でダウナーな衝撃を与え、「DOUBT」を通してカオスな世界へと観客たちを連れ出した。一転、「Hey!」と声を掛け合い、みんなで手を振って気持ちを一つにした「CELEBRATION」へ。zilchの「SPACE MONKEY PUNKS FROM JAPAN」も組み込みつつ、彼は「ever free」を通して、観客たちが欲しがっていた興奮や熱狂という感情のアクセルを、さらに力強く踏ませた。いつしか観客たちも前へ、前へと押し寄せ、湧き立つ気持ちを、DJ-INAと一緒に高め合っていた。そこへ「DICE」を突きつけたときの、魂の燃え立つ衝撃と興奮。最後にDJ-INAは「ROCKET DIVE」をスパークさせ、この場にいる全員を、現実を飛び超え、hideが手招いている最高に閃く世界へダイブさせた。PLAY中、DJ-INAが曲に合わせて一緒に歌えば、その勢いを受け、フロアからも拳の突き上がる景色がずっと生まれていた。
様々なプログラムがめまぐるしく繰り広げられつつも、最後はしっかりと、ライブ好きのhideにふさわしい熱狂した景色を作り上げ、A'TTIC Stageのイベントは幕を閉じていった。
MAIN STAGEの幕が上がり、赤く染められたステージにネロ(Dr)、結生(Gt)、テツ(Ba)、最後に登場したガラ(Vo)が机に乗ってマイクスタンドを高く掲げると、その場所はもうこの世のどこでもなく、メリーの漆黒の世界に様変わりしていた。「溺愛の水槽」で深く引き込み、続く「さよなら雨(レイン)」ではガラは脱いだジャケットをマイクスタンドに掛けると、人に見立てて妖しく抱き寄せる演劇的なパフォーマンスも交えて魅了。「hideさん、初めまして、メリーです」と、直接hideに語り掛けるあいさつから始めたガラは、「今日はこんな素敵なイベントに呼んでいただいて、とてもうれしいです。呼んでくれたdefspiralのRYOさんに感謝しています、ありがとうございます」と感謝を述べる。「hideさんがつくってくれたヴィジュアル系、僕ら今全力でやってます」と自己紹介。「こんな感じだったらいいな、というヴィジュアル系になってるんですかね?」と自問すると大きな拍手が起きる。「目黒鹿鳴館からメリーというバンドも今年25周年。あなたたちがつくってくれたヴィジュアル系を引き継いでます。これからも見ていてください」と再び語り掛け、「hideさんの曲をやりたいと思います」との言葉からスタートしたのは「TELL ME」だった。ネロは左右に頭を振って生き生きとプレイをし、結生、テツも前へ出て、ガラは「川崎!」とフロアに呼び掛け盛り上げる。「これが昭和最後のヴィジュアル系の姿、行けるか川崎!」(ガラ)と絶叫して披露した最後の曲は「ジャパニーズモダニスト」。鬼気迫るパフォーマンスで強烈な残像を観る者に残した。
一変してSUB STAGEには真っ白な衣装でLittle Lilithが登場。メタルシーンでジェントバンドとして活動している彼女たちだが、この日はレアなアコースティック・セットでパフォーマンス。デスボイスを封印したLILLY(Vo)は観客を積極的に煽りつつ澄んだハイトーンを響かせ、YUKI(Dr)はカホーンとウィンドチャイムで温かなムードを醸し、Mayto.がアコースティックギターを繊細に紡いでいく。MCでLILLYは、かつて西麻布のRallyで働いていたときにhideの存在を知り、「素敵だな、私も音楽をやりたいな」と志したのをきっかけに今の活動があるという。MLJに「また出られるとなったら、こっちじゃなく”あっち”」とMAIN STAGEを指さし、「もうこの場所には戻らない」という覚悟を乗せて「STRIKE」を晴れやかな笑顔でパフォーマンス。「最後に、僭越ながらhideさんのこの曲をカバーさせて頂きます。一緒に歌っていただけませんか?」と呼び掛けて「Hi-Ho」を放つと、「今日イチの大きな声をhideさんに届けていきましょう!」と曲間でも煽り、大合唱を巻き起こした。
サウンドチェックで「ピンク スパイダー」を歌い奏で、幕越しにも拘わらず大いに場内を沸かせたのはdefspiral。ほどなくしてMAIN STAGEの幕が上がり、和樹(Dr)、MASATO(Gt)、このたびのイベント・プロデュースを担ったRYO、最後にTAKAがセンターへ。「VIVA LA VIDA」「BLACK BIRD」と持ち曲を畳み掛けたあと、TAKAが「嘘つき」とフロアを指さして「DOUBT」のカバーへと雪崩れ込む。観客は「待ってました」とばかりに勢いよく拳を突き上げ、TAKAは自らもシャウトを繰り返しながら「川崎、叫べー!」と煽りに煽ってフロアを巻き込んでいく。逆光の中でミステリアスに始まった「ULYSSES」でムードを変えたあと、MCでTAKAは「9年という月日があっという間。このように皆さんと参加できてうれしい。hideさんの代わりにはいつまで経ってもなれませんけど…」と語り、「長丁場、皆さんありがとう。たくさんの出会いと喜びと、感謝を込めて送ります」との言葉から「HALO」を放ち、明るい光そのもののようなサウンドスケープを立ち上げ、すべてを包み込んでいく。「流星」で本編をこの上ない多幸感の中で締め括り、貫禄のステージを終えた。
アンコールで再登場すると、「まだ遊び足りないよね?」とTAKA。RYOは「9年ぶりなんですよ。(プロデュースを)”やれ”って言われて(笑)。今日までがむしゃらにやってきたつもりです」と立役者としての想いを語った。「再開したので、来年、再来年もやります。次の曲をテーマソングにするつもりです」と述べて、「手伝ってくれる仲間たちを呼びます」とメリーの結生、Kiyoshiをギタリストとしてまずは呼び込み。RYOによればセッションは自由参加の形を取っていたそうで「出てくれる人は誰か分からない(笑)」(RYO)とのことだったが、3ステージの出演者たちが勢揃いした。TAKAは「来年も再来年もやるらしいよ? 行けるか? 「ROCKET DIVE」! hide〜!」とコール。ステージ後方とフロアの左右、全3面のスクリーンにはhideが登場し、全員で時空を超えてセッションした。
RYOの声掛けで観客を背にして出演者がhideを取り囲み、集合写真を撮影。RYOは「楽しかったです。来年もやります! 10月にはhide with Spread Beaverのツアーもあります。12月には(hideの)バースデー?やっちゃう?」と今後の展開を語り、「まだまだあるので」と期待を持たせた。Kiyoshiは「来月、Spread Beaverのツアーで会いましょう。hideと遊ぼうぜ! hide! hide! hide!」とシャウトしてステージを去っていった。
最後に松本裕士氏とRYOが並んであいさつし、松本氏が「RYOちゃん、頑張りました」と労うと、RYOは「皆でつくったイベントでした」と謙虚なコメント。「来年もよろしくね、お疲れ様!」(RYO)と再会を願って最後のあいさつとした。3ステージで全7時間を超える濃密な長丁場。音楽のジャンルだけでなく活動ジャンルの境界もやすやすと超え、hideを愛しリスペクトするという共通項を持つ多種多様な表現者たちが一堂に会し、それぞれのファンも思い思いに楽しんでいる、そんなこの上なくハッピーな光景が、川崎CLUB CITTA'内のどこでも、どの瞬間にも広がっていた。イベント中に宣言されたとおり「MIX LEMONeD JELLY 2026」は単発の再起動ではなく、”再開”の起点となる重要な一日だった。hideを愛しリスペクトする同士たちとの再会は、まずは10月からスタートするhide with Spread BeaverのZepp Tourとなるが、今後発表されていくであろう様々な展開が待ち遠しい。
(文・MAIN STAGE/SUB STAGE 大前多恵 A’TTIC Stage 長澤智典)
2026/09/09





