プロデューサーで歌手の高嶋弘之(92/※高=はしご高)が9日、東京・亀戸のカメイドクロック カメクロコートでデビューCD「君のいない朝がくる」の発売記念イベントを開いた。 冒頭のあいさつで高嶋は「去年、昭和100年。昭和歌謡を事務所でちょっと歌ってましたら、事務所の人間が『コンサートやったらどうですか?』と言うんで、調子に乗って2回ほどやった。『CDも出しましょうか!』となって、人の迷惑も顧みずCDを出すことになりました」と経緯を軽快トークで明かして笑わせた。「最初に一言。お客様で笑顔の中もいらっしゃるんですが、心配そうな顔をした方がいらっしゃるので最初に大事なことをお話します。私、東芝レコードを皮切りに長年、レコード業界で働いてまいりまして、下手な歌を聞いて死んだ人はおりませんので。どうぞご安心なってください」と呼びかけて笑いを誘っていた。 イベントでは1曲目に「リンゴの唄」を歌唱。「私は1934年の生まれで、今年92歳になります。まさに戦争をずっと体験してるんです。私は兵庫県神戸市で、神戸は焼け野原になりました。建物がビルと木造の違いはありますが、今のウライナの光景を見てますと、まさにあの通りなんです。我が家も全焼しまして。父親がその辺に残った板を集めたようなバラック小屋を作ってくれまして。そのバラック小屋で聞いたのが『リンゴの唄』です。11歳、小学校5年生の時に聞きました。焼け野原のバラック小屋で聞いた歌は、私の力強く生きようと思う決意の歌だったんです」と込める思いを語った。歌い終えると会場からは拍手が。高嶋は「『リンゴの唄』は81年前に私は聞いているんです。81年前に聞いて、歌えるって立派なもん。もうちょっと拍手がほしいです」と呼びかけて、万雷の拍手を受けていた。 コンサートやCDデビューは「全然、考えたことなかった」という。コンサートについては気軽に「やるわ」と返答。その後「やっぱりやめるわ」と言ったところ、スタッフから「もう取り返しがつきません」と言われて決行。140席のホール。埋まるか不安だったが「10日で売り切れました」と自慢げだった。そして、銀座にある大好きな王子ホール(315席)でもコンサートが行いたくなった。“クラシックの殿堂”と呼ばれるホールで「歌謡曲はダメなんです。そこでどうしてもやりたいと。あそこで、ずいぶん主催して(クラシックの)コンサートをやっている。王子ホールの社長が『高嶋さんならいい』と言ってくださった。3日間で売り切れました」と話したが「それで調子に乗っちゃったんですよ。『じゃあCDでも行こうか』と」と苦笑いを浮かべていた。 東芝レコード時代にはビートルズ担当ディレクターとして一大ブームを巻き起こし、その後も黛ジュン、ザ・フォーク・クルセダーズ、由紀さおりなど、多彩なアーティストを手掛けた敏腕プロデューサー。兄は俳優の高島忠夫、娘はヴァイオリニストの高嶋ちさ子という高嶋弘之が、92歳でCDデビューとなる。今作は、作詞「きたやまおさむ」・作曲「都倉俊一」を迎え、9年前に亡くした妻へ贈るラブソングとなっている。きたやま、都倉がアーティストとしてデビューした際のディレクターは高嶋が担当。縁を感じる1曲となり、高嶋は「最高にうれしいです」と感慨深げだった。
2026/06/09


