人気声優ユニットのスフィアやTrySailをはじめ、CHiCOやhalcaらアニソンシーンで熱い注目を集めているシンガーを擁するミュージックレインが、新たに音楽マネジメントチーム「MiCLOVER」を発足。すでに音楽アーティストとして活躍中の所属者に加え、新たな原石も発掘し、ネットミュージックシーンで展開するアーティストたちも強力にバックアップしていく方針を打ち出した。アニメ・声優音楽界をリードする同社が、なぜ、新たな体制を組み、次なる一歩を踏み出したのか、話を聞いた。

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■コロナ禍でオーディションを開催　光る原石との出会いが発足のきっかけ

「MiCLOVER発足のきっかけは、コロナ禍だった」とミュージックレインの執行役員であり、音楽制作グループ本部長の篠原廣人氏は振り返る。

「コロナ禍真っただ中の2020年のことでした。音楽業界全体の活動が止まり、苦境が続く中、次の一手をどう打つべきか悩んでいたところ、グループ会社のソニー・ミュージックエンタテインメントの新人発掘・育成セクションであるSDグループのスタッフから『オーディションでネット系のアーティストを見つけるのがいいのではないか』とアドバイスをもらったんです」（篠原氏）

　その案をヒントに、ミュージックレインは翌21年、ボカロ曲＆アニソンに特化したボーカルオーディション「ウタカツ！3」、声優に特化した「スーパー声優オーディションα」、ボカロPやコンポーザー、絵師、動画師などクリエイターのみを対象にした「クリエイターオープンコール」の３つのオーディションから成る一大オーディション「ミュージックレインオーディション」を開催。ミュージックレインがオーディションを実施するのは、「ウタカツ！」が実に5年ぶり、声優は4年ぶり、クリエイターは初の試みだった。

「そのオーディションで驚くほど多くの才能に出会うことができた」ことが、新たに音楽マネジメントチーム「MiCLOVER」を立ち上げる動機となった。

「『歌ってみた』に投稿する女子やボカロPをはじめ、リアルに音楽活動をしている人たち、アイドル的な活動をしている人たち、マルチな作曲家など、実に多彩な、将来性のある人たちがたくさん集まってくれましたので、その才能を育む体制を整えたいと考えました」（篠原氏）

■所属アーティストらの活躍も　音楽部門のマネジメントを強化する後押しに

　さらにすでに音楽アーティストとして活躍中の所属者の転機やブレイクも新体制の発足を促す大きな要因となった。まずその1人が、CHiCOだ。13年に初開催された「ウタカツ！」でグランプリを受賞し、10代から絶大なる支持を集めるクリエイターチーム・HoneyWorksとのコラボユニットCHiCO with HoneyWorksのボーカルとして、テレビアニメのテーマソングを数多く歌い、人気を集めているCHiCOは、今年4月のツアーファイナル公演をもってチコハニとしての活動を一時休止。ソロとして新たな一歩を踏み出すことを発表していた。彼女のさらなる飛躍をバックアップする体制を整えるタイミングでもあったのだ。

　ほかにも、21年に「歌ってみた」動画の投稿を始め、翌春、ボカロPのjon-YAKITORY提供による「ONI」が1ヶ月で100万再生を記録し、11月にメジャーデビューを果たしたシユイのブレイクや、第1回「ウタカツ！」で準ブランプリを受賞して以降、数多くのテレビアニメの主題歌を担当しているhalca、メジャーデビューシングル「ドラマチックに恋したい」が10月よりスタートしたテレビアニメ『カノジョも彼女』Season2（MBS／TBS系）のオープニングテーマに決定したシンガーソングライターの小玉ひかりらの活躍も新体制の発足を後押しした。

　ちなみに新体制の名称の「MiCLOVER」は、マイクとLOVERを組み合わせた造語。ミュージックレインのコーポレートカラーの緑色を象徴するCLOVERも含まれているという。

　現在は、先の4人に加え、今年開催した「ウタカツ！3」で発掘されたsomeiを含め、計5人が所属。さらに同じく先のオーディションで見出された原石たちもデビューに向けて育成中だ。育成にあたっているチーフの江藤孝子氏は言う。

「ミュージックレインは、頻繁にオーディションを実施しているわけではないので、開催した際は、本当に力があり、将来性があり、スタッフが向かい合っていける人をセレクトさせていただき、時間をかけて育てていくという歴史があります。私は今、5組を担当していますが、誰が残るかというサバイバルではなく、それぞれの個性をきちんと出して、1人ひとり、音楽として成功させることが、本人たちにとっても、MiCLOVERを大きくしていくためにも大切だと考えています」（ミュージックレイン 音楽制作グループ MiCLOVERマネジメント部 チーフ 江藤孝子氏）

■顔を出しても出さなくても　こだわりはライブで表現できる人

　その言葉通り、MiCLOVERでは、「ボカロのみ、ネットのみなど、1つの色に偏るのではなく、幅広い色を揃えていきたい」と篠原氏は語る。MiCLOVERをミュージックレイン内の「ブランド」ではなく、「チーム」としている理由もここにある。そして、このチームが何よりこだわっているのは、ライブだ。

「僕をはじめ、マネジメント部部長の木村唯人も、チーフの江藤孝子も、3人とも長く音楽業界に身を置く中、常にライブに携わってきました。ミュージックレインで声優をマネジメントするようになってからも、歌って踊る声優の第1号であるスフィア、第2号のTrySailを作り上げたのは僕らです。僕らにはライブで自分を表現できる人を世に送り出したいという思いがある。今はビジュアルを出さないことを選択する人も多いですが、それでも同じようにライブにこだわり、バックアップ体制を整えていきたいと考えています」（篠原氏）

　MiCLOVERのそのこだわりとライブへの情熱を示す一歩として、来年1月には、フェスを開催する予定だ。マネジメント部部長の木村唯人氏は言う。

「MiCLOVERの全員が揃ったライブということで、MiCLOVERにとって記念すべき第一歩となります。今、まさに具体的に打ち合わせをしている最中です。シンガーソングライターの小玉ひかりやsomeiもいますので、「MiCLOVER FES.」のテーマソングを作ろうとか、ここでしか聞けないコラボを実現しようとか、アーティスト全員からいろいろなアイデアが出ています。アーティスト同士のつながりができることで、新たなケミストリーが生まれたり、今まで1人ではたどりつけなかったことができたり、さまざまなことが得られる機会にもなると思いますので、フェスを効果的に使って、新しいチャレンジにつなげていけたらと考えています」（ミュージックレイン 音楽制作グループ MiCLOVERマネジメント部部長 木村唯人氏）

　さらに江藤氏は、その先の展開について、こんな構想も抱いている。

「全員揃ったMiCLOVERの冠を持ったライブは続けていきたいと思っていますが、一堂に介したフェスを全大会とするならば、会場を小さくして、たとえば2組とか、今日はボカロ縛りとか、今日はシンガーソングライターまたはミックスのみとか、小さいライブも東京で並行してやっていけたらいいなと思っています。そして、それぞれにそれなりにお客様がついてご指示いただけるようであれば、名古屋や大阪などにも出向いて観ていただくことができるようになればと思い描いています」（江藤氏）

　世界を席巻する日本のアニメカルチャーをきっかけに、今、海外からも熱い注目を集めているアニソンとJ-POP。今後、MiCLOVERからどんな新たなムーブメントが生まれてくるのか、期待したい。

文・河上いつ子

＜イベント情報＞
「LAWSON premium event MiCLOVER FES.2024」
日時：2024年1月7日（日）
会場：Zepp Shinjuku（TOKYO）
出演：CHiCO、halca、シユイ、小玉ひかり、somei

MiCLOVER FES. 2024公式サイト：https://musicrayn.com/contents/micloverfes2024
ミュージックレイン公式サイト：https://musicrayn.com