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偶然か必然か 音楽活動2年余でふわり世界に飛び出した22歳アーティスト・imaseの軌跡

 軽やかな歌声が耳に心地良い、ダンサブルなナンバー「NIGHT DANCER」がアジアを中心に世界を席巻中だ。グローバルヒットの兆しも見えてきているという。歌っているのは岐阜出身の22歳、新世代アーティスト・imase。音楽制作を始めて1年足らずで楽曲がSNSで拡散し、あれよあれよという間にメジャーデビュー。ポカリスエットやJTのCMソング、ドラマ主題歌に次々に抜擢され、今週公開の漫画家・鳥山明の伝説の名作を映像化した、映画『SAND LAND』(8月18日(金)劇場公開)の主題歌も手掛けている。まさにシンデレラストーリーを地で行く彼は、SNS時代を象徴するアーティストである。ユニバーサルミュージックVirgin Musicのスタッフ3人のコメントをもとに、imaseの軌跡を振り返る。

岐阜出身の22歳、新世代アーティスト・imase

岐阜出身の22歳、新世代アーティスト・imase

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■ミーティングから約1ヶ月で契約 「彼だったら何か起こせるかも」期待感が後押し

 音楽シーンのメインストリームに颯爽と現れたimaseは2年前の2021年夏、1週間に1度のペースで、TikTokにショート動画を投稿していた。楽曲を制作しては投稿し、リスナーの反応を見ることの繰り返し。反響はあるが期待するほどの広がりとまではいかない状況は数ヶ月続いていた。振り返れば彼の音楽人生で、この頃がもっとも試行錯誤していた時期と言えるのかもしれない。

 初めて楽器を手にしたのは20年10月、20歳の時だった。友人を真似て初心者用のギターセットをネットで購入した。初めはギターを練習したが、そのうち作曲方法を検索して学ぶようになり、作曲ソフトなどの機材を購入して作曲を始めた。TikTokを楽曲の発表先に選んだのは、フル尺ではなくショートで投稿できる気軽さからだった。何よりも「自分もバズってみたい」という気持ちが強かった。できた曲は友人に好評で思いのほか再生数を稼いだという。そのうちの1本がある日、ユニバーサルミュージックVirgin Musicのマーケティング担当スタッフの目に留まった。

「日々の業務と並行して新人開発も手掛ける我々レーベルスタッフはTikTokも日常的にチェックしています。imaseの第一印象は「いい声だな」でした。ちょうどTikTokライブをやっていたので、同じレーベルの制作担当と一緒に見たのですが、その時の視聴者は我々を含めて4〜5人でした(笑)。彼の投稿は映像に自曲をのせて歌詞をつけるというスタイルなので、顔を見てみたいと思ったんです」

 見ているうちに、最初の「声がいい」という印象から、「面白い」「キャラクターがいい」「ビジュアルがいい」と加点されていったことを今でも強く覚えているという。早速連絡を取り、Zoomでミーティングしたのが21年5月。その時に、岐阜在住の20歳の青年で社会人として働いていること、音楽活動の経験は全くないというプロフィールを知った。

「彼だったら何か起こせるかも、そんな期待を持たせてくれる不思議な魅力があったので、上司に“契約したい”と相談していたのですが、今一つ上手く言葉で伝えらず、直接ミーティングに参加してもらうことにしました。その時の反応は、“何かある、面白いかもね”そんな感じだったと思います」(マーケティング担当)

ダンサブルなナンバー「NIGHT DANCER」アジアを中心に世界を席巻中

ダンサブルなナンバー「NIGHT DANCER」アジアを中心に世界を席巻中

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 コロナ前であればもう少し様子を見ようという判断に落ち着いたかもしれない。しかし現・所属レーベルのVirgin Musicは、その段階で契約を結ぶという決断をする。その背景には、コロナ禍で大きく変化した音楽シーンに対応するため、スピード重視に大きく舵を切ったレーベル方針があった。

「コロナ禍で音楽シーンは大きく変わりました、何もかもスピードが加速したのを感じ、新人発掘・育成もスピードアップすべきだということで、Virgin Musicでは契約アーティスト数を一気に増やす目標を掲げていました。かつては新しい才能に出会ったら、時間をかけて慎重に判断していましたが、スピーディーに判断する考え方に切り替えたのです。そしてチャンスを増やすには、若いスタッフにある程度を任せ、意思決定スピードを上げていくしかないんです」(ユニバーサルミュージックVirgin Music 制作統括)

 まずはチャレンジしてみる。上手くいかなければやり方を変え、やり直せばいいというのがVirgin Musicの基本姿勢であり、その考え方は、コロナ禍で一層明確になったという。しかし、そのスピード感は同社に限ったことではなかった。「ここで彼にいち早くコンタクトできたのは大きかった」(制作統括)と胸を撫でおろす通り、以後、imaseには他レーベルから同様の問い合わせが入っている。新人発掘がいかに熾烈でスピード勝負になっているかがわかるエピソードだ。

■オーディション応募がきっかけで全てが好転 メジャーデビューが生んだ幸運の連鎖

23年4月に韓国で開催されたショーケースの模様

23年4月に韓国で開催されたショーケースの模様

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 転機が訪れたのは21年秋に行われた、テレビ東京『〜夢のオーディションバラエティー〜Dreamer Z』の「TikTok弾き語りシンガードラマ主題歌オーディション」への応募だった。優勝者はテレビ東京のドラマ主題歌を歌う権利が獲得できるという内容で、MCは木梨憲武が務めた。応募方法は「#ドリーマーZ」をつけてTikTok に動画を投稿するだけ。そこでスタッフはimaseに参加を持ち掛ける。しかし、それまでの活動スタイルが顔出しや弾き語りを行っていなかったため、応募にはひと工夫必要だった。

「そんな時、imaseに「ドラムパッドを叩きながら歌うのは弾き語りですか?」って聞かれたのです。弾き語りの定義を調べたら“楽器を演奏しながら歌うこと”とあったので、早速顔出しして動画を投稿しました。それまでの音源は地声とファルセットをミックスしたものでしたが、この時からファルセット主体で歌うようにしたのは大きな変化でした」(制作担当)

 このあたりからいきなり風向きが変わったと3人は口を揃える。オーディション投稿動画がバズったことから、立て続けに他の曲も同じフォーマットで投稿したところ、いずれもバイラルヒットしてTikTok全体でもトレンド入り。見る見るうちに勢いが加速する中で彼らは決断する――「オーディションの結果を待たずにメジャーデビューさせよう」。デビュー作はコロナ禍で感じたことを歌にした「Have a nice day」。「TikTok弾き語りシンガードラマ主題歌オーディション」の一次審査で披露された楽曲だ。急きょレコーディングされ、12月19日に配信リリースされた。

「どんどん外に出していくほうが良いと判断しました。それは、その数ヶ月前にVirgin Musicからメジャーデビューしたmeiyo(メイヨ―)の成功例が影響しています。10年以上音楽活動を行い、何をやってもうまくいかなかった彼が、開き直って作った「なにやってもうまくいかない」がSNSを中心に大反響となり、30歳にしてメジャーデビューしたわけですが、その際にデビューに至る経緯がいろんなメディアに取り上げられました。それもあり、imaseのシンデレラストーリーもメディアの注目を集めると思ったのです」(制作統括)

 その読み通りimaseの快進撃は多くのメディアで取り上げられることになった。そしてメジャーデビューと同時にさらなる幸運をたぐり寄せる。22年春の「ポカリスエット」新CMの主題歌(「Pale Rain」)に大抜擢されたのだ。起用された理由は、彼の未完成な才能が、ポカリの世界観に通じるものがあるというものだった。CMキャスティングのタイミングでバズっていたimaseの投稿動画をCMスタッフが目にしたことがきっかけというのだから、なんという強運であろうか。

今年6月末にはタイでショーケースを開催

今年6月末にはタイでショーケースを開催

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■「NIGHT DANCER」のグローバルヒット 韓国・タイでショーケース開催

 そして22年8月、彼のキャリアを決定づける重要な楽曲、「NIGHT DANCER」が配信リリースされる。TikTokにショートを投稿し、反応が良いものをフル尺に仕上げてリリースするのが制作スタイルで、22年に入り集中して楽曲制作していた彼は、5月から順に投稿を始めていく。「NIGHT DANCER」投稿直後は目立った盛り上がりはみせなかったが、1ヶ月ほどすると次々にダンス動画が投稿される事態となっていた。再生数に弾みがついたのは秋口に投稿された韓国アーティストStray Kidsのダンス投稿だった。年末には22年に流行った曲として様々な動画に使われ、海外にも飛び火し、年明けから韓国のインフルエンサーがきっかけとなり韓国のSNSユーザーを中心に人気が広がっていく。その後ATEEZらがダンスを披露したことで勢いが一気に加速、2月には、J-POPとしては初めて、韓国大手配信サイト「Melon」TOP100チャート(最高位17位)にランクインする事態に発展する。

 その盛り上がりを受けて4月、imaseは渡韓してショーケースを開催している。街を歩いていて声をかけられ、韓国で本当に流行っていることを体感したという。

「急きょ決まったのですが、本当に時間がない中、UNIVERSAL MUSIC KOREAがスケジュールを組み立ててくれました。韓国の皆さんが喜ぶ様子を直に見て、本人やその楽曲がさらに愛される状況を作ることができたと実感しました。その後、6月末にはタイにも行きました。タイでShazamチャート2位になり、UNIVERSAL MUSIC THAILANDがショーケースをやろうと声をかけてくれたのです。短時間で実現できたのは当社がグローバルミュージックカンパニーであるからで、今回の一連の流れによってそのアドバンテージを改めて思い知りました」(制作統括)

 そういった海外の熱を国内に伝えるため、5月からはTV音楽番組でのパフォーマンスを解禁。5月1日のTBS『CDTVライブ!ライブ!』2時間スペシャルでの「NIGHT DANCER」初パフォーマンスを皮切りに、主要音楽番組に次々に出演していった。そんな最中、5月末にBTSメンバーのJUNG KOOKが公式ファンコミュニティサービスで歌を披露したところ、すさまじい反響を呼び、ストリーミング再生数が一気に跳ね上がっていった。

8月18日(金)劇場公開の映画『SAND LAND』主題歌「ユートピア」MV 映画主題歌の書き下ろしはimase自身初

8月18日(金)劇場公開の映画『SAND LAND』主題歌「ユートピア」MV 映画主題歌の書き下ろしはimase自身初

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■何かが起きたら即リアクション 成功体験が成長スピードを倍速に

「偶発的に起きることを予測することはできませんが、何か起きた時に、すぐ次の手を打つことが重要です。例えば、JUNG KOOKさんの時もそうです。生配信は深夜を回っていましたが、imaseが驚いた顔の写真とともに文章をアップしました。リアクションすることで、相手ファンにも喜んでもらえますし、何よりも盛り上がります」(マーケティング担当)

 この2年、下地作りを行い、何か起きたらすぐ反応する、その繰り返しだったという。5月にTV音楽番組に集中的に出演してimase本人と「NIGHT DANCER」の認知を拡大していたからこそ、JUNG KOOKの歌唱による爆発的な盛り上がりを誘引できたわけだ。そして、そういった下地作りを行う上で、同社の様々なヒット事例の成功体験が活かされているようだ。

「BTSがグローバルスターになっていく過程をつぶさに見ることができたことや、ネットでバズが生まれたときのAdoの対応などの経験の蓄積が次のヒットにつながっていると思います。百発百中は無理ですが、その確率を高めることはできると思っています」(制作統括)

 さらりとメインストリームに踊り出たimase。この先も主題歌「ユートピア」を手掛けた映画『SAND LAND』の公開(8月18日)、ガールズグループLE SSERAFIMの日本2ndシングル「UNFORGIVEN」(8月23日発売)に収録の日本オリジナル曲「ジュエリー (Prod. imase)」を楽曲提供(作詞・作曲・プロデュース)するなど話題は満載だ。音楽活動3年目、伸びしろしかない彼は、楽しんで作った音楽でこれからも、国境や言語もふわりと飛び越えていくに違いない。

クールだが表情豊かなimaseやバンドメンバーと総勢30名の無邪気な子どもたちとのコラボが楽しい「ユートピア」MV

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文・葛城博子

■imase プロフィール
岐阜出身の22歳の新世代男性アーティスト。音楽活動開始わずか1年で、TikTokで楽曲をバイラルさせ2021年12月にメジャーデビュー。22年にはCM主題歌やドラマタイアップにも大抜擢されるなど今ティーンから絶大なる人気を得ている。「NIGHT DANCER」は韓国配信サイト“Melon”でJ-POP初のTOP20入りを果たし、SpotiifyバイラルチャートTOP50に31ヶ国でランクイン。23年3月30日には初の有観客ライブ『POP OVER』は追加公演共にチケットが即完売。夏フェスにも続々と出演が決定し、今秋には自身初のツアー『imase Tour 2023 “Utopia”』の開催も決定している。

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