昨年2022年10月に、グレープとしてレコード・デビューしてから50周年を迎えたさだまさし。さだと吉田政美によるフォーク・デュオ、グレープは、わずか3年間の活動期間ながら、抒情性豊かで文学的な香りのする楽曲を次々に発表し、日本のフォーク史に大きな足跡を残した。そのグレープが昨年11月3日に、東京・神田共立講堂で『GRAPE 50年坂 一夜限りのグレープ復活コンサート』を開催。今年23年2月には、アニバーサリーイヤーを飾る1枚として、実に47年ぶりとなるグレープのオリジナルアルバム『グレープセンセーション』(2月15日)を発売した。「精霊流し」「無縁坂」「縁切寺」の代表3曲のセルフカバーを含む全10曲を収録した同作は、50年目にして初の試みとなる“さだまさし作詞・吉田政美作曲”という共作楽曲「花会式」も収録された意欲的な1枚となった。
■豪華ゲスト陣も話題『なつかしい未来』さだの世界観と多彩なサウンドの融合が秀逸
そして早くも6月14日には、アニバーサリーイヤーの第2弾として、さだの44作目のソロオリジナルアルバム『なつかしい未来』がリリースされる。76年に初のソロアルバム『帰去来』を発表して以来、ほぼ毎年1枚のペースでアルバムを発表し続けているさだは、日本の音楽シーンでも類を見ない、多作で多忙なアーティストであることは、誰もが知るところ。ことにここ数年は、21年春にセルフカバー集『さだ丼〜新自分風土記III〜』、同年秋にフォークの名曲カバー集『アオハル49.69』、22年春に43作目のソロオリジナルアルバム『孤悲』を発表、加えて前述のグレープとしての活動も相まって、驚異的なハイペースで作品を発表している。
最新作『なつかしい未来』は、常に温かい眼差しで人間を見つめるさだの世界観と多彩なサウンドの融合が秀逸なアルバムに仕上がっている。盟友である作曲家・渡辺俊幸がアレンジ、指揮を執っており、冒頭のインスト曲「序曲「未来へ」〜さだまさしに捧ぐ〜」では、作曲にも参加。フォークグループ“赤い鳥”のドラマーからキャリアをスタートさせ、ハミング・バードを経て、さだのソロ・デビュー以来の音楽プロデューサー、アレンジャーとして活躍してきた渡辺からの、敬意のこもった流麗なナンバーとなっている。さらにこの楽曲にはピアニストの清塚信也も参加、その美しいピアノの音色を存分に堪能することができる。
7曲目「マイアミの歓喜もしくは開運〜侍ジャパンと栗山英樹監督に捧ぐ〜」では、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表チームの監督を務めた栗山英樹が、コーラスとセリフで友情出演している。2人の出会いは、栗山の現役選手時代にさかのぼる。92年に栗山がCDデビューする際には、さだが作詞作曲した「好敵手/それぞれの旅」を提供するなど、長らく親交を深めてきた。今回は、NHKの生放送トーク番組『今夜も生でさだまさし』に出演した栗山監督に、直々にオファーしたことで共演が実現した。サンバのリズムに乗せた軽やかなこの応援ソングには、多くの日本人が今回のWBC優勝に歓喜した素直な心情が投影されており、市井の人々の思いを歌で綴る、さだの変わらぬ音楽への姿勢や日本人への視線も垣間見ることができ、深い感動を呼び起こすナンバーに仕上がっている。
それは「マイアミの歓喜〜」に限ったことではない。軽やかなライト・ファンク調の「ドレスコード」では、鋭い社会風刺的な視線で現代のSNS社会を憂い、8ビートのロック・テイストが強いナンバー「愛によって」では、愛と人生を深い洞察力ある言葉で歌い上げる。グレープ時代を彷彿させるような哀しみに満ちたメロディアスな「中秋無月」は、アコースティックなトーンに日本語の響きがマッチした美しい調べが印象的だ。そして、ラストの大作「なつかしい未来」には、音楽キャリアを積み上げてきたミュージシャンとしての偽らざる心情が映し出されている。
■全国ツアーで展開される冒険心に溢れたステージ 枯れることのアイデア、旺盛な行動力
レコーディングメンバーは、ドラムの島村英二、ピアノの倉田信雄、アコースティック・ギターの田代耕一郎ら、これまでのさだの楽曲、及びステージを支えてきた工務店メンバーが今回も勢揃いし、さらには数多くのアーティストのライブ、レコーディングにギタリストとして参加する遠山哲朗が随所に鋭いプレイを聴かせて、デビュー50年を飾るにふさわしいアルバムを盛り上げている。
尚、初回限定盤には、前述のグレープ復活コンサートのダイジェスト、さらに漫画家・イラストレーターとして活躍するなかはらかぜ氏により制作された人気曲「主人公」のアニメーションムービーや、アニメーション作家・今津良樹氏制『ペンギン皆きょうだい2020(short edit version』『孤悲(アルバムトレーラー)」両アニメーションムービーも収録されている。
また、7月12日には、メモリアル・イヤー第3弾作品として、昨年のコンサートツアー『さだまさしコンサートツアー2022〜孤悲〜』のライブ・アルバムと映像作品(Blu-ray&DVD)のリリースも決まっている。コロナ禍で迷いが生じ、上手く歌作りができなくなっていたさだが、ロシアのウクライナ軍事侵攻で覚醒し、平和を祈って作り上げた前作アルバム『孤悲』。歌われた全14曲中、半分をアルバムから披露し、ファンの間でも話題となった同ツアーの模様が、冴えわたるトークと共に収録されている。
アルバム発売日からは、大阪フェスティバルホールから待望の全国コンサートツアーもスタート。今回のツアーは、東京、大阪、名古屋の公演では、4公演ずつ全く異なる内容のコンサートを開催するというアグレッシブなものになっている。「一夜 グレープナイト」と名付けられた初日は、50年目のグレープの2人で、往年の名曲から新作までを披露、「二夜 工務店ナイト」では、お馴染みのツアーバンド、さだ工務店とともに楽しいステージを繰り広げ、「三夜 管もナイト」では、さだ工務店に管楽器を加えた華やかできらびやかなステージが予定されており、「四夜 弦もナイト」はさだ工務店&ストリングスによるバラードをたっぷり聴かせるという驚愕のメニューだ。22年には通算4500本を達成し、単独のアーティストとしては前人未到の公演記録を誇るさだならではの、意欲的かつ冒険心に溢れたステージが展開される。
半世紀に及ぶ音楽活動を経てもなお枯れることないアイデア、そして旺盛な活動には頭が下がるとともに、その音楽表現のさらなる進化に、大いに期待したくなる。この機会にぜひ、51年目からの新たな展開を期待させる新作アルバム、そしてミュージシャンの信念が詰まったライブ作品に触れてみてはいかがだろうか。
文・馬飼野元宏
■リリース情報
さだまさし 44thニューアルバム『なつかしい未来』
6月14日リリース
初回限定盤(CD+DVD):VIZL-2187/税込5500円
通常盤(CDのみ):VICL-65819/税込3850円
【CD収録曲】
01. 序曲「未来へ」 〜さだまさしに捧ぐ〜
02. はてしない恋の歌
03. 夢の街
04. ドレスコード
05. 昭和から
06. わたしはあきらめない
07. マイアミの歓喜もしくは開運 〜侍ジャパンと栗山英樹監督に捧ぐ〜
08. 愛によって
09. 中秋無月
10. 私の小さな歌
11. なつかしい未来
【初回限定盤 DVD収録曲】
■22年11月3日に神田共立講堂で開催された『一夜限りのグレープ復活コンサート』からトークを中心に編集されたダイジェスト版を収録
■「主人公」「ペンギンみなきょうだい 2020」「孤悲しい」(アルバムトレーラー)収録
ライブ作品『さだまさしコンサートツアー2022〜孤悲〜』
2023.07.12 発売
CD(2枚組):VICL-65836〜65837/税込4950円
Blu-ray:VIXL-414/税込8800円
DVD:VIBL-1096/税込7700円
【CD収録曲】
<Disc1>
01. 偶成
02. 抱擁
03. 破
04. トーク1)こんばんはさだですよ!
05. パンプキン・パイとシナモン・ティー
06. 道化師のソネット
07. 療養所
08. トーク2)エレクトーン「ハイ!」事件 2022バージョン
09. さだ工務店のテーマ2020
<Disc2>
01. トーク3)ウクライナ侵攻
02. キーウから遠く離れて
03. フレディもしくは三教街−ロシア租界にて−
04. トーク4)グレープのニューアルバム制作中です
05. 詩人
06. 舞姫
07. トーク5)太宰府天満宮の鷽替え神事
08. 鷽替え
09. 孤悲
10. 歌を歌おう
【Blu-ray/DVD収録曲】
01. 偶成
02. 抱擁
03. 破
04. パンプキン・パイとシナモン・ティー
05. 道化師のソネット
06. 療養所
07. さだ工務店のテーマ2020
08. キーウから遠く離れて
09. フレディもしくは三教街−ロシア租界にて−
10. 詩人
11. 舞姫
12. 鷽替え
13. 孤悲
14. 歌を歌おう
■豪華ゲスト陣も話題『なつかしい未来』さだの世界観と多彩なサウンドの融合が秀逸
そして早くも6月14日には、アニバーサリーイヤーの第2弾として、さだの44作目のソロオリジナルアルバム『なつかしい未来』がリリースされる。76年に初のソロアルバム『帰去来』を発表して以来、ほぼ毎年1枚のペースでアルバムを発表し続けているさだは、日本の音楽シーンでも類を見ない、多作で多忙なアーティストであることは、誰もが知るところ。ことにここ数年は、21年春にセルフカバー集『さだ丼〜新自分風土記III〜』、同年秋にフォークの名曲カバー集『アオハル49.69』、22年春に43作目のソロオリジナルアルバム『孤悲』を発表、加えて前述のグレープとしての活動も相まって、驚異的なハイペースで作品を発表している。
最新作『なつかしい未来』は、常に温かい眼差しで人間を見つめるさだの世界観と多彩なサウンドの融合が秀逸なアルバムに仕上がっている。盟友である作曲家・渡辺俊幸がアレンジ、指揮を執っており、冒頭のインスト曲「序曲「未来へ」〜さだまさしに捧ぐ〜」では、作曲にも参加。フォークグループ“赤い鳥”のドラマーからキャリアをスタートさせ、ハミング・バードを経て、さだのソロ・デビュー以来の音楽プロデューサー、アレンジャーとして活躍してきた渡辺からの、敬意のこもった流麗なナンバーとなっている。さらにこの楽曲にはピアニストの清塚信也も参加、その美しいピアノの音色を存分に堪能することができる。
7曲目「マイアミの歓喜もしくは開運〜侍ジャパンと栗山英樹監督に捧ぐ〜」では、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表チームの監督を務めた栗山英樹が、コーラスとセリフで友情出演している。2人の出会いは、栗山の現役選手時代にさかのぼる。92年に栗山がCDデビューする際には、さだが作詞作曲した「好敵手/それぞれの旅」を提供するなど、長らく親交を深めてきた。今回は、NHKの生放送トーク番組『今夜も生でさだまさし』に出演した栗山監督に、直々にオファーしたことで共演が実現した。サンバのリズムに乗せた軽やかなこの応援ソングには、多くの日本人が今回のWBC優勝に歓喜した素直な心情が投影されており、市井の人々の思いを歌で綴る、さだの変わらぬ音楽への姿勢や日本人への視線も垣間見ることができ、深い感動を呼び起こすナンバーに仕上がっている。
それは「マイアミの歓喜〜」に限ったことではない。軽やかなライト・ファンク調の「ドレスコード」では、鋭い社会風刺的な視線で現代のSNS社会を憂い、8ビートのロック・テイストが強いナンバー「愛によって」では、愛と人生を深い洞察力ある言葉で歌い上げる。グレープ時代を彷彿させるような哀しみに満ちたメロディアスな「中秋無月」は、アコースティックなトーンに日本語の響きがマッチした美しい調べが印象的だ。そして、ラストの大作「なつかしい未来」には、音楽キャリアを積み上げてきたミュージシャンとしての偽らざる心情が映し出されている。
■全国ツアーで展開される冒険心に溢れたステージ 枯れることのアイデア、旺盛な行動力
レコーディングメンバーは、ドラムの島村英二、ピアノの倉田信雄、アコースティック・ギターの田代耕一郎ら、これまでのさだの楽曲、及びステージを支えてきた工務店メンバーが今回も勢揃いし、さらには数多くのアーティストのライブ、レコーディングにギタリストとして参加する遠山哲朗が随所に鋭いプレイを聴かせて、デビュー50年を飾るにふさわしいアルバムを盛り上げている。
尚、初回限定盤には、前述のグレープ復活コンサートのダイジェスト、さらに漫画家・イラストレーターとして活躍するなかはらかぜ氏により制作された人気曲「主人公」のアニメーションムービーや、アニメーション作家・今津良樹氏制『ペンギン皆きょうだい2020(short edit version』『孤悲(アルバムトレーラー)」両アニメーションムービーも収録されている。
また、7月12日には、メモリアル・イヤー第3弾作品として、昨年のコンサートツアー『さだまさしコンサートツアー2022〜孤悲〜』のライブ・アルバムと映像作品(Blu-ray&DVD)のリリースも決まっている。コロナ禍で迷いが生じ、上手く歌作りができなくなっていたさだが、ロシアのウクライナ軍事侵攻で覚醒し、平和を祈って作り上げた前作アルバム『孤悲』。歌われた全14曲中、半分をアルバムから披露し、ファンの間でも話題となった同ツアーの模様が、冴えわたるトークと共に収録されている。
アルバム発売日からは、大阪フェスティバルホールから待望の全国コンサートツアーもスタート。今回のツアーは、東京、大阪、名古屋の公演では、4公演ずつ全く異なる内容のコンサートを開催するというアグレッシブなものになっている。「一夜 グレープナイト」と名付けられた初日は、50年目のグレープの2人で、往年の名曲から新作までを披露、「二夜 工務店ナイト」では、お馴染みのツアーバンド、さだ工務店とともに楽しいステージを繰り広げ、「三夜 管もナイト」では、さだ工務店に管楽器を加えた華やかできらびやかなステージが予定されており、「四夜 弦もナイト」はさだ工務店&ストリングスによるバラードをたっぷり聴かせるという驚愕のメニューだ。22年には通算4500本を達成し、単独のアーティストとしては前人未到の公演記録を誇るさだならではの、意欲的かつ冒険心に溢れたステージが展開される。
半世紀に及ぶ音楽活動を経てもなお枯れることないアイデア、そして旺盛な活動には頭が下がるとともに、その音楽表現のさらなる進化に、大いに期待したくなる。この機会にぜひ、51年目からの新たな展開を期待させる新作アルバム、そしてミュージシャンの信念が詰まったライブ作品に触れてみてはいかがだろうか。
文・馬飼野元宏
■リリース情報
さだまさし 44thニューアルバム『なつかしい未来』
6月14日リリース
初回限定盤(CD+DVD):VIZL-2187/税込5500円
通常盤(CDのみ):VICL-65819/税込3850円
【CD収録曲】
01. 序曲「未来へ」 〜さだまさしに捧ぐ〜
02. はてしない恋の歌
03. 夢の街
04. ドレスコード
05. 昭和から
06. わたしはあきらめない
07. マイアミの歓喜もしくは開運 〜侍ジャパンと栗山英樹監督に捧ぐ〜
08. 愛によって
09. 中秋無月
10. 私の小さな歌
11. なつかしい未来
【初回限定盤 DVD収録曲】
■22年11月3日に神田共立講堂で開催された『一夜限りのグレープ復活コンサート』からトークを中心に編集されたダイジェスト版を収録
■「主人公」「ペンギンみなきょうだい 2020」「孤悲しい」(アルバムトレーラー)収録
ライブ作品『さだまさしコンサートツアー2022〜孤悲〜』
2023.07.12 発売
CD(2枚組):VICL-65836〜65837/税込4950円
Blu-ray:VIXL-414/税込8800円
DVD:VIBL-1096/税込7700円
【CD収録曲】
<Disc1>
01. 偶成
02. 抱擁
03. 破
04. トーク1)こんばんはさだですよ!
05. パンプキン・パイとシナモン・ティー
06. 道化師のソネット
07. 療養所
08. トーク2)エレクトーン「ハイ!」事件 2022バージョン
09. さだ工務店のテーマ2020
<Disc2>
01. トーク3)ウクライナ侵攻
02. キーウから遠く離れて
03. フレディもしくは三教街−ロシア租界にて−
04. トーク4)グレープのニューアルバム制作中です
05. 詩人
06. 舞姫
07. トーク5)太宰府天満宮の鷽替え神事
08. 鷽替え
09. 孤悲
10. 歌を歌おう
【Blu-ray/DVD収録曲】
01. 偶成
02. 抱擁
03. 破
04. パンプキン・パイとシナモン・ティー
05. 道化師のソネット
06. 療養所
07. さだ工務店のテーマ2020
08. キーウから遠く離れて
09. フレディもしくは三教街−ロシア租界にて−
10. 詩人
11. 舞姫
12. 鷽替え
13. 孤悲
14. 歌を歌おう

2023/06/16