オリコンニュース

反田恭平「ウィーン・フィルを目指す」オーケストラ運営の道のり ピアニストから指揮者へ、止まない挑戦

 2021年10月、『第18回ショパン国際ピアノコンクール』で日本人としては半世紀ぶりに2位を獲得、一躍その名を世に広めたピアニスト・反田恭平(28)。彼は今、指揮者として新たなキャリアを踏み出している。しかも、既存の楽団ではなく、自ら組織したオーケストラを率いて。これまでも、並外れた行動力と天賦の才で型破りな夢を形にしてきた反田は、自身が携わる「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」の目指す姿を「ウィーン・フィル」のように自分たちで音・文化を作っていくオーケストラにしたいと力説する――。

取材に応じた反田恭平

取材に応じた反田恭平

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全4枚)


 反田を中心に創設されたJNOは、日本の管弦楽団史上、珍しく株式会社化を実現したオーケストラ。彼の志に共鳴する気鋭の演奏家らが、“社員”として音楽活動に邁進している。今年は2月から反田と全国ツアーをまわっており、今回はゲネプロ直前に反田へのインタビューを敢行した。

ツアーをサポートするBMWは“推し”のブランド 「i7」との撮影にご満悦の反田恭平

ツアーをサポートするBMWは“推し”のブランド 「i7」との撮影にご満悦の反田恭平

写真ページを見る

――今ツアーのプログラムはショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番(反田の弾き振り)と、マーラーの交響曲第1番『巨人』の室内楽版。若い演奏家のエネルギーを感じる選曲ですが、この2曲をこのタイミングで選んだ狙いを教えてください。

ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲はいずれやりたいと思っていました。まず、編成が管楽器はソリストのトランペット以外いないので移動経費もかからないですし(笑)。そして、弦楽5部(ヴァイオリン1st・2nd、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)でより演奏回数を重ねることによって、チームアンサンブル感を出したかった。

ショスタコーヴィチのコンチェルトとなると、モーツァルトやベートーヴェンなどと全く違って、(合わせるポイントを)皆で「はいっ、ここです」とやるより、各々の瞬発力やセンスが問われるので、本当に優秀なメンバーがいる時しかできない。なので、我々だったらできるだろうということで選曲を決断しました。

マーラーに関しては、僕が今ウィーンで勉強しており、ウィーンにゆかりある作曲家をショパン・コンクール後に勉強したいと思っていたので、その中の一人として選びました。残念ながら僕の先生は昨年末に亡くなってしまったのですが、生前マーラーについて教えて下さったことの記憶を辿り、ずっとレッスンもビデオに撮っていたので、それを見返しながら今回臨んでいます。

今回の「室内オーケストラ版」は、(原曲で)ホルン7本のところ2人でやっていたり、半分以下の編成になっていたり、非常にトリッキーです。みんなが原曲から各々のパートを入れ替えているので、非常に面白い企画だと思いました。

取材に応じた反田恭平

取材に応じた反田恭平

写真ページを見る

――ご自身の中でピアノと指揮、音楽づくりのアプローチで違う点・共通する点は何でしょうか。

これが不思議と似ているんです。指揮でも、自分のイメージを最も伝えられる方法として、やはり頭のなかでピアノを弾きます。もっと大きく言うと、頭の中で“オーケストラを弾く”。これは相当大変です。でも、そうやって頭の中で演奏できると団員にもニュアンスが伝わる。なので、やっていることとしてはピアノも指揮もあまり変わらないです。

ただ、指揮に関して難しい点を挙げるなら、自分で演奏しないので、一瞬でも邪念が浮かぶとオケのメンバーに伝わってしまうこと。なので、集中力を絶対に切らさないようにして、アイコンタクトで「僕を見ろ」「僕を信じてくれ」と引っ張る力は指揮者に絶対必要ですよね。

――JNOはこれからどんなオーケストラになっていくのでしょうか? 今後のビジョンを教えてください。

僕としては今、自分がウィーンにいるというのもあるのですが、特段にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が好きで、彼らの在り方というのを目指していきたいと思っています。彼らは完全なる自主運営の形をとっていて、元は歌劇場(=ウィーン国立歌劇場)のグループからオーディションを経てウィーン・フィルというものが出来上がっている。我々も将来的にはそういう形をとりたいと思っています。改めてウィーン・フィルの団員さんと話させてもらう機会も頂きまして、彼らがどういったシステムで楽団を運営しているのかなど、直接言葉で聞けたことは非常に勉強になりました。

ピアノ弾き振りでJNOと共演した反田恭平

ピアノ弾き振りでJNOと共演した反田恭平

写真ページを見る

――JNOは、若い演奏家を支援するという設立理念からして、クラシック音楽界の未来を担う使命を帯びていると思います。メンバーたちと活動する中で見えてきた、クラシック界の課題などはありますか?

もう1周、2周、3周まわっての結論になるのですが、結局は「純粋に音楽を楽しもう」ということに限ると考えています。

やはり、“職業的な日々”というのはどこの世界にもありますが、例えばこのリハにだけ集中して1ヶ月後に本番、終われば解散、という流れはやはり僕は好きじゃない。全身全霊で取り組んで素晴らしい音楽を奏でたいし、「こんなものかな」と指揮者もオーケストラも妥協が生じてしまうのは良くない。

だからこそ我々は、メンバーとしても苦しい日程でリハーサルを設けているのですが、3日間やって1日あたり6コマ、7コマ、合計8時間くらいの拘束になってしまいます。かつ今回のツアーでは佐渡裕さんもマーラーで指揮を振られますし、僕も振るので、自分のときには「佐渡さんが振ったこと一回忘れてください、僕のマーラーをやります」ということを団員に言わないといけない。

なので、メンバーとしては大変で、なんでこんな日程なんだと思う感情も出てくるかもしれない。でも、そういう環境でこそ生まれる音というのもあるし、そこから本番を迎えて「やっぱり楽しいよね」っていう感覚が出てきた瞬間は何ものにも代えがたくて、それこそが妥協せず「音楽をやっている」ということだと思うんです。

今この時間も、他のメンバーたちはメンバーミーティングをやっていて、どうすればJNOがより良くなるかを話し合ってくれています。それこそ、僕が思うウィーン・フィルのような形、メンバー自身がオーケストラの将来を考え、こうしていこうと決めていく、自主性のあるオーケストラの姿なのです。そこが他のオーケストラとは違うところなのかもしれないですよね。

――自主性というものがクラシック界の未来にもつながっていく?

そうですね。自分たちで動かないとわからない景色もきっとあると思います。少し話は戻りますが、結局は純粋に音楽を楽しんで演奏できる場を僕は作りたいだけ。それだけなんです。

関連写真

  • 取材に応じた反田恭平
  • ツアーをサポートするBMWは“推し”のブランド 「i7」との撮影にご満悦の反田恭平
  • 取材に応じた反田恭平
  • ピアノ弾き振りでJNOと共演した反田恭平

オリコントピックス

求人特集

求人検索

メニューを閉じる

 を検索