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若い世代も惹きつけるZARDの世界観 サブスク解禁で歌詞の魅力再発見

 「揺れる想い」「負けないで」…歌い継がれているZARDの名曲の数々。これまでストリーミング配信が待たれていたが、9月15日についに全楽曲が解禁された。全シングル(45作)、全アルバム(11作)、全ベストアルバム(セレクションアルバム含め9作)に収録されているバージョン違いなども含めた全389曲。このタイミングに、これまでにリリースされた10枚のオリジナルアルバムのリマスター盤もリリースされる。ZARDデビュー30周年という記念すべき年の、このサプライズプレゼントは、コロナ禍の閉塞感に満ちた空気を和らげ、人々の心に潤いを与えるのではないだろうか。

ZARDついに全楽曲をサブスク解禁

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■口ずさめる楽曲の多さ 記録だけでなく記憶にも刻まれているZARDの歌

 1991年に活動をスタートした音楽ユニット・ZARD。その翌年9月に発表されたアルバム『HOLD ME』が初登場2位をマークして以来、「負けないで」「君がいない」「揺れる想い」「もう少し あと少し…」「きっと忘れない」(いずれも93年)と立て続けにシングルヒットを飛ばして、ランキング上位を定位置とした。アルバムはリリースの度にミリオンヒットを記録し、その数は9作に及ぶことからも、当時、いかに絶大な人気を博していたかがわかるだろう。

 90年代を席巻したZARDの歌の数々は、記録としてだけでなく、記憶にも深く刻まれている。例えば、毎年開催される日本テレビ『24時間テレビ』の定番曲となった「負けないで」は、今や頑張る人に向けた “応援歌”のスタンダード・ナンバーとして、人々の日常に浸透している。また、清涼感ある歌声とメロディーがCM映像とともに今も鮮やかによみがえる「揺れる想い」、楽曲とストーリーのマッチングで多くのファンを獲得したアニメ『スラムダンク』のテーマ曲「マイ フレンド」(96年)、アニメ『名探偵コナン』のTV版や劇場版を彩った計9作の楽曲、「運命のルーレット廻して」(98年)や「グロリアス マインド」(08年)など、思わず口ずさめてしまう楽曲が意外に多いというのも、ZARD楽曲の凄みと言えるのではないだろうか。

 そうやって多くの楽曲が歌い継がれていることにより、ボーカルの坂井泉水がこの世を去って14年が経過した今も新たなファンを獲得しており、そのなかには、10代・20代の若年層も含まれている。

■アニメがきっかけ 国内外で若い世代も新たなファンに

 今年8月にZARDに関するアンケート調査を実施したところ、その認知率は91.3%と9割を超える高さであった。そして認知者のうちの約6割が「とても好き・好き」と回答しており、ZARDの好感の高さが改めて浮き彫りになった。その好感者(2333人)を世代別に見ると、90年代の活躍を目の当たりにした世代(40代・50代以上)が72.2%と約7割を占めたが、30代で16.0%、10代・20代で11.8%と1割を超えた。

 ZARDを認知するきっかけは世代によって異なり、40代・50代が、楽曲が起用されたドラマやCM、また音楽番組出演の視聴の割合が高いのに対して、10代〜30代は『名探偵コナン』や『スラムダンク』といったアニメ視聴の割合が高い。このほか、10代・20代は前出の『24時間テレビ』、学校の運動会やマラソン大会で流れて認知した層や、「友人・家族の口コミ」の影響を受けている層などが一定数存在することもアンケート調査からわかった。

 年代によって好きな楽曲にも若干の違いがあった。全体、そして各世代ともに「負けないで」「揺れる想い」がTOP2を占めたのは共通しているが、アニメ視聴が認知のきっかけとなった10代〜30代では、「運命のルーレット廻して」が上位に入ってくる。アニメ『名探偵コナン』とともに育ってきたので思い入れがあるというコメントが多く見受けられた。

「コナンのエンディング曲。カラオケなどで歌うほど好き」(10代女性)、「コナンの曲で一二を争うほどの名曲だと感じる」(10代男性)、「ZARDと認識した初めての曲で、コナンの映像とともに今も鮮明に思い出す」(20代女性)、「生まれる前だが、コナンを観ていてこの曲を知った。坂井さんの歌声が良い」(20代男性)、「学校からの帰り道に友達みんなで熱唱した思い出がある」(30代女性)、「じっくり聴いてみたらその凝ったアレンジにハマってしまった」(30代男性)

 また、40代はアニメ『スラムダンク』をリアルタイムに視聴した世代であることもあり、テーマ曲であった「マイ フレンド」の割合が高いのも特徴的であった。

「とても元気がでる曲で、そのときの友達を大切にしようと思いながら聴いていた」(40代女性)、「最高な曲。この曲を聴くと学生時代のことが思い出される」(40代男性)

 アニメ視聴をきっかけにZARDを知り、次第にその世界観にハマっていくという傾向は、何も国内に限ったことではない。『名探偵コナン』『スラムダンク』や『ドラゴンボール』(テーマ曲「Don’t you see!」)といったアニメは海外、とくにアジア(中国・台湾・韓国)で大きな人気を博している。再放送が繰り返されていることもあり、アニメはもちろんのことそのテーマ曲も広く浸透している。今年5月の坂井の命日には海外からも千通近くの献花メッセージが寄せられ、そのうちの約半数が10代・20代の若年層であった。所属レコード会社・ビーインググループの担当者は、若い世代が新たにファンになっている理由について次のように分析する。

「坂井泉水の歌詞はアニメのテーマ曲であっても、子ども向けではなく大人にも響く内容になっています。子どもの頃に聴いて耳馴染みのある歌を大人になって聴くと、その歌詞の世界観に新たな発見があって、楽曲の受け止め方が変わってくるのだと思います、そうやってファンになっている人もいるのではないでしょうか」

 そういったシーンを鑑みれば、19年にZARDの作品に共鳴したトリビュートバンド・SARD UNDERGROUNDが誕生したのも頷けるというものだ。メンバー3人はいずれも20代で、ZARDを敬愛し、その良さを受け継ぎながら令和の時代に相応しいサウンドに再構築しようとしている。

■ストリーミング配信でZARDの歌がより一層身近な存在に

 今回のアンケート調査でZARDの魅力を尋ねたところ、透き通った歌声や瑞々しいメロディーに加え、聴く人にそっと寄り添ってくれるような歌詞の世界観を挙げる人が目立った。そういう意味でも、今回のストリーミング解禁は、歌詞の魅力を再発見する良い機会になると言えそうだ。

「歌声や曲はもちろん素敵で好きですが歌詞がめちゃくちゃ良くて心にとても響きます」(10代女性)、「大人になった今聴き返してみると、深い恋愛観を歌った歌詞もあり、また違った魅力に気づかされました」(30代女性)、「多くの人たちを勇気づけ、元気づけ、心の隙間を埋めてくれたと実感します」(40代男性)

 同日には過去に発表されたオリジナルアルバムのリマスター盤もリリースされる。中でもファンにとって朗報なのは、生産終了となっていた9枚目のアルバム『 時間(とき)の翼 』(01年)のリアレンジ盤のリリースだろう。ZARDのプロデューサーである長戸大幸氏の完全プロデュースにより20年の時を経て、収録曲を全て再編曲されている。

 リマスタリングを手がけたのは、デビュー当時からZARDのレコーディング、マスタリングエンジニアの島田勝弘氏。本作の出来栄えについて、長年ディレクターを務めた寺尾広氏は、「島田さんは今まで節目でマスタリングをやっていただきましたが、今回はやはり坂井泉水さんの歌声をしっかりとお届けしようという事で、より鮮明に歌が聴こえるよう音域の調整を行ったそうなので、新たな感覚で楽しめる内容に仕上がっています」と胸を張る。こちらも改めて魅力を再確認する機会となるのではないだろうか。

 ストリーミングで配信されることにより、より一層身近な存在になったZARDの歌が、様々なシーンで寄り添ってくれる。そう考えると、今の緊張した空気感も少し和らぐような気がしてくるから不思議だ。来年2月には“ZARD 30周年YEAR”を締めくくる有観客の特別記念ライブも決定している。坂井泉水の歌声と映像、バンドによる生演奏によって生み出される特別な空間でどんな新たな出合いがあるのか、今から楽しみだ。

文・カツラギヒロコ

<調査概要>
調査対象:OMR会員 10〜60代男女
調査期間:2021年8月11日〜8月18日
サンプル数:回答者全体 4283名 うち、ZARD好感者 2333 名が本調査対象
調査手法:インターネットWEBアンケート調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ

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