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緑黄色社会、嗜好が細分化する時代に最大公約数を目指す

 現在放映中のドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)の主題歌「sabotage」を歌う緑黄色社会。2012年の結成以来、着実に活動範囲を広げ、最近では大型フェスにも引っ張りだこで、今月8日から始まる全国ツアーでは、初のホール公演にも挑戦する。そんな彼らが満を持して放つメジャー初のシングルが、この「sabotage」。

手前からpeppe、小林壱誓、長屋晴子

手前からpeppe、小林壱誓、長屋晴子

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 彼らにとって、主題歌を担当するのは、『恋愛ドラマな恋がしたい』(Abema TV/2008年)、今年9月公開の映画『初恋ロスタイム』の「想い人」に続き、3回目だ。嗜好が細分化している今の時代に、「国民的な存在になりたい」といい、“お茶の間”というキーワードを大切にしている彼らの一風変わった結成秘話や、王道を目指すこと、そして、その目標の実現に大きく貢献するであろうドラマ主題歌担当について、メンバーの長屋晴子、小林壱誓、peppeの3人に語ってもらった。

■高校で顔を会わせる前からバンドを組む約束だった

 緑黄色社会は、同じ高校の軽音部だった長屋、小林、peppeが1年生の時に結成。そこに小林の幼なじみの穴見が加わることになるのだが、結成のいきさつが、かなりのレアパターンだ。
【長屋】私が中学生の時からバンドを組むのが夢で、軽音部がある高校を調べて受験したんです。で、メンバーが見つからなくてバンドが組めなくなるのは絶対イヤだったんで、受験前の時期にSNSで一緒にやれそうな人を探してて…。そしたら、「高校に入ったら軽音部に入りたい」って書いてた小林を見つけて、連絡してみたんです。だから、入学前…顔を合わす前から組むことが決まっていました。同じようにSNSで繋がってたpeppeとも、入学式で会って、バンドに誘って。つまり、友だちより先にバンドメンバーって関係だったんです。
【小林】バンドって共通項が無かったら、たぶん友だちになるはずがなかった3人ですね。
【長屋】仲が悪いんじゃなくて、それぐらい性格や考え方がバラバラなんです。

――じゃあ、誰かがその高校に落ちてたら、緑黄色社会はなかったんですね?
【長屋】そうです。peppeが、実は第一志望は別の学校だったんですけど、そこを落ちて(苦笑)、私達が受かった学校に入る事になったので、本当に奇跡の組み合わせなんですよ。
【peppe】そこが私の人生の分岐点です。結果的に、第一志望校に落ちて本当に良かったです!(笑)
【長屋】小林はSNSに「ギター&ボーカルがやりたい」って書いてて、私とドン被りだったんですけど、ボーカルは私がやるつもりで(笑)、誘ったんです。
【小林】僕も根拠はないけど、自分がボーカルになれるだろう、って思ってて(笑)。だから、メンバーに誘われたとき、OKしたところもありましたね。
【長屋】そんな感じで、音楽の趣味も特に尋ねたりしなかったし、peppeに関しても、「ピアノを長く習ってる」ってだけで誘っちゃったんです。とにかく、メンバーの確保が優先だったので…。

 全員が初めてのバンドで、手探り状態だったなか、バンドサウンドになじみがなく、クラシックピアノの奏法しか知らなかったpeppeは、とくに戸惑いや苦労が多かったという。
【peppe】クラシックピアノとバンドのキーボードって、同じ鍵盤でも全く違うんで、最初はどうしていいのかわからなすぎて、フラストレーションが溜まりまくってました。それまではテンポも表現も自分がやりたいように弾いてたのに、バンドでは他の人と合わせなきゃいけない―初めての経験だったから、それが全然できなくて…。でも、メンバーは理解してくれてて、私に対して否定的な事は一切言わないでいてくれたんです。クラシックで学んできた事をゼロにしなきゃいけないのか? って悩んだりもしたけど、それを持ち味として昇華するには…と考えるようにして、本当にちょっとずつですけど進歩していきました。

――そんなに苦労しながらも、諦めずに続けられた理由は何ですか?
【peppe】結局、ピアノを弾くのが好きだったからですかね。実は、中学のときに、一度ピアノをやめたんです。また習いに行くこともきっとないだろうし、家でちょっと弾くぐらいかなぁ…って漠然と考えてたんですけど、長屋が誘ってくれたことで、ピアノを弾く場所をまた与えてもらえました。この場所を失いたくない、と思ったんです。

■出会って9年目――まだお互いを深く知る段階

 知り合って今年で9年目。活動をしていくなかで成長したり変わってきた部分もあるが、今でもお互いを知る最中なんだとか。
【小林】長屋は、自分の気持ちをオープンに話してくれるようになってきましたね。
【長屋】私は、仲がいい友達にも秘密を作ってしまうタイプで、誰かに胸の内を明かしたり、相談したり…と、自分の話をするのが得意じゃないんです。メンバーに対しても、そうだったんですね。でも、ここ最近だんだんと、「これは話してみようかな」ってなってきました。
【小林】どこまで長屋に踏み込んでいいのか、ってずっと探りながら活動してたんですけど、最近はそこまで気を遣う事もなくなってきました。
【長屋】歌詞をたくさん書くようになったのも、変化の理由かも知れません。歌詞を通して、私の気持ちや考えを知る事も多かっただろうし、だったら話すのも同じかな、ってなってきたんです。
【小林】歌詞からだけじゃなく長屋の想いを知れるのは、長屋の作品が大好きな僕としても嬉しいし、バンドにとっても共通認識が変わってくるから、大きな変化だと思います。
【長屋】小林は、昔は「何かコレがいいと思う」って感じで、根拠は無いけど自信を持った発言が多かったんです。私達もそれを頼りにしてたんですけど。でも最近は、ちゃんと根拠があって先を見据えてるな、って感じることが多くなって、頼りがいが増しましたね。peppeは、さっき自分でも言ってたけど、最初はバンドの事がわからなかったから、何かを決める時も自分の意見は言わずに「まかせる」って感じだったんですよ。でも今ではpeppeのスタイルが出来たし、バンドサウンドの表現者になったと思います。
【小林】あと、peppeの新情報としては、世界遺産検定一級を取ったことですね(笑)。

■武道館ライブ、『紅白』出場――自信を持って王道の目標を掲げます

 最近、YouTubeをはじめとするネット配信の発達と流通形態の多様化で、メジャーデビューにこだわらずに自由に活動するアーティストが多いが、緑黄色社会は、いわゆる王道のサクセス路線を目指している。
【長屋】高3のときに『閃光ライオット』(ソニーミュージックなどが主催していた10代のアーティスト限定のロックフェス)で準優勝した当時から、ソニーさんにはアドバイスをもらったりして関係が続いてて、その流れでエピックレコードと契約したので、私たちとしては、インディーズ、メジャーって区別する感覚はないんです。
【小林】メジャーデビューを目指してがんばった、って事は1回も無いですね。でも、僕らが目指している“国民的な存在”や“お茶の間に届く”って域に行くには、自分たちの力だけではどうにもならないんで、メジャーの力も借りよう、と。
【長屋】プロになる、というのも、結成当時からみんな漠然と考えてはいたと思うんですけど、4人でそれについて話し合ったことはないんですよ。
【小林】「このバンドで食っていこう!」というより、「大きい会場でやりたい!」「有名になるぞ!」って方が大きかったんで。
【長屋】でも、CDを出させてもらったり、いろんなスタッフさんに協力してもらったり…となって、もう学生バンドじゃない、という責任感やプロ意識は出てきました。

――現時点での目標は何ですか?
【長屋】やっぱり武道館でライブしたいですね。
【小林】あと、『紅白(歌合戦)』に出たいです。わかりやすく、おばあちゃんが一番喜んでくれると思うんで。

――最近では珍しく王道志向ですね。
【長屋】私たちも、「何かちょっと変わったことをしよう」って考えてた時期もあったんですけど、活動していくなかで、自分たちに向いていること、出来ることがわかってきたんです。で、「王道でいいんだ」って自信持って言えるようになりました。
【小林】嗜好が細分化しすぎて、誰もが知ってる曲やアーティストって今の時代はもうあんまりないけど、そんななかでも、「さすがに、この人は知ってるでしょ?」ってアーティストは居るじゃないですか。星野源さんとか米津玄師さんとか。そういう存在になりたいです。今って、生活の中心がどこにあるか、っていうのも本当に人それぞれで、YouTubeやネットしか観ない人もいるし、テレビしか観ない人もいるし。その比率が、最近はネットの方に傾いている気がするんですけど、僕らにとっての王道は『紅白』なんですよ。だから、その夢は叶えたいです。もちろん、ネットの世界も大切ですから、やれる事を考えていくつもりです。
【長屋】ラジオでいつも流れてたり、どこのお店でもBGMになってるような音楽をやりたいし、そういうポジションになれると思ってるんです。もともと聴いてきた音楽は4人ともバラバラですけど、共通してるのはJ-POP。だから、大衆性をとくに意識しなくても、皆さんに届く楽曲作りになってると思います。だけど、挑戦は常に続けていきたいです。音楽面でも、今までやってこなかった雰囲気の曲を作ったりとか…。その上で国民的な存在になりたいです。でも、そうなっても、地元の名古屋は絶対捨てたくない場所です。ツアーで“名古屋飛ばし”は絶対にしません(笑)! 何度もコンサートを観に行ったガイシホールは憧れの会場なので、いつか自分たちでもやれたらいいな、と思ってます。

■ドラマ主題歌「sabotage」は緑黄色社会の名刺代わり

――国民的な存在を目指すなかで、今回の主題歌担当は、すごく大きな意味がありますよね。
【長屋】“地上波の連続ドラマの主題歌”ってことが嬉しかったです。
【peppe】小中学生の頃は、ドラマを観ていて、そこで流れる主題歌で曲を知ることが多かったので、今回、その立場になれたのが感慨深いですね。
【長屋】今年の9月に映画の主題歌をさせて頂いて、それももちろん嬉しかったんですけど、映画は映画館に行かないと観れないじゃないですか。でもテレビは、観ようと思ってる時だけじゃなくても、ついてたら自然と目や耳に入ってきたりしますよね。だから、お茶の間にちょっと入り込めたような嬉しさもありました。

――「sabotage」のイントロを聴いた瞬間、「わぁドラマの主題歌っぽい!」って思ったんですけど、かなり意識して作った感じですか?
【長屋】メロディのパワフルさ、という意味では意識しましたね。ドラマ側の意向として、“明るい曲”というのがあって、「でもちょっとヘンテコな要素も欲しい」って言われてたんです。その感じは、主人公の小暮也咲子のイメージに合ってて、すごくわかるなぁと思って。で、最初に出てきたのが、Aメロの半音下がったりするフレーズだったんですよ。その対比で、サビは逆にシンプルにしました。歌詞の面では、主人公の性格や雰囲気が私に当てはまるような部分があったので、とくに意識しなくてもドラマの内容から離れないモノが書けました。私の気持ちでもあり、也咲子の気持ちでもあるんです。
【peppe】この曲が出来るまで、実はみんなで何曲も書いたんですよ。でもなかなか納得できるモノにならなくて…。で、長屋が「sabotage」を持ってきて、聴いた瞬間に「これだ!」ってなりました。
【小林】めちゃくちゃいいメロディだなと思って。さっき言ったヘンテコな部分と、シンプルだけどパンチがあるサビのメロディ―、その駆け引きがうまく出来てる曲だなぁ、と。
【長屋】どれもどこかしっくり来てなくて、そのまま決まっちゃうのはイヤだったし、納得のいくまで…“納得”って何だ? ってところまでいっちゃったんですけど(笑)。この曲ができた後もギリギリまであがいてましたね。でも、今は自信を持って「sabotage」で良かった、と思ってます。
【小林】初回のオンエアは、会社でみんなで観たんですけど、実際に流れてるのを観て、やっと肩の荷が下りました。
【長屋】主題歌という大役を任されて光栄だけど、この曲をみんなどう感じてくれるんだろう…って、ドラマ中で流れるまで不安だったんですよ。でも、ドラマの雰囲気にも合ってたし、溶け込んでたので、本当にホッとしました。たくさんの人に響く内容になってると思うので、皆さんに私達を知ってもらうきっかけとして、この曲が初めてのドラマ主題歌で良かったな、と思います。

――最後に、「sabotage」を聴いてくれる読者にメッセージをお願いします。
【小林】日々、学校や職場、恋愛…いろんなツラい事があると思うけど、そんな時に寄り添って、押しつけがましくなく「大丈夫だよ」って言ってあげられるような曲だと思います。
【peppe】ドラマの内容と共に記憶に残ってる曲ってたくさんあると思うんですけど、「sabotage」もそんな1曲になれたらいいと思います。ドラマのストーリーと重ね合わせて、より好きになってくれたら嬉しいです。
【長屋】情報が溢れてるなかで、緑黄色社会、そして「sabotage」にたどり着いてくれたことが、まずすごい奇跡だと思うし、本当にありがたいです。この曲は、ドラマの為に書いた曲ではあるんですけど、私のなかでは“空っぽと前向き”っていうのがテーマにあって、「自分には何もない」って思うことってあるじゃないですか。特徴がないんじゃないか、とか、個性って何だろう…って悩む瞬間が誰にでもあって、そういう方の背中を押せる曲にしたかったんです。それと、単純にパンチのあるメロディラインなので、何かちょっと生活が物足りないな、って時にも聴いてほしいです。それで元気になってもらえたら嬉しいですね。
(文/鳥居美保)

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  • 手前からpeppe、小林壱誓、長屋晴子
  • 長屋晴子(Gt.Vo)
  • 小林壱誓(Gt.Cho)
  • peppe(Key.Cho)

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