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Aimer、“声”への誇りと深化する表現 「新たな扉開いた」主題歌とのめぐり逢い【Fate[HF]インタビュー】

 人気アニメ「Fate/stay night」シリーズの劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel]』(以下、『HF』)三部作の第二章「lost butterfly」が、12日に公開を迎える。今作でも第一章に続き、シンガー・ソングライターのAimerが主題歌を担当している。深みのある声質と表現力で2011年のデビュー当時から注目され、今や話題のアニメ・ドラマ・映画から主題歌のオファーが後を絶たない。キャリア8年目を迎えた今、多くの主題歌を手がける上で譲れないマインドや、唯一無二の声と相対し続ける葛藤や矜持(きょうじ)について、第二章の主題歌「I beg you」を軸に話を聞いた。

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■自分史上最も「多重人格」な一曲

 「I beg you」は前章の主題歌「花の唄」と同じく梶浦由記氏が楽曲提供とプロデュースを手がけた。「花の唄」は悲痛な詞世界が滔々(とうとう)と歌われるバラードだったのに対し、今作ではグルーヴ感を全面に出し、エキゾチックなメロディーが目まぐるしく展開していく。これまでのAimerの作品とは明らかに“異質”な楽曲。レコーディングでも、解釈にかつてないほど“迷い”を抱えながら曲の核心へと迫っていった。

 「『花の唄』の時は解釈に迷うことなく歌えたんです。音楽的にはバラードとして美しく悲しく深いところまで降りていけばいいというのが明確だったので。でも、『I beg you』はもっと複雑で予想もつかないところに向かう。最初は(曲を)体に入れるのにすっごい苦戦しました。本当にここまで何度も何度も鍵盤で音を探ったのは初めてというくらい。ただ、難しいがゆえに表現者としてこの上なく燃えるものがあって、それが快感でしたね」と“産みの苦しみ”を経たからこその充実感を語る。

 梶浦氏と現場で交わしたやり取りを振り返ってもらうと、「『花の唄』では『こういう歌い方、こんな歌い方もあります、どっちがいいですか』と私から梶浦さんに提案する形でした。それに対して今回の「I beg you」は、選択肢が際限なくあって広がりすぎてしまい、提示しようがなかったんです。そこで、先に歌い方を梶浦さんに相談しました」と回想。

 「最初、梶浦さんからは(起伏を付けすぎず)フラットにいったほうが良いとアドバイスをもらって、私もそのプランで臨んだんです。でも、歌い込んでいくうちに、もっと熱があったほうが良いと思うようになって、最後はメーターを振り切るくらいまでエモーショナルにいっちゃいました(笑)」と曲の表現は想定もしない方角へ膨らんだ。梶浦氏もそんなAimerの熱量に突き動かされたようで、「最後のサビに関しては、比喩ですが『泣いちゃっていい』とディレクションをいただいて。結果的に、感情豊かで色んな種類の表現を高い温度の中に入れられてうれしかったですね。今、改めて聴いてみてもすごく納得しています」と二人三脚でたどり着いた音楽に胸を張る。

 「色んな種類の表現」について聞いてみると、「この曲は今までのどの作品よりも“多重人格”だと思っている」と分析した。「例えばAメロ(の詞)は自分を嘲(あざけ)るようで、サビには狂気があって、2回目のサビ後の展開では怒り・諦め・悲しみ…、ブロックごとに目まぐるしく感情が変わっていくんです。一人の人間がいろんな側面を曲の中で見せている。こういう表現って以前はできなかったことなので、デビューから7年経ち引き出しが増えた今、歌えたことがよかったなと」。

■「新しい扉が開いた」 主題歌に込める“リスペクト”とは

 Aimerといえばアニメは言うに及ばず、映画・ドラマでもインパクトの強い主題歌を次々に手がけ、ファン層を拡大してきた。昨年も『HF』の「花の唄」に始まり、TVアニメ『恋は雨上がりのように』の「Ref:rain」、土屋太鳳芳根京子主演の映画『累-かさね-』の「Black Bird」など、話題作へのオファーが引きも切らず。

 自身は主題歌を手がける際、どう作品世界に寄り添っているのか。聞いてみると「まず、作品に対するリスペクトというのは、自分が納得いった上でしたいんです。表面的なものではなく」と、より真剣な眼差しで語り始めた。

 「どんな作品でも、誰かに伝わってほしいと願われて世に出たわけなので、その本質を突き詰めると共感できる要素がきっとあるはずなんですよね。それがどういうものか、奥底で叫んでいるものは何か、を自分なりにしっかり理解するように心がけています」。続けて、「やはり自分が手がけさせていただく作品の理解を深めていくと、必然的にいちファンになっているんです。なので、そうした愛と尊敬を込めて、詞も自分の気持ちと相容れる形で寄り添えたらと思っているし、歌も導かれるように音楽的かつ感情的に表現していきたいですね」と信念を明かしてくれた。

 『HF』シリーズでもヒロインの間桐桜(まとう さくら)について「不遇さとか、自分にあまり自信がないからこその気持ちの持って行き方とか、すごくシンパシーを覚えています」と思いを寄せる。梶浦氏が書き下ろした「花の唄」「I beg you」は桜の心情そのものとも言える作品だが、Aimerはこの2曲を歌ったことで「今まで開いてなかった新しい扉が開いた」と感じたそうだ。

 「それはなぜかと言うと、これらの曲がものすごく“個人的”な曲だからだと思うんです。これまで自分で書いたり、提供していただいた作品は特定の誰かより、色んな人が想像しうる世界を表現していたのですが、この2曲は桜にとことん寄り添い、パーソナルで、ヒロインの気持ちを吐き出している」。また、「これまでそういう曲を歌ってこなかった身としては、ここまで情念的・情感的に歌うのが実は好きで、どんどん入り込める扉だったということに気づけました」と大きな収穫を得ていた。

■「この喉でやってきた」…繊細な声と向き合い続けた誇り

 15歳の時に声帯を痛めたことから喉を守る歌い方を追究し、現在の声質と歌唱法にたどり着いたAimer。デビュー8年目を迎えた今、自身の声と表現にどんな成長を感じているのか。

 「デビューからの7年間で、いかに喉を壊さず、いかに良いバランスで歌うかというのを日々、追究してきたんです。その中で自分でも大きな発見だったのが、喉・声帯への負担が最も少ない状態で歌えた時こそが、自分にとって最も良い響きで、一番好きな声が出せているということでした。声の響きや体の鳴り方、口の使い方、さまざまな部分でそうした“一番良い状態”で歌うということだけを探し続けて、この7年でかなりコントロールできるようになってきたんです。

 あとは、常に“音楽的に”歌うことを一番の目標にしていて。それは例えば、ただ感情的に爆発するのではなく、あくまでもこの音楽、この曲に適した表現をつかんで、それを守った上でどれだけ感情を乗せられるかということ。それが昔より本当に自由にできるようになってきましたね」。

 一方、今も完治していない喉と日々向き合うつらさもあるのでは、と聞いてみると「あまり言ったことはないのですが、あまりにも大変だから、いっそ手術して結節を取ってしまう方がいいのではないか、とか、日々そういう事は全然思いますよ」と葛藤もある。しかし、「これは意地というか、『この喉でずっとやってきた』という思いが自分の中にはある。もう少し簡単にやれたはずのところを、敢えてずっとこの声でやってきたからには、大変だけど今後も可能な限り真摯に向き合っていきたいという思いです」と確かな誇りも根付いていた。

 「良さを引き出すのもメンテナンスも骨が折れるところはありますけど、いつも周りに『良い声』と言っていただけることで、これからもこの声を守って、この声でやっていきたいと気付かされるんです。特にファンの方の言葉にはいつも支えていただいています」。

 梶浦氏にかけられた言葉も大きな励みとなったそうで「私の声について『もっといろんな曲を歌ってみていいと思う』って言っていただいたことがあったんです。『どんな曲を歌ったとしても、しっかりあなたの曲になるから』と言ってくださって、それがとてもうれしくて」と明かした。「今は、何を歌っても自分の中で攻めるものと守るもの、それぞれを認識・理解できていると思います。なので、いろんな曲に挑戦することこそが自分のキャパシティーを広げてくれるし、導いてくれる。今後もそれが自分のスタイルになっていけばいいと思いますし、自分の声の良さを一番引き出せるやり方で、あらゆる毛色の作品を歌っていきたいですね」。

 最後に「まだまだ自分の声を探求する日々は終わらなさそうですね」と聞くと、「それがなくなったらもう歌う意味もなくなっちゃうような気がします。『まだこんな一面があるんだ』と発見できるのが楽しくて歌っているのだと思いますし、ずっとこの先もこの声で色んな発見を重ねていけたらと思いますね」と、穏やかな笑顔をのぞかせた。

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