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恋愛ソングのカリスマ・西野カナ、「トリセツ」は“おばあちゃんの教え”が生んだ

 西野カナが7月13日にニューアルバム『Just LOVE』を発売し、オリコンアルバムランキング1位を獲得。かつては、“会いたくて震える”といった切ない歌詞で人気を博した彼女は、いまや女性のリアルな気持ちを歌う27歳。恋愛ソングを歌い続け、カリスマ的存在となった彼女の曲は、なぜそこまで人を惹きつけることができるのだろうか。女版“関白宣言”的な歌詞が話題となった「トリセツ」が生まれた経緯や、西野カナ流リサーチ術について、語ってもらった。

アルバム『Just LOVE』は12.6万枚を売り上げ、オリコンアルバムランキング初登場1位に

アルバム『Just LOVE』は12.6万枚を売り上げ、オリコンアルバムランキング初登場1位に

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◆趣味の延長みたいな感じで作った曲がシングルになった

――約2年ぶりのオリジナルアルバム『Just LOVE』が7月13日にリリースされました。
【西野カナ】 ちょうど、普段聴く音楽の趣味も変わっていた時期で、そういう私の“今”がすごく反映されたアルバムになっています。いつもストックがない状態で曲を作るので、年齢ごとに思うことも変わってきていて。でも、6枚目にして、いちばん等身大なアルバムが出来たと思います。サウンドに関しても生音がすごく多くなっていて、その分音数は少なめ。最後にミックスする段階で加工もほとんどしていなくて、仕上がったものを聴いたときは、我ながら、「うわっ!聴きやすい!」って思いました(笑)。

――生音で音数が少なめの曲を好むようになったのは、2年前にリリースしたカントリー調の「Darling」が一つの転機? 西野さんは10代から20代前半までは、“好きな人に会いたい”っていう切なさを切り取ることが多かった印象だけれど、歌詞的にも、「Darling」でカップルの関係性がぐっと深くなりましたよね。
【西野カナ】 そうですね。「Darling」という曲自体、最初はカップリング予定だったんです。当時はカントリーをよく聴いていたので、趣味の延長みたいな感じで作った曲がシングルになって、いろんな人から「いいじゃん!」って言ってもらえた。以来、自分の中でのジャンルとして、これからもっとこういうのを書いていきたいなと思い始めました。

◆おばあちゃんが「夫婦が上手くいくコツは、ものの言い方次第だよ」って

――「好き」「もしも運命の人がいるのなら」に続いて、昨年9月には「トリセツ」をリリース。この曲は、社会現象になりました。
【西野カナ】 「トリセツ」を作るときは、ただ“好きです”とか、“あなたのそばにいたい”という気持ちを伝えるんじゃなくて、もっと女の子のリアルを表現したいなって思ったんです。女の子の独り言の中に、ちょっとしたコミカルさや可愛さ、愛情表現としての嫌味っぽい部分とか……。カップルの会話の中で、“言いたいことを可愛く言う”みたいな歌詞を書けたら面白いな、と思ったんです。コンセプトが決まったら、男女問わず周りの人に「自分の取扱説明書を書いてください」ってアンケートをとって……。

――アンケートとは?
【西野カナ】 「落ち込んだときはどういう対応をして欲しいですか?」とか、細かい質問を。面白かったのが、男性と女性で回答が結構似ていたこと。機嫌が悪いときにそっとしておいて欲しい人もいれば、話を聞いて欲しい人もいる。でも結局は、みんな放ったらかしにされるのは嫌なんです(笑)。「どうすれば機嫌が良くなりますか?」っていう質問も、男性も女性も変わらず、とにかく気にかけてもらえることが一番。“恋人同士のトリセツって、男も女も変わらないんだ!”というのが発見でした。

――歌詞の内容が変化するとともに、思い描く理想の女性像も変化していますか?
【西野カナ】 理想とする女性像は常にあって、年齢を重ねるごとにその女性がどんどん強くなっているんです(笑)。恋をしていなくても、十分毎日が楽しいし、一人でも全然平気で生きていけそうな。女の人ってそういうものなのかもしれないなって思うけど、でもだからこそ、そこに弱さとか、可愛さを持っている人に憧れますね。「トリセツ」でも、<急に不機嫌になることがあります。 理由を聞いても答えないくせに放っとくと怒ります。>って歌詞がありますけど、そのあとの<いつもごめんね。>が言えるか言えないかで二人の関係は全然違ってくる。昔、私のおばあちゃんがよく言ってたんです。「夫婦が上手くいくコツは、ものの言い方次第だよ」って。自己主張するのは仕方がないけど、その後にひと言、「ごめんね」とか「ありがとう」とか添えるだけで全然違う。だから「トリセツ」には、おばあちゃんの教えも含まれているんです(笑)。

◆自分で“私は恋愛ソングのカリスマなんだ”なんて思ったことはない

――デビュー以来、“恋愛ソングのカリスマ”であり続けられるのは、“時代の空気”を読む力があることも大きいと思います。音楽でもファッションでも、流行り物はどうやってチェックしていますか?
【西野カナ】 流行には疎いほうだと思います。ただ、気になったことは調べたり、ネットでいろいろ掘ったりするのは大好きですね。基本、知りたいことがあればすぐネットで検索します(笑)。最新のクラブヒットチャートなんかも全部チェックするし、海外の音楽も、英語圏に限らず、もっといろんな国で流行ってる音楽も聴きたいと思うから、そういうときはひたすら調べたりすることもあります。でも最近って、チャートの傾向とかあんまりない気がします。いろんなジャンルが入り乱れていて、何でもあり。だから私も、カントリーテイストの曲をリリースすることにしたときも、“何をやってもいいんだ”って、背中を押された感じはあります。

――“恋愛ソングのカリスマ”みたいに言われることはどう思いますか?
【西野カナ】 「歌詞に共感します」とか「すごくわかる」って言っていただけるのは素直に嬉しいですし、そこを目指してやっていますけど、自分で“私は恋愛ソングの神様なんだ”なんて思ったことはないので(笑)。プレッシャーを感じるとか、そういうことはありません。これから先の目標は特に設定していなくて、1年1年過ごしていく中で感じたことを曲にして、今を大切にしていければと思います。

――曲が出来たとき、“これは売れる!”と直感したりすることもない?
【西野カナ】 全然! 毎回、新しい曲を発表するときは、すごく怖いです。「Darling」にしても「トリセツ」にしても、“こんなふざけた曲!”って思われるんじゃないかってビクビクでした(笑)。
(文/菊地陽子)

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