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クリープハイプ・尾崎世界観、波乱万丈の音楽活動「声が出なくてショックだった」

 ロックバンド・クリープハイプが、前作から約半年ぶりとなるシングル「破花(はっか)」を発売。その初回限定盤のDVDにはツアー『わすれもの〜つま先はその先へ〜2016』ドキュメンタリーフィルムが収録されている。同映像には、楽曲制作やライブへの想いの丈を吐き出し、苦悩しながらも前に進もうとする尾崎世界観の姿が生々しく映し出されていた。レコード会社移籍騒動後、ツアー中に声が出なくなったり、昔のように楽曲が作れなくなり苦悩する日々を過ごしたりと、波乱万丈な音楽活動を行ってきた尾崎が、楽曲制作での苦悩や声が出なくなったときの心境について赤裸々に語った。

クリープハイプの尾崎世界観

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◆レコード会社を移籍後、やりたいことをやらせてもらっている

――今作には、ツアーに密着取材した映像が収録されていますが、「昔のような曲が書けなくなった」と話しているシーンもありましたが。
【尾崎世界観】 そう感じるようになったのは、ここ2〜3年です。今でこそみんなライブに来てくれるけど、昔はお客さんもいなかったし、当時は僕らもアルバイトをしながらの活動で、実際はほとんどの時間をアルバイトに費やしていた。そういう状況の中で曲を作るのと、今のように24時間音楽のことを考えられる幸せな状況で曲を作るのとでは、歌えることも作る曲も違ってくるんですよね。でも、変われることはいいことだと思うんです。当時は、バイトを辞めて音楽に集中できる生活をしたいと思っていたから。それが今、昔の曲を聴き直してみると、バイトをやっていたからできた曲もあったなとか、音楽をやりたいのにバイトばかりやってるという怒りを、音楽にぶつけることができていたなって。

――昔の怒りをぶつけていたような曲を、また作りたいと?
【尾崎】 そうなのかもしれないですね。昔はゆっくり音楽のことだけを考えて作りたいと思っていたけど、いざそうなったらなったで、昔のような曲を作りたいと思ってしまう……。きっと、自分の性格なんだと思います。

――レコード会社を移籍して2年ほど経ちましたが、今の会社との関係性は?
【尾崎】 いいと思います。今は、やりたいことをやらせてもらっています。そのぶん、責任を持ってやらないといけない。迷っていると、時間だけ経ってしまうので。以前はわりと、こうしなさいと言われることが多くて、メジャーのやり方みたいなものがわからず、そのまま受け入れていたんですけど、今思い返すと、意外と自分たちで決めてなかったんだなってことに気づきました。責任が明確というか、今はすごくわかりやすいです。ダメだったときは、自分たちのせいだとはっきりしているから。

◆声が出なくなって、(声が出ることが)当たり前ではないんだと実感

――ドキュメントの中では、声が出ないという状況も映し出されていましたが。
【尾崎】 今までそういうことがなかったので、自分でも驚きました。いつかあるだろうとは思っていたけど、あんなに突然くるとは。赤坂BLITZ公演前は、風邪っぽくて喉が痛いとは思っていたんですけど、それでも経験からまだ大丈夫だと思っていて。でも朝起きたらまったく声が出なくて、あんなことは初めてだったので、すごく焦りました。赤坂BLITZは、自分の中ではリベンジしたい大事な場所だと思っていて、その日をすごく楽しみにしていたんです。そこで声が出ないというのが余計にショックで、すごく落ち込みました。いろんな手を尽くして、結果的には何とか出るくらいまでになって、最終的には楽しくやれたんですけどね。でも、そのギリギリの状態のままツアーが続いて、休みがあって少し声が戻っても、またすぐツアーで削れての繰り返しだったので、最後の最後はかなりきつかったです。

――結果的に声は出たわけだけど、また出なくなるかもという不安を抱えながらステージに立つのは、どういう気持ちだった?
【尾崎】 最悪でした。

――声が出なくなったときと出るようになったときでは、気持ちに変化はありましたか?
【尾崎】 声が出ることが当たり前だと思っていたので、それが出なくなったときのショックは大きかったです。感謝でもないけど、当たり前ではないんだと実感しました。音楽もそうですが、そういう確実ではない、実態のないもので、自分は表現活動を行っているんだなって。キーも高くてギリギリでやっていて。慢心ではないけど、それが当然のようになっていたんだなと思いました。これは日々不満に思ってることも同じで、あとで思い返すとその経験があってよかったなって思うんだろうなと。

◆自分の声は、変な声で嫌いです

――声といえば、尾崎さんの声はすごく特徴的ですが、自分の声に対する感じ方は変わったりしましたか?
【尾崎】 変わらず嫌いですよ。変な声だなって。街中で曲が聴こえてきたりすると、変だなって思います。でも、こんな声でも好きといってくれる人がいて、それと同じかもっと多いくらい嫌いという人もいて。以前なら、何も言われないくらいなら、嫌いと言われるほうがマシとも言っていました……でも、嫌いって言われると腹立ちますよね。こういう小さい怒りを、もっとどんどん溜めて、いずれ何かの曲で爆発させたいです!

――そんな尾崎さんにとってバンドや音楽は、どういうものですか?
【尾崎】 結局はそれ(バンドや音楽)しかなくて、だからこそ一番嫌いというか。そこからは逃げられないし、それ以上のものもないんですけど。どうやっても離れられないものなので、それが嫌ですね。

――好きとか嫌いとかを越えた、どうしようもない繋がりという部分では、家族というものに近いのかも。
【尾崎】 ああ、似ているかもしれないです。いるのが当たり前という存在になってきました。昔は、可能性や希望という良いところしかなかったんです。でも今は、良いところも悪いところも知って、音楽に絶望もさせられて……でもそれしかないし、やるしかないので、ずっと一緒に行くんだという上で、今こういう気持ちでいます。でも、もし音楽を辞めたら、きっとまたやりたくなるんでしょうね。それを音楽に見透かされてるようで、それも悔しくて。だから、じゃあもっといい曲書いてやるよ!って思えます。

(文:榑林史章)

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