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アーティストの作品はそれが発表された時点で語り尽くされてしまうことが多い。たとえ、それがどんなに大きなパズルを形作るピースであったとしても。すなわち、2005年の浜崎あゆみの活動は、4枚のシングルが発売されたポイントにおいて“点”として語られてきた。ならば、その点を結んでみようではないか。この1年、浜崎あゆみはどこを目指して進んできたのだろうか。その答えがここにある・・・。ニュー・アルバム『(miss)understood』、2006年New Year's Dayに発売。“点”が“線”となって、さらに巨大なパズルとなって聴く者を圧倒する。
2005年に浜崎あゆみがリリースした4枚のシングル「STEP you/is this LOVE?」「fairyland c/w alterna」「HEAVEN」、そして「Bold & Delicious/Pride」。それらの作品に対して、このコーナーの中で自分なりの思いを綴ってきた。それが的を射たものだったかどうかはわからないが、少なくとも嘘や偽りはなかったと思っている。しかし、それでもまだどこかで、2005年の浜崎あゆみについて見落としている部分があるような“予感”はしていた。
そして、2005年の最後の最後で(というか2006年の年の頭で)その予感が現実であったことを思いっきり知らされた。絢爛豪華だった『MY STORY』から1年、新たに編まれたアルバム『(miss)understood』。上記の4枚のシングル曲をすべて含む全16曲は前作以上にロック色が濃くなり、身体と心にズシンズシンと響いてくる。GEO of SWEETBOXとの出会いは間違いなく彼女を一歩上の次元に押し上げているし、今作でも6作に関わったCMJK、5作を提供したtasukuとのタッグは抜群の切れ味を見せている。歌詞にしてもシングルの延長線をいくかのような迷いのない視点が眩しい。“大きな地図を広げた後は 君だけの道を描けばいい”と語るタイトル曲。“覚悟ならもう既に決めたわ”と歌う「In The Corner」。“いつか辿り着くだろうあの場所へ”と宣言する「criminal」。“恐れる事などない”と諭す「Beautiful Day」など、そこに描かれているメッセージには全くのブレがない。「alterna」の時に感じた“恐ろしいまでのロック”を歌う浜崎あゆみはここでも健在だ。プロローグの「Bold & Delicious」からエピローグの「rainy day」までを通して聴いた時に、心の底から“パワー”が溢れてくる自分に気づくはずだ。
しかし、それでもまだ見落としていたものがあった。そして、それは堂々と僕らの目の前に提示されていたのである。『(miss)understood』。理解と誤解を内包したこのダブル・ミーニングを持つタイトルについて、彼女は“二面性”と話している。二面性・・・、そこでハッと気づいた。慌てて歌詞を読み直してみた。間違いなかった。ここには、その歌詞を我々に歌って聴かせる浜崎あゆみと、そんな自分を俯瞰して眺めているもうひとりの浜崎あゆみがいる、ということだ。「HEAVEN」の抑えの利いたボーカル力も、「Bold & Delicious」の鼓舞するようなパフォーマンスも、リスナーだけでなく自分自身にも向けていると捉えることでより合点がいく。図らずも「Will」で彼女は歌っていた。“悲しき事は自分の為に 自分の姿見失うこと”と。自分の姿を、自分の歌詞を定点観測できるシンガー、だからそこにブレは生じないのである。これだけ飽くなきチャレンジを繰り返しながら、そこにまだ“客観”という視点を挟み込める隙間を持つキャパシティの大きさに唖然とするばかりだ。
2005年、浜崎あゆみはヘアスタイルを大きく変えた。それも二面性だろう。アルバムにはアイテムによって異なる写真集がつく。それも二面性だ。しかし、そのとてつもない二面性と出会えるのは、このアルバムの中だけだということを忘れないで欲しい。Do you understand?
(文:田井裕規)
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