ORICON STYLE

2005年04月06日


 最後のアンコール曲「落陽」が終わった瞬間、ステージ上のRYOは泣いていた。そしてHIROKIとYAMATOも、涙をこらえるのに精一杯だったようだ。
「俺もう、今日は始まった時からもう泣きそうでした」終演後の楽屋でRYOは照れ隠しに笑いながら、そう漏らしていた。まだ幕張メッセの追加公演と地震による福岡の代替公演が残ってはいるが、『musiQ』ツアーの「ラスト」を飾るに相応しい、3・25沖縄市民会館凱旋ライヴだったように思う。

 今やすっかり<ORANGE RANGE評論家>と化してしまった観がある私だが、彼らのホームグラウンドである沖縄でライヴを観るのは、今回が初めてだ。それだけに見るもの全てが、やたら新鮮に映った。

 デビュー以来ライヴの度に、沖縄人なら誰でも本能的に踊れる「カチャーシー」を全国各地でレクチャーしてきたのだが、さすが沖縄、皆やたら上手いぞ。超満員の観客が見事にカチャーシーしまくる 「上海ハニー」は、まさに圧巻だ。どの曲でも、合唱ではなく自然発生的に皆が踊っちゃうというのが、そもそも微笑ましいじゃないか。

 「*〜アスタリスク〜」のレーザー光線や「花」のプラネタリウム的照明といった、内地じゃ見慣れた演出にも「わー、きれい!」との声があちこちで漏れたりして、バンド同様沖縄の子達も純粋であったかいし。

 6人にとっても、やはり沖縄市民会館でのライヴは「特別」だったようだ。ツアー序盤の高松でMCのギャグがすべりまくり、以降下ネタや一発ナンセンス・ギャグに活路を見い出してたYAMATOが、さすがに客席の家族親戚の前ではたじろぎMCがグダグダになってた姿も、かわいらしい。



 HIROKIによるとこの市民会館は、山内中学時代に学校行事でブラスバンドの発表会を観に来てたりと、まさに「想い出の地」なのだそうだ。それだけに感慨もひとしおなのだろう。

 NAOTO+YOH+KATCHANのバンド隊は、このツアー中に<ライヴバンド>として飛躍的な成長を遂げただけあって、この夜も動じることなく「明るく愉しく激しい」グルーヴを放っていた。力強くなった、うん。にしても髪型が変わってYOHが「狂乱のオースティン・パワーズ」と化してたのには、かなり度肝を抜かれたが。わははは。

 さて私は、今回のツアーのライヴ評をいろんなとこで書いてきたが、読み返してみるとバンド隊に対する評価ばかり高くて、MC隊には厳しいことを結構言ってたようだ。トリプル・ヴォーカル・パートの時はそうでもないのだが、1人1人のソロ・パートになると心もとない場面が多々あったからである。


 しかしこの夜は、そのMC隊が奮起しまくっていた。HIROKIは3人の中で一番歌唱力がついてきたし、YAMATOが発する「怪鳥」ヴォイスにも鬼気迫るものがあった。

 そして、それよりも何よりも「若さゆえ」いろんな意味で定まってなかったRYOが、ファンの子達に対して心から感謝の気持ちを吐露し、またパフォーマンスで示していた姿が感動的ですらあったのだ。

 MC隊にとっては間違い無く、今回のツアーのベスト・ライヴだったのではないか。すると、とどのつまりがORANGE RANGE全体にとっても<ベスト>なわけだ。

 彼らの音楽的成長を見極めるポイントとして、私は初日の市原から「シティボーイ」「Beat Ball」「papa」の<複雑怪奇変則ポップ>三部作の出来に毎回注目してきた。そしてこの夜の3曲が実に見事だったことも、付け加えておきたい。




 楽屋で逢った6人は皆、放心していた。なんたって沖縄だからして、それでも半分は実家に帰り、半分は友達含めて大人数でワールドカップ予選の日本vsイラン戦をTV観戦しに行ったようだ。今夜は愉しめ。

 それにしても誰が、ORANGE RANGEがここまで巨大でしかも優秀な、「個性の総本山バンド」になると想像できただろう。その要因はいろいろ考えられるが、やはり「沖縄」が大きいのではないか。とにかく「純粋」じゃなければ、あんな音楽は生まれっこないのだ。しかも250万枚『musiQ』を売ろうが何も変わらない、筋金入りの一般人ぶりも恐ろしい。HIROKIがMCで「沖縄だからこそ、こんな自由で愉しい音楽ができました」と言っていたが、まさにそういうことなのである。沖縄のORANGE RANGEは、本当に美しかった――。

 開演前にホールの外で煙草を喫ってたら、全員YOHの顔をした老若男女の集団に遭遇した。後で確認したら、やはりYOH&RYOの一族郎党だった。沖縄の人は親戚まで顔がそっくりなほど濃い、のだそうだ。うーん、どこまでもおそるべし沖縄。

(文:市川哲史(ORANGE RANGE評論家、いいえ私は音楽評論家です))
(撮影:根原奉也)



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