ORICON STYLE

2010年08月04日
 サカナクションの新曲は「アイデンティティ」。「自分らしさ」「自分的」の意味を持つこの言葉は、匿名性や没個性が嘆かれるこの時代に、あえて何かを問い、突きつけられているように響く。ライブでも盛り上がり必至なアフロ/ラテン・トライバルなビートの反面、歌詞にはどこか自己を見つめさせ、考えさせられる。そのパラドックスとコントラストはいかにも彼ららしく、“これぞサカナクションのアイデンティティ!!”とも言えよう。その辺りをバンドのフロントマン山口一郎はこう捉えた。

最初のコンセプトは“サカナクション版「勝手にシンドバッド」”

── 今回の「アイデンティティ」はアフロさや、ラテンなビートが斬新ですね。
【山口】 活動を続け、色々なことができるようになった今、これまでやったことのないアプローチで挑んでみたのが、この曲なんです。
── 夏っぽい曲もサカナクションとしては珍しいような…。
【山口】 夏の曲を前提に作ったのは、今回が初めてでしたね。それこそ最初のコンセプトは“サカナクション版「勝手にシンドバッド」”でしたから(笑)。
── 今までにない躍動感や生命力も特長かなと。
【山口】 演奏はそんな感じだけど、今回はあえてその情熱っぽさに熱くないスカした歌詞を乗せてみたんです。そのバランスや、正反対のものを融合させたりズラしたり、シュールなものを織り交ぜるのが自分たちらしいし、現代っぽいかなと。
── ちなみにこの曲の根底にあるアフロ/ファンクな要素はどこから?
【山口】 僕はファンクも好きで、ベースの草刈愛美も元々そのような素養を持っていて、彼女は作品やライブで出したりしていたんですが、今回はメンバー一丸となってその辺りのグルーヴを求めていったんです。冒頭のパーカッションも本職に頼まず、あえてドラムの江島啓一が自分で叩きましたし。今回はみんなそれぞれ、実験的なことにもたくさんチャレンジしましたね。

いい意味で期待を裏切り、びっくりさせる存在でいたい

── サウンドの高揚感や盛り上がりに対し、リリックは自己の見つめ直しという、その対照さも面白い。
【山口】 ライブで演奏したら、すごく盛り上がると思うんだけど、みんなが一斉に<アイデンティティがない>と歌っている光景はある種異様かも(笑)。あえてロックとは違ったフォーマットのライブを、ロックファンにも体感して欲しいし。常にフォーマットを壊す、いい意味で期待を裏切り、びっくりさせる存在でいたいですからね、僕ら。 ── <僕は泣いているんだよ>とのラストのフレーズなんですが、僕はこの<泣く>を“嘆き”よりも“感涙”と捉えました。
【山口】 その辺りは人それぞれ、どう解釈してもらっても構いません。実は僕は、歌詞を3つの視点から書いているんです。ステージ上からの視点、客席からの目線、その2つを客観的に全貌を見ている視点と。
── 気になるのは、この曲の本質とも言える“アイデンティティ探し”なんですが。
【山口】 “僕にはアイデンティティが無かったけど、みんなはどう?”“みんなこんなこと考えたことある?”との提起であり、逆に全く意味のないものにも捉えられる歌詞ですからね。そのバランスや絶妙さは大切にしました。“自分らしさ”を考えることが今のインターネット時代には重要だと思うし。そんななか、“僕なりのアイデンティティ”の提示をしてみたんです。
── ちなみに山口君の思うアイデンティティとは?
【山口】 未だ探し、模索中ですよ。とはいえ、結局それって自分では分らないものだし。自分と向き合い、目指すものに対する結果、自然と滲み出てくるオーラに近いものですからね。僕の場合、音楽で生きていくのが自分のアイデンティティで、それを見ていて欲しいが故の曲作りだし、それを立証するためのプレイだったりするし。アイデンティティって地層や玉ねぎの皮のように、新しいものがどんどん重なり、更新されていくものですからね。その“自分はどうなりたいのか?”を考えていくのが面白い。今回も盛り上がる歌だけど、よくよく聴げばすごい曲だし(笑)。それってすごくロックだし、自分たちらしいなと。まっ、結局これが僕たちのアイデンティティってことなんでしょう。

(文:池田スカオ和宏)


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山口一郎(Vo&G)、岩寺基晴(G)、草刈愛美(B)、岡崎英美(Key)、江島啓一(Dr)による男女5人組バンド。
高校の同級生である山口と岩寺が“サカナクション”を結成。テクノ・エレクトロニカを基調としたロックバンドとして、札幌を中心に2005年よりライブ活動を開始。2006年春に江島、岡崎、草刈の3人がメンバーとして加入し、現在の5人となる。サカナクションというバンド名の由来は、“sakana+action=ミュージックシーンの変化を恐れず魚の動きのように軽快に素早くアクションしていく=sakanaction”。
2007年5月、1stアルバム『GO TO THE FUTURE』をリリース。
2008年1月、2ndアルバム『NIGHT FISHING』をリリース。
2008年12月、1stシングル「セントレイ」をリリース。
2009年1月、3rdアルバム『シンシロ』をリリース。最高位8位を記録。
2010年1月、2ndシングル「アルクアラウンド」をリリース。最高位3位を記録。
2010年3月17日、4thアルバム『kikUUiki』をリリース。最高位3位を記録。
2010年4月2日、ライブツアー『SAKANAQUARIUM 2010 kikUUiki』をスタート。
2010年8月4日、3rdシングル「アイデンティティ」をリリース。
2010年10月8日、初の日本武道館公演『SAKANAQUARIUM 21.1(B)』を開催。

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