『紅白』Pが語る“影の功労者”金爆への敬意「自虐の裏にある真摯な姿勢」
【紅白特集】出場者一覧 キスマイ、菅田将暉、日向坂46らが初出場
「1963年の紅白」を意識、1年の振り返りではない未来志向の『紅白』にしたい
加藤 やはり前回の東京五輪の前年に放送された「1963年の紅白」を意識しています。僕も20数年ほどなんらかの形で『紅白』に携わってきましたが、『紅白』というとやはり大みそかにその年を振り返る色合いが強いんですね。特に昨年は平成を総ざらいする『紅白』として、視聴者の皆さんもさまざまな場面で熱狂してくださいました。しかし今年は、来年に向けて日本全国が1つになれるようなメッセージを発信する、いわば未来志向の『紅白』にしたい。今年の『紅白』を起点として2020年を前向きに迎えられるように、昨年よりもさらにスケールアップした盛り上がりを目指しています。
──今年の出場者の選考基準について、どのような要素を重視されましたか?
加藤 選考の大きな柱である「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出」、ベーシックであるこの3つの指標は変わらないのですが、特に初出場組については昨年から「今年の活躍」の要素として加わったデジタル市場の調査を強く意識しました。サブスクや動画視聴など個人の嗜好や接点が強く反映されるデジタルサービスですが、そこで多くの支持を集めているアーティストにテレビという媒体でライブパフォーマンスをしていただくことで、その魅力をより広い層へとお伝えする。昨年のあいみょんなどはまさに象徴的でしたが、それも“全世代型コンテンツ”としての『紅白』の役割だと思っています。
『紅白』の役割は終わったと言われた時期も…デジタル時代だからこそ可能性がある
加藤 たしかに時代に逆行していると思われるかもしれません。デジタル動画サービスの台頭に伴う個人嗜好の高まりは、『紅白』にとっても大きな脅威で、私たちの間でも「紅白の役割は終わったんじゃないか?」という議論が起こった時期もありました。それでも昨年は41.5%という視聴率をいただいたように、“皆で同じ時間に同じ番組を観たい=体験を共有したい”というニーズはまだまだあるんじゃないのかと実感しました。何よりテレビという全世代が触れられるメディアの可能性を諦めてはいけない。その可能性を追求するのも『紅白』の使命だという、いい意味でのプレッシャーも感じています。それこそ近年は、Twitterで『紅白』をイジって楽しんでくださっている方もたくさんいるように、デジタルとのシナジーにも可能性の余地はあります。生放送によるライブパフォーマンスという意味ではフェスに近い感覚なのかもしれないですし、そこも含めて『紅白』の音楽の届け方というものを追求していきたいですね。
──デジタルヒットいえばTwitterの日本トレンド1位、世界トレンドでも4位になった氷川きよしさんの衣装やビジュアルを生かしたパフォーマンスに期待が高まっています。
加藤 デビュー20周年で『紅白』も20回連続出場の氷川さんですが、ますます目が離せない存在になっていますよね。曲目や衣装、演出については当日のお楽しみですが、皆さんの期待を裏切らないこれぞ“2019年版・氷川きよし”というパフォーマンスを演出陣もがっぷり四つに組んでお届けする意気込みでいます。
──『NHKスペシャル』で大きな反響を呼んだ“AI美空ひばり”も話題ですが、極論を言ってしまうと、将来的にはどんなアーティストもAIで蘇らせて『紅白』でパフォーマンスさせることが可能になるのでしょうか。
加藤 テクノロジーとエンタメの融合は今後も『紅白』で挑戦していきたいテーマの1つですし、“AI美空ひばり”も優れた技術の結晶ですが、『紅白』でこの企画をやることを決めた何よりもの理由は「これから」という秋元康さん作詞プロデュースの“美空ひばりの新曲”が純粋に素晴らしいからです。僕も『NHKスペシャル』の収録に立ち会っていたのですが、(美空ひばりと縁が深い)天童よしみさんが涙を流していたように、リアルタイムを知るファンの方々が30年の時を経た今、ひばりさんの歌唱で聴きたい曲はこんな歌だったのではないのかと納得ができました。シンプルな言葉で深い感動を生む、「川の流れのように」もまさにそんな歌でした。僕はNHK入局以来ずっと芸能畑を歩んできたので、いかにテクノロジーが進化しても、音楽や芸能を通じた感動がそこにあることが『紅白』の企画や演出には欠かせないと思っています。