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吉井和哉、“感慨深い4年間”を経たソロ新曲「永遠に古くならない曲が完成」【インタビュー】

 吉井和哉から新曲「甘い吐息を震わせて」(10月8日デジタルリリース)が届けられた。日本テレビ系10月期ドラマDEEP『そこから先は地獄』主題歌となっているこの曲は、吉井のルーツである昭和40年代の歌謡曲、さらに現代的なR&Bやインディーロックのテイストが融合したミディアムチューン。美しくも切ない色気を滲ませながら、天国と地獄が混在する人生を描き出す吉井のボーカルがとにかく素晴らしい。

 12月からは全国ツアー「吉井和哉TOUR2025/26 WWI BLOOD MUSIC」がスタートする。さらにこの冬には、吉井の3年間に密着した映画『みらいのうた』が公開される。4年ぶりの新曲「甘い吐息を震わせて」を軸にしながら、ソロアーティスト・吉井和哉の現在地について語ってもらった。

「感慨深い4年間」を経てたどり着いた THE YELLOW MONKEYとソロ「それぞれの良さ」

――「〇か×」以来、約4年ぶりの新曲「甘い吐息を震わせて」がリリースされます。この4年間は吉井さんにとってどんな時期でしたか?

吉井 世の中的にもコロナがあったり、すべてのアーティストの方の活動が危ぶまれたし、あらゆる方が影響を受けたじゃないですか。その波がちょっと収まってきた頃に、僕が喉の病気(※2022年11月に早期の喉頭がんが判明し、23年年明けに根治)になって……感慨深い4年間でしたね。

――THE YELLOW MONKEYはコロナ禍の2020年11月に東京ドーム公演を開催。様々な制限があるなかで、果敢なチャレンジを続けてきました。

吉井 いろんな選択肢があったと思うんですよ。活動を止めたり、ペースを緩めることもできたんだろうけど、僕らの場合はステージに立つことで潜在能力みたいなものが高まるんじゃないかなと。火事場のクソ力を利用するというか、やっぱり根性世代なんで(笑)。

――スポ根的な(笑)。最近のステージでも“意識がもたらすパワー”という話をしていますよね。

吉井 ほら、「“風の時代”になった」みたいな話があるじゃないですか。物質的な豊かさや富ではなく、精神的な豊かさを求める時代になっていくという。THE YELLOW MONKEYの「ホテルニュートリノ」でもそういうことを書いたんだけど、目に見えないものに対する科学的な根拠も伴ってきているのかなと。スポーツの応援とかもそうだけど、人々が同時に祈ったり、念じることで起こるバイブレーションってあると思うんですよね。

がんの治療をして、去年の4月に東京ドームのステージ(「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 "SHINE ON"」)に立ったときもそう。あのときのエネルギーやオーディエンスの雰囲気にはそれまで見たことがないような神々しさがあって。今回のツアー(「THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 Sparkleの惑星X-ネ申-」)でも、細胞が活性化するような皆様のエネルギーを感じる瞬間はすごくありました。さらに声も出るようになったし、歌もだいぶ良くなってきたので、このタイミングでソロ活動を再開しようかなと。

――なるほど。THE YELLOW MONKEYが充実しているなかで、吉井さんにとってソロ活動はどういう位置づけになっているんですか?

吉井 僕のなかでもちょっと混乱してたんですよ、そこは(笑)。THE YELLOW MONKEYの解散から再集結した2016年まではソロをやっていて。バンド活動と同じくらいの年数になっていたし、(再集結後は)バランスが取りづらかったんです。それこそ再集結した直後は「楽曲がソロっぽいね」と言われたり。ちょっと悩んだりもしていたんだけど、時間が解決してくれたところもあるというか。イエローモンキーの楽曲やサウンドも新しくなっていったし、ソロはソロで自分のパーソナルなところを表現できて。それぞれの良さがあるなと実感できてますね。

〈天国地獄〉という歌詞は 「まさに僕の病気がそうだった」

――「甘い吐息を震わせて」も“ソロアーティスト・吉井和哉”にしか表現できない楽曲だと思います。この曲を作ったのはいつ頃なんですか?

吉井 2021年にソロアルバムの制作の準備に入ったときに、病気が発覚して。ちょうどソロツアーが始まった時期なんですけど、その時点で既にこの曲を作り始めてたんですよ。楽曲の形はある程度出来ていて、それがドラマ(『そこから先は地獄』)にもピッタリだということで、タイアップが決まって。ドラマのストーリーに沿って歌詞を書くことができたし、自分の病気のことを含めて表現できたのかなと。〈天国地獄〉という歌詞があるんですけど、まさに僕の病気がそうだったんですよ。人生って、世代によっていろんな地獄があるじゃないですか。天国もあるし。選ぶドアでどっちになるか……。上手くいってるときほど怖いですよ。

――〈会いたい人はどこにいる 会えない人はどこにいる〉という歌い出しも印象的でした。

吉井 それもドラマのストーリーを踏まえてるところがあるんですが、理想の相手をずっと求め続けている人っていると思うんですよ。20代、30代は特にそうかもしれないけど、目の前に理想の人がいても、「もっといい彼がいるはず」とか「もっとお金持ちで、カッコ良くて、優しくて」みたいな。人生における人との出会いって、面白くて難しい。そういうところもこの歌詞には入ってますね。今はマッチングアプリとかあるから、また違うのかもしれないけど(笑)。

――どこまでも理想を求めてしまうのは、今も昔も変わらない気がします。

吉井 そうですよね。もちろん一緒にいる人との関係を育てて、理想に近づけていくことも大事で。ときにはケンカもして、話し合って……って恋愛相談みたいになってますね(笑)。

――(笑)恋愛だけじゃなく、バンドメンバーとの出会いも不思議じゃないですか?

吉井 確かに。ビートルズなんて、ジョンとポールですよ? あまりにも完璧すぎて、もはや霊現象ですよ、あれは(笑)。ウチにも兄弟(菊地英昭/Gt、菊地英二/Dr)がいるけど、それも考えてみるとすごいですよね。イエローモンキーのライブのMCでもよく言ってるんだけど、本当にこの4人でよくバンドをやったよねって思います。

船山基紀、鶴谷崇、内沼映二3氏が 「国宝級のアレンジとミックス」

約4年ぶりとなるソロ新曲「甘い吐息を震わせて」をリリースする吉井和哉

約4年ぶりとなるソロ新曲「甘い吐息を震わせて」をリリースする吉井和哉

――「甘い吐息を震わせて」の編曲は船山基紀さんと鶴谷崇さん。船山さんは1970年代以降の歌謡曲を支えてきた音楽家です。

吉井 まず鶴谷崇さん――ソロ活動の長年のパートーナーですね――にアレンジしてもらったんです。コード感が今までとちょっと違ってて、それがすごくいいなと。さらに船山さんにもお手伝いいただいて、ホーンセクションとストリングスをお願いして。

ミックスエンジニアは内沼映二さんなんですよ。「長崎は今日も雨だった」(内山田洋とクール・ファイブ/1969年)から始まり、「YOUNG MAN」(西城秀樹/1979年)なども手がけたスーパーレジェンドの方で。国宝級のアレンジとミックスで、素晴らしいサウンドにしていただきました。

しかもお二人の前で歌のレコーディングをしたんですよ。すごく緊張してたんですけど、ドキュメンタリーのような歌が録れたんじゃないかなと。機械であれこれイジったりもしてないですからね。“メカラウロコ”と言いますか、永遠に廃れない、永遠に古くならない曲が完成して。うれしかったですね。曲は僕の財産で、ずっと残るものなので。

――船山さん、内沼さんが手がけてきた昭和のポップミュージックも、吉井さんのルーツですよね。

吉井 そうですね、自分の血肉になっている音楽なので。今流行ってるものを引っ張っていても限界があるし、それよりも自分のルーツだったり、そのときの旬なものを探りながら作っていくのがいいのかなと。レコード屋に行ったり、日々いろんな音楽を探しているなかで、自分の中でピントが合ったものを取り入れるやり方ですね。

――レコード屋、どれくらいのペースで行ってるんですか?

吉井 週3か週4くらいかな。週末とか、インバウンドの皆さんも含めてすごく混んでるんですよ。ある時期まではおじさんやおじいさんが多かったけど(笑)、今は若い人も多いです。海外でもレコードやカセットの音源に注目が集まってますからね。デジタルの良さもあるけど、芯の部分はやっぱりアナログ的なサウンドのほうがいい。我々の世代は昔堅気の作り方も知ってるし、今の若いアーティストから刺激を得ることもできるじゃないですか。年齢を重ねているぶん、キャパシティは広いんじゃないかなと思ってます。

「病気から学んだことも多かった」 闘病経たツアーは「自分の血になっている音楽を」

12月4日からソロツアーをスタートさせる吉井和哉

12月4日からソロツアーをスタートさせる吉井和哉

――そして、12月からは日本武道館公演を含む全国ツアー「吉井和哉TOUR2025/26 WWI BLOOD MUSIC」が開催されます。ソロのツアーも約4年ぶりですね。

吉井 イエローモンキーのツアーをやって、どこまでやれるか確かめられたところもあって。しっかり準備すれば歌えるようになってきたし、病気から学んだことも多かったんですよ。たとえば「CALL ME」(YOSHII LOVINSON名義のシングル/2005年)も今歌えばまた違って聴こえんじゃないかなと。

――病気から学んだというのは、どんなことなんですか?

吉井 説明するのは難しいんですけど、寿命を突き付けられて、命の限界みたいなものを感じると成長するんじゃないですかね。諦めが付くというか、覚悟が決まって、怖いものが一つ減って。ツアータイトルに“BLOOD”が入ってるんですけど、まさにこの数年間のなかで経験したことだし、“血=命”というか。自分の血になっている音楽、自分のベースにある音楽をやるというツアーですね。

――ルーツに戻るというテーマもあるんでしょうか?

吉井 それもあるかもしれません。自分が選ぶもの、受け入れているものは血が欲しがっているものだと思うんですよ。自分の血だったり、混じってもいいと思えるものを表現していくというか。制作も続いているので、アルバムまで到達できたらいいなと思ってます。

――制作自体も順調ですか?

吉井 順調かどうかはわからないけど(笑)、あまり悩まなくなってきましたね。以前は「これはソロかな」「こっちはバンドに持っていこうかな」と考えてたんですけど、やりたいことは「取っておこう」なんて思わないで、やったほうがいいなと。

――さらにこの3年間の吉井さんに密着した映画『みらいのうた』(監督:エリザベス宮地)の公開も今年の冬に控えています。

吉井 もともとはアルバムの特典になればいいなくらいの感じで始まったんですよ。僕をロックの世界に導いてくれた先輩がいて。彼が病気になって、援助したいという気持ちもあって撮影を始めたんですけど、その後、僕の病気が発覚したんですよ。そこからもまるで神様が脚本を書いたかのような出来事が続いて。結果として映画館でかけられる内容になったのはよかったのかなと。音楽ファンはもちろん、すべての人に共通するテーマなので、ぜひ観ていただきたいです。

インタビュー・文:森 朋之
写真:Taku Fujii/藤井拓
吉井和哉「甘い吐息を震わせて」
10月8日(水)デジタルリリース
日本テレビ系 火曜プラチナイト ドラマDEEP
『そこから先は地獄』主題歌

「吉井和哉TOUR 2025/26 WWI BLOOD MUSIC」スケジュール

12月4日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
12月13日(土) 愛知・アイプラザ豊橋
12月19日(金) 京都・ロームシアター京都
12月28日(日) 東京・日本武道館
1月15日(木) 東京・Zepp Haneda
1月20日(火) 福岡・Zepp Fukuoka
1月23日(金) 愛知・名古屋COMTEC PORTBASE
1月27日(火) 大阪・Zepp Osaka Bayside
1月31日(土) 宮城・SENDAI GIGS

ドキュメンタリー映画『みらいのうた』

ドキュメンタリー映画『みらいのうた』
2025年12月5日(金) 全国公開
監督:エリザベス宮地
出演:吉井和哉
配給:ティ・ジョイ
https://mirainouta-film.jp/(外部サイト)


■YOSHII KAZUYA Official Site
https://www.yoshiikazuya.com/(外部サイト)


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