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芋洗い坂音楽ストリート『クローズアップ! ビッグ・アーティスト @ さだまさし』

さだまさしのコンサート回数が、7月17日に4000回を突破する。日本人アーティスト史上初だ。40周年記念ベストアルバム『天晴〜オールタイム・ベスト〜』も好調。2週連続TOP10入りは『自分症候群』以来27年ぶりだ。今回から月イチ程度で編集長特権でスタートするビッグ・インタビュー。第1回はさだまさしさんにコンサートの極意を聞いた!

“懐かしのメロディー”にならないために大事なのは「忘れさせないこと」

――まずは、ソロコンサートを4000回も続けてこられたことの感想をお聞かせください。
さだまさしやっぱりお客さんに対する感動・感謝につきますよ。よく来続けてくださったな、と。過度にショーアップするようなこともなかったわけですから(笑)

――さださんのコンサートはショーアップされたステージセットではなく、トークを楽しみに来る人が多いですから(笑)。コンサートでは音楽だけを聴かせるのではないですよね。
さだもちろん、音楽を聴いてもらうのだけれど、音だけでいいとか、画像を見せて驚かせるとか感動させるとか、そういうものではなかったですね。たぶん、音楽を置きに行く場所が違うという感じです。楽曲というのは、あくまでも自己表現のなかの「聴こえるもの」。でも本当に一番大事なものは「聴こえない部分」なんですよ。それを上手に説明できない人は多いし、それを感動の種にして火を点けていける技術を持った人が日本にはあまりにも少ない。もったいないことだと思います。

――なるほど。
さだいまや音楽家は音楽だけやっていればいいという時代ではなく、そのなかで自分の音楽のクオリティをどのように守っていくかというと、ものすごく難しいですよね。ポピュラリティを失っていくと、説得力も失っていくじゃないですか。そうするとあれほど感動したはずなのに、その歌がくすんでくる。

――さださんの場合は、曲の輝きを失わせないためにも、トークで脳の異なる部分に働きかけて、楽曲の輝きを維持しているという感じなのでしょうか。
さだそれもありますが、懐かしのメロディーにならないために大事なのは「忘れさせないこと」です。ずっと、お客さんの耳元で歌うしかない(笑)。例えば、僕のコンサートで「精霊流し」や「秋桜」を聴いて「懐かしい」と言う人はいないんですよ。「北の国から」だって、ドラマ放映が終わって30年以上経つのに、「ああ、懐かしい」とは言われない。評価というのは“でき”だけじゃないですから。できだけで言ったら、音楽的に「スタンダードになるほど優れている曲なのかな?」と思う曲なのに、何回聴いてもいいというものはいくらでもある。音楽の感動って何か別のものなんですよ。

――ファンの方も何回も来ているんでしょうね。来場回数をファンの人に聞いたことはありますか?
さだいや、ないですね。おそれ多くて聞けないですね。一体僕のためにいくら使っているのだろうと考えると(笑)。ある男性ファンがいて、彼は年間数十回は来ています。ある時、彼に「大丈夫なのか、俺のコンサートにこんなに来て」と聞いたら、「大丈夫ですよ。普段、さださんのコンサートの時以外はずっと働いていますから」って答えるわけ。「じゃあ、働いた分、全部さだまさしに使っているのか」と聞くと、「いいんですよ。好きで来ているんだから」と。その彼が最前列に座っていたことがあって、何の曲だったかは覚えていないんですが、歌いだしたら号泣するんです。それを見たら、僕も涙が出そうになる。「彼は本当にさだましが好きなんだ」と思った時に、自分で「さだまさしって何だろう」と思いましたね。

さだまさしをやめようと思ったこともありました

――ひらがなのさだまさしは、自分であって自分ではないわけですね。
さだ自分ではないですよね。もう、さだまさしは自分ではないですよ。申し訳ないけれど、自分のためだったら、こんなスケジュールはこなせないです。僕はみんなのさだまさしのためだから、こんなに無理ができる。本当はさだまさしをやめようと思ったこともありました。でも、年に数十回来る彼が最前列で泣いているのを見ると、「はい、ここで終わり、なんて言えないな」って思うんですよね。必死に働いて、お金のないなかで、さだまさしのコンサートに行くために頑張っている人がいる。だから、僕はその人たちに働きかけることを絶対に怠らない。

――過去のコンサートのなかで、印象的なものはありますか?
さだ山口県の山陽小野田市民館でやった時、立ち見が殺到して、入れてあげたいんだけど、もうこれ以上は無理という状況になって、ステージの上にお客さんをあげたことがあります(笑)。それと、やっぱり去年のバースデーコンサートはちょっと異常でしたね。

――60名のゲストとの全曲コラボレーションでしたからね。あれはさださんじゃないと対処不可能ですね(笑)。
さだあれはすごかった! もう1回やるかと言われたら、遠回しに断ります(笑)。あれは進行リハを一切やっていないんですよ。だから、20分で3組終わる予定が、3組終わった段階で55分過ぎてましたから(笑)。そういう意味で罪作りだったけれど、面白かったし忘れられないコンサートでした。

――4000回も特別なステージになりますか?
さだバースデーコンサートと同じく、フジテレビのきくち伸プロデューサーに預けたんです。あんな無茶はもうしない……、と思う(笑)。さだまさしでどう遊んでくるんだろうな。楽しみではあるし、不安でもありますね(笑)

――先日発売されたベストアルバム『天晴』のセールスが好調です。
さだ今回のベストはあえて一般の人たちからの楽曲投票による選曲にしているんです。たとえるとお店のオススメじゃなくて、常連さんが勧めてくれるメニューみたいなものかな。ここに来たらこれ食べなきゃダメだよ、という。だからヒットした曲ではないのに「償い」とか「修二会」とかが入っている。

――「償い」は、裁判の判決で曲名が出て社会的に話題になりましたし、「修二会」のアグレッシブなアレンジと演奏はファンの方は大好きで、隠れた名曲ですよね。
さだでも、ヒットはしていません。そもそも、さだまさしにはオリコンチャート的なヒット曲はあまりないんですよ。「雨やどり」とか「精霊流し」とか「防人の詩」とか、そんなところじゃないですか……。「親父の一番長い日」「天までとどけ」「関白宣言」「道化師のソネット」…、ま、結構あるか(笑)

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