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“空耳アワー”戦略の楽曲「留学生」が話題、SNS発ヒットの法則に新たな潮流
SNS発でブレイク、MONKEY MAJIK&岡崎体育
一方、岡崎体育は同志社大学卒業後、一般企業に就職するもミュージシャンの夢をあきらめず、ニコニコ動画への投稿を続けながらメジャーデビューを果たした。2016年に公開された「ミュージックビデオ」という楽曲のMVでは、“カメラ目線で歩きながら歌う…突然カメラを手で隠して次のカットで場所移動している”といった「MVあるある」を再現。
その他、『MUSIC STATION』(テレビ朝日系)に出演した際、自ら口パクであることを歌詞内で告白するなど、徹底的に既存の音楽をおちょくる“色モノ”感を出しながら、最近では『ポケットモンスター サン&ムーン』(テレビ東京系)の主題歌で小学生向けの超ド直球青春ソングを歌い、エンディングでは合唱コンクールの課題曲にもなりそうな合唱曲を提供するなど、圧倒的な音楽的才能とSNS時代を見事に生き抜くしなやかさを見せている。
得意分野を掛け合わせた“空耳アワー”戦略で人気コンテンツをブラッシュアップ
一方のMONKEY MAJIKは「Yeah,hold me tight(=アホみたい)」、「Walked around the world(=わからんわ)」と80`s風おしゃれディスコサウンドに乗せてヤジを飛ばす。さらに「でもやっぱ不安だもん 気まじぃな 辛ぇ」と日本語をいかにもMONKY MAJIK的に英語っぽく聞かせながらコラボする。その裏で英語詞ではラブソングを歌っているという仕掛けも見事だ。
ただ、こうした空耳的な要素を取り込んだ楽曲は過去にもあった。15年ほど前には、O-Zoneのルーマニア語の楽曲「恋のマヒアヒ」のサビが「飲ま飲まイェイ」などの日本語に聞こえるとし、大型掲示板サイト『2ちゃんねる』発でFlashムービーが話題に。また、LOVE PSYCHEDELICOやマキシマムザホルモンの歌は、“英語に聞こえるが実は日本語”というノリで認知され、“カッコいい”とされている。さらに言えば、初期のサザンオールスターズの曲の歌詞も“英語っぽいノリを持たせた日本語”として知られ、その革新性も人気のきっかけだろう。更に後の岡村靖幸などにも洗練された形で継承されているとの説すらある。
つまりは、以前から「英語に聞こえる日本語・日本語に聞こえる英語(外国語)」というのは、人気のコンテンツだったとも言えるわけだ。だが、本来、空耳的な面白さは聴き手の発見から生まれるもの。MONKEY MAJIKと岡崎体育のコラボ楽曲「留学生」はそれをあえて意図的に作り出すという逆転の発想があり、そこに耳心地の良いハイレベルな楽曲を掛け合わせたことが功を奏したのである。
“実力派”再評価の傾向? 職人技と親しみやすさの融合がSNSブレイクの鍵に
考えてみれば、2016年にドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の主題歌でヒットした星野源の「恋」も、振り付け(通称「恋ダンス」)はポップで親しみやすいのに、真似してみると実は難易度が高い…という意外性がある。だからこそ「我こそは」と“完コピ”ユーザーが続出して大ブレイクした。
また、先述のDA PUMP「U.S.A.」のヒットも、「どこか古臭くてダサいけど、 “振り切った”カッコよさ=ダサかっこいい」があったとされている。他にも、X JAPANや美空ひばりなどの名曲をすべて山下達郎風にカバーして話題になった“シティポップ芸人”のポセイドン・石川も、単なるモノマネを超えた“リスペクト芸”として評価が高い。
ジャンルこそ違うが、TwitterやInstagramでは、プロのアーティストに限らず一般ユーザーの身近な題材を本物以上にリアルに描写した絵や、ダンボールなどのどこにでもある素材で作った精巧なオブジェ、凝りに凝った“キャラ弁”など、アマチュアでありながら“職人技を見せる作品”が大反響を呼んで度々バズっている。SNSの特性である“親しみ”の裏に職人のような高度なテクニックや制作者の“熱量”があることで、爆発的なヒットを生んでいる。
そういう意味で今回の「留学生」も、実力のともなった2組が親しみのある“おふざけ”を真剣に表現したからこそ、SNSユーザーからも「ふざけてんのかと思ったら、すげーかっこいい」「最高の化学反応」「ふざけられる余裕があるかっこよさ」などと好評を得ているのだろう。
そうした土俵で「一周まわってカッコいい」、「振り切っている」として評価されることは、実力派たちの他の作品にもスポットライトが当たり、さらにその実力を広めることに繋がる。アーティストが本気でふざけるかっこよさを追求するのも、今どきのブレイクの作り方のひとつと言えるのではないだろうか。
MONKEY MAJIK × 岡崎体育「留学生」
昨年リリースし、YouTube やTikTok 上でも大きな話題となったお笑い芸人サンドウィッチマンとの「ウマーベラス」や、名曲「クリスマスキャロルの頃には」をリメイクした稲垣潤一&GAGLE との「クリスマスキャロルの頃には-NORTH FLOW-」をはじめ、音楽性、キャラクター、パフォーマンスなど、MONKEY MAJIK のメンバーが惹かれてやまない10 組の男性アーティストとのコラボレーションが実現。新作はもちろんセルフカバーやリミックスなど全11 曲を収録。
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