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没後20年、hideの半身・I.N.A.が語るミュージシャンとしての姿 「hideみたいな未来人が音楽を進化させていく」

 1998年5月、X JAPANのギタリストHIDEであり、ソロアーティストhideさんが亡くなって今年で20年が経つ。hide with Spread Beaverのメンバーで、その結成以前からhideさんの共同プロデューサーとして“半身”ともいえる存在だったI.N.A.が、hideさんとの音楽制作の日々を記した書籍『君のいない世界〜hideと過ごした2486日間の軌跡〜』を執筆。20年経ってなおファンを拡大しているhideさんのミュージシャンとしての真の姿を語ってくれた。
Profile I.N.A. (hide with Spread Beaver)
hideさんの共同プロデューサー&プログラマー、X JAPAN のサポートメンバーとして、日本のロック界を裏側から支えてきた音楽プロデューサー。さまざまなアーティストへ唯一無二のサウンドを提供する傍ら、IID 世田谷ものづくり学校にスタジオを構え、音楽ワークショップ「電脳音楽塾」を展開中。

語られなかった音楽と向き合うhideのことを書きたかった

(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by HIDEO CANNO(CAPS)

(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by HIDEO CANNO(CAPS)

――hideさんが亡くなられて20年。hideさんのことを度々語ってきたI.N.A.さんが、この度執筆に踏み切ったきっかけを教えてください。
昔、オフィシャルのサイトで「hide with I.N.A.」というタイトルで1998年にレコーディングした時の日記を公開していたんです。20年近く解放されていて、今も見に来てくれる人がいる。ヤマハさんからそのブログを本にしませんか? という話をいただいたことがきっかけです。ですが、すでに20年解放しているものを本にするのはどうなんだろうという思いがあり、自分で新しくhideとの音楽制作の話を書くことにしました。この本では、当時のブログでは描かれていない話を記しています。

――存命時に中高生だったファンもは今は30代〜40代。当時は今ほど通信機器が発達しておらず、アーティストの情報に触れる機会も少なかったと思います。hideさんは、「よく知っているけれど、よく知らないアーティスト」という一面もあります。
その通りですよね。本を書くにあたって、過去のhideのインタビューを読みあさりました。「アルバムができました」「こういう曲です」「酒飲んで暴れた」というような記事はわりとよくあった。ですが、意外にも音楽制作に関わる話はなかった。そこで今回は、音楽と向き合っているhideの話を書きたかったんです。

現代の3DCG技術を予見していたかのような先見性

――ミュージシャンとしてのhideさんについてお聞きしていきます。hideさんは当時PCの音楽ソフトですら発達していなかった時代から「俺はいずれCGアーティストになって、hideをプロデュースしていく」と言ったエピソードも紹介されていました。
本を書いていて、改めてきづいたことがたくさんあった。彼のアイデアとか、先を見る目がすごかったと改めて思いました。当時僕がレコーディング中にフォトショップで写真を加工して遊んでたんです。それを発展させたことを当時から考えていたんでしょうね。そもそも“ビジュアル系”を作った人ですから。それを、動画、立体でやろうとしていた先見性がすごいですよね。

――作曲能力、演奏能力、レコーディング、ライブ、カリスマ性、色々な要素がありますが、共同プロデューサーであるI.N.A.さんはhideさんのミュージシャンとしてどのように見ていましたか?
素の松本秀人とミュージシャンのhideが分かれていた。“hideを表現する力、演出する力”に長けていましたね。彼を撮っていたフォトグラファーの方も「一流のモデルが備えているものを彼(hide)は持っている」といっていました。今回活字にしてhide を掘り下げて考えて行った時に改めて“こういうことだったんだ”と今更気がついたことがたくさんありました。

――まさにhideさんの半身ともいえるI.N.A.さんですが、近くにいてhideさんが悩んだり、壁にぶち当たったりしたような場面はありましたでしょうか。
壁に当たって悩むという感じではなかったですね。新しいことをどんどん取り入れていくことがすごい好きでした。ビジュアル系を作ったのがhideで、それを勝手に覆してしまったのもこの人。ビジュアル系が浸透して、みんな黒ずくめになったら、自分はカラフルなジャージを着てみたり…。hide本人がよく「俺はサメと一緒で止まったら死んじゃう」と言っていました。悩むよりはまず音を出してみようというタイプ。彼はアーティストである前にギターキッズだったと思います。

hide with Spread Beaver  (C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by YOSUKE KOMATSU(ODDJOB)

hide with Spread Beaver  (C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./photo by YOSUKE KOMATSU(ODDJOB)

――たしかに、著書でのhideさんとI.N.A.さんの試行錯誤の日々は音楽愛・バンド愛にあふれていましたね。
バンドは4人5人集まらないと音楽にならない。今はバンドの形も概念も変わってきているけれど、hideの場合はやっぱりギターキッズでありバンドマンでした。X JAPANが解散した後も、ソロで活動してるのにhide with Spread Beaverというバンドを作っちゃった。やっぱりバンド活動をしたかったんだと思います。

――I.N.A.さんがhideさんと出会った1991年時点ですでに日本で最も有名なバンドの、一番有名と言ってもいいギタリストだったわけですが
出会った時からずっと変わらず、彼はギターキッズでした。

音楽は“普遍的なもの”時代に合わせて洋服のようにアレンジしていく

――没後20年にして、今年もたくさんのプロジェクトが立ち上がっています。hideさんが長く愛される理由はどこにあるのでしょうか。
それは色々実験を重ねていく中で、オリジナルのhideサウンドを作っていた。言葉にすると簡単ですが、流行のサウンドはみんな真似して広まっていくものです。hideの場合は流行りとは違うベクトルで新しいものを作っていた。研究を重ねて自分だけのオリジナルサウンドに仕上げていたんです。当時はそれをやりたい人がいてもやれない環境だった。

――例えば、著書にも描かれていたようにドラムの音色を1音1音サンプリングで合成したり、グルーブ感と無機質を融合したサイボーグロックであったり、誰も考えないような従来の概念を覆す創造性の部分でしょうか。
そうですね。とにかく創作の努力を惜しまない。当時は、コンピューター(音楽ソフト)でできないことのほうが多かった時代なんです。“こういうことがやりたい”と思っても、やり方がないんです。でもどうにかしてやれる方法を探してみよう、って。そんな風に手作業でやってたことで“発想が優先していた”んですね。hideが初期衝動を吐き出して、僕が形にする、というところから多くが始まっています。

――hideさんの楽曲は20年以上たった今も色褪せないクオリティーということもよく言われていますね。
とにかく新しいものが好きだし、音楽もファッションも新しいものを自分の中に取り入れてhideというフィルターを通して昇華させていったと思います。俺のものにしちゃえってね。何かの要素を取り入れた時は得てして「これって〇〇っぽいね」と言われたりするものですが、hideのフィルターを通すとキャッチーになるんですよね。

――本当は3歩先を行っているけれど、それを1歩先を行っているように見せるというようなことでしょうか。時代が進んでhideさんに追いついてきている?
hideがよく言っていたのが、楽曲自体は“普遍的なもの”で、アレンジは洋服みたいに時代に合わせて変えていけばいい。自分の曲を色々なパターンで作っていく。場所と時代に合わせて服を一枚羽織るみたいな感覚を音楽にも使っていました。セルフカバー楽曲もたくさんありますが、それはhideの想いでもありますね。

――現在は、SNS でファンとアーティストが直接やり取りする時代になりました。その、流れを作ったのはhideさんではないかと考えています。ファン交流は間近で見ていてどうでしたか?
インターネットも早い時代から手を付けていました。96年のツアーの時にはもうHPも開設していましたから。インターネットがどういうものかまだわからない時代に、メールボックスに届いたファンからのメールに返事を出したり、X JAPANのファンクラブの会報もhideが仕切っていましたね。ファンとの架け橋になる役割っていうのはその時から積極的にやっていたと思います。

hideみたいなアーティストが音楽を進化させていく

  • 写真提供:UNIVERSAL J

    写真提供:UNIVERSAL J

――共同プロデューサーであり、hideの半身であるI.N.A.さん、遺されたモノ、継ぐべき遺志というものはありますか。
hideファンの人達に彼の音楽を届けて行きたい気持ちはもちろんあります。ですが、遺志を継ぐなんて気持ちにかられたことは一度もないです。元々ふわっとhideとの関係が始まりましたから。僕はやっぱりこの人(hide)と音楽をやっているのがただただ楽しかったんです。ライフワークじゃないですけれど、「子 ギャル」(※過去膨大なhideの音声データを基に、ヤマハの歌声生成ソフト「ボーカロイド」で生成した音声トラックをI.N.A.が肉付けして完成した楽曲)を作った2014年頃、ふと、多分俺はずっとhideのことをやって行くんだろうなと思いました。

――「ただただ楽しかった」…hideさんはクリエイターを刺激する存在だったんですね
本当にその通りだと思います。どれだけビッグになっても、しっかり人の意見を聞くんです。バンドのツアーもスタッフが100人くらいいるんですが、立場に関わらず面白いアイデアがあったら言ってくれというスタンスでした。彼のために何かをやってあげたくなるんです。人を動かすプロデュース能力も長けていたと思います

実際に、亡くなった後にもいろいろなhideのプロジェクトが立ち上がっています。昨年もhideの3Dホログラムライブをやりましたが、ああいうのは全部hideの身内が考えたことではなくて、「hideさんでこういうことをやってみたい」という話が来るんです。クリエイターの人たちがhideという素材で何か新しいことをやりたくなる、そういう存在かもしれません。

(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD.  (C)DMM.futureworks/hide crystal project presents RADIOSITY

(C)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD.  (C)DMM.futureworks/hide crystal project presents RADIOSITY

――まさに、hideさんが生前語られていた、「CGアーティストhide」としての3Dホログラムライブでしたね。
「子 ギャル」の CDもまさにそうじゃないですか。hideは発想が未来的で、彼が言っていたことが現実になっていく。“こういうことやりたい”とhideに言われて、当時はやり方が見つからず、アナログな手法でやってみるんですが、後に音楽ソフトで簡単にできるようになったり…。一緒に活動する中で何度もそういうことがあった。hideみたいな人が音楽を進化させていくのでしょうね。

――hideさんの音楽を、今後もI.N.A.さんが手掛けていくのでしょうか?
そういう大それた考えは一切ないです。今思い返すとhideに関しては、俺から何かをやりたいと言ったことは一度もないと思います。そんな話があればその時考えますが、その際は、きっと僕がやることになるんでしょうね(笑)

――最後に、hideファンの方へメッセージを
X JAPANもhideもファンの年齢が幅広いし、50代・60代の僕らと同じ世代のファンもいます。当時キッズだったファンも今は30〜40代になって家族ができてその娘さん息子さん、孫世代に差し掛かっています。3世代ファンがついたらその音楽は普遍的なものになっていくそうです。今まさに僕らの手を離れても続いていくというフェーズに差し掛かっています。

月日が経って、色々な理由で音楽から離れた人がいるかもしれない。この本や来月公開されるhideのドキュメンタリー映画など、20年のプロジェクトがまた音楽を手に取ってもらうきっかけになったらいいですね。この本はhideと一緒に楽しく過ごした時間がたくさん詰まっていて、決して悲しい話ではありません。ファンの方の自分の青春の一ページに重ね合わせて楽しんでもらえたら嬉しいです。

(撮影/近藤誠司)
■I.N.A. (hide with Spread Beaver)
INA OFFICIAL WEB SITE :http://www.AREA014.com/
電脳音楽塾 :http://www.pinxrecords.com/
■『君のいない世界〜hideと過ごした2486日の軌跡〜』
(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)2018年 4月28日発売
オフィシャルサイト:http://www.ymm.co.jp/feature/kimiseka.php
■ドキュメンタリー映画『HURRY GO ROUND』
あの衝撃の日から20年。hide初心者の俳優・矢本悠馬がナビゲーターとして、その直前3ヵ月間の軌跡に迫るドキュメンタリー。最期の楽曲「HURRY GO ROUND」に秘められたメッセージとは…。

監督:石川智徹
ナビゲーター:矢本悠馬
主題歌:「HURRY GO ROUND」
オフィシャルサイト:https://www.universal-music.co.jp/cinema/hurrygoround/
(C)2018 「HURRY GO ROUND」制作委員会

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