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【水曜日のカンパネラ】コムアイインタビュー「スーパーマンの出現を想像して、応援するような気持ち」
閉塞感のある時代に、スーパーマンに出現してほしい
コムアイ 今回のアルバムは、やりたいことがあったので、アルバムを作ると決まった時、「こういうコンセプトで、こういうジャケにしたい」って、(サウンドプロデューサーで共同制作者の)ケンモチ(ヒデフミ)さんやワーナーのスタッフに、集めていた資料を見せて。「UMA」(メジャー第1弾EP。2016年6月22日発売)の時は、そういうタイミングがなくて、タイトルが決まって曲が出来てきて、最後に作品の役割がわかった感じだったんです。『ジパング』(インディーズ5thアルバム。2015年11月11日発売)と、今回の『SUPERMAN』では逆に、全体の像から逆算して点を作っていく手順でした。
――作品によって、制作への関わり方が違うんですか?
コムアイ 単純に、私の準備が間に合えばなんですが。音源を送りあって、「こういうのがいい」と言ったり、曲によってはどこが歌になるかというところから話したりします。節目節目に、「こんな曲をやりたい」と話して種をまいておくのが一番の仕事です。ただ、普段から、“自分は世の中に対してこんなことを考えている”っていう話はするけれど、音楽の内容に思想とかが入ってくるのは好きじゃない。歌いづらかったり、重たくて歌う気にならなかったりする気がして……。とはいえ、今回のアルバムでは、私が真面目に考えていたことをコンセプトに絡ませたいなと思って。
――真面目に考えていたこと?
コムアイ このアルバムは、“2017年にスーパーマンがいない!”ということが前提になっているんです。誰もが閉塞感を覚える時代に、世の中をガッと変えてくれる人物に現れてほしい。その出現を待つイメージで作ったんです。だから、スーパーマンの出現を想像して、その人を応援するような気持ちで歌っている。スーパーマンの出現を心待ちにしているその目線と、あとは未来を見据えているという意味で、ジャケットも、敢えて“目”にフォーカスしたんです。
――なるほど。そう言われてみれば、入り口はポップなのに、聴くだけで明るい未来を思い描くエネルギーが湧いてくる気がします。
コムアイ 出来上がったものを、少し距離を置いて聴き直したとき、全曲面白いなと思った。1曲1曲のクオリティとして、全部やり切れて、行き切れてるのが良かったです。パフォーマンスをする上では、主観的な楽しさは大事だし、こちら側が心から楽しんでいれば、聴く人にも伝わると思うんです。そういう意味で、このアルバムに入っている曲は、全部かなりの反響があると思います。そこは自信があります。
コムアイの判断基準は、そこに“希望”と“元気”があるかどうか
コムアイ あぁ……(少し考えて)“希望を感じるかどうか”っていうのは大きいかもしれない。あとは、“元気”であるかどうか。ときどき、自分が歌ったものを聴いて、行ききってないというか、元気が足りないと思う時もあります。……もうひとつは、“新しさ”かな。「こういう曲、もうあるじゃん」っていうものなら、出す意味がない。タイミングも大事だから、「今出してどうすんの?」って思うこともある。今の時代って、掘り起こせばいくらでも昔の曲が聴けるじゃないですか。だから、何かで突出してないとっていうのは、ケンモチさんも私もいつも考えてますね。
――新しいもの、突出したものを発表していくためには、常にアンテナを張り巡らしているんですか?
コムアイ そうですね。時間がある日は、いろんなものに触れます。体力はそんなにないし、寝るのは好きだけど、実はゆっくり休んでもあんまり元気にならないんです。「あ、これすごいな」って思うものを見た方がよっぽど元気になる。そこに希望があるかどうかで、私の元気は格段に変わる。面白いMVを見つけた時も元気になるし、ケンモチさんからいい曲が送られてきて最初に聴けるのも楽しいし、誰かが言ったことで、「それ面白いね!」というのがあったらすぐに実践してみたり。私の場合、頑張れる動機は希望との出会いの中にあるのかもしれないです。
――ちょっと話は変わりますが、毎回、歌詞が複雑ですが。どうやって覚えてるんですか?
コムアイ たとえばバイオリンを弾く人だと、“楽譜を指で覚える”と言うじゃないですか。私もそれと似ていて、流れで覚えていますね。寿限無とか、十二支とかみたいな感じ。干支で「羊年の次は?」と聞かれたら、「子丑寅……」って絶対最初から考えちゃうじゃないですか。歌詞も、最初から言わないとわからなくなっちゃう。口で覚えてるのかな。とはいえ、ライブで結構間違ってます(笑)。