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ORICON NEWS
ZOLA『ボカロから飛び出した三次元ユニット』
ボカロソフトから飛び出した“エアボーカルグループ”
左からみのルン、なのっくす。、まうい
インタビューに応えるなのっくす。
ユニット・ZOLAはあたかも歌っている風に振る舞ういわば“エアボーカルグループ”。しかし、その歌声は彼ら自身の提供した声素材によって合成される。異様に進化したリップシンク最終形態と捉えることすらできるだろう。メンバーはいずれも男性ファッション誌の人気読者モデルであるなのっくす。/みのルン/まういの3人。ZOLAについて、中学生の頃からボカロ曲が好きだったというなのっくす。は、「ひとりのリスナーとして大好きだったボカロの世界に参加できるのは、驚きと感動です。初めて製品版の公式デモ曲「BORDERLESS」(※デビューシングルM2、作詞/森雪之丞 作曲/浅倉大介)を聴いたときは、自分が歌っていない、というより聴いたことすらない曲を自分が歌っているようで、すごく不思議な感じがしました」と振り返る。
ボカロ10周年を記念してリリースされた『ZOLA PROJECT』は、3人の男性の歌声データと豊富なプラグインを同梱。ソロ、ユニゾン、コーラスを自在に“歌わせる”ことが可能なパッケージだ。10代〜20代前半の男性約40人、のべ100時間以上に及ぶレコーディングを経て選ばれた3種の声は、それぞれKYO(なのっくす。)、YUU(みのルン)、WIL(まうい)というキャラクターを付与され、すでに多数の楽曲が一般ユーザーによって自由に生み出されている。
「男声グループライブラリは大きなチャレンジでした。それぞれが特徴的で個性的でありながら、ユニゾンやコーラスで重なったときに調和しなければならない。三者三様と三位一体を両立させるわけです。実は開発当初から、中の人のユニットデビューもあり得るという前提で動いていました。声だけでなく、外見やそのバランスなどにもある程度までこだわりを持って候補を絞り込んでいきました」(中村研究員)
ボカロファン層の拡大に期待
中村拓哉研究員(ヤマハ 事業開発部 yamaha+推進室 VOCALOIDプロジェクト)
鶴谷紗江子研究員(ビクターエンタテインメント 制作本部 カラフルレコーズ 制作グループ)
「カラフルレコーズというレーベルは、新しい文化を創出できるような新人輩出が使命のひとつ。すでに様々なボカロPさんがそれぞれの「ZOLA」の世界観を提示してくれていますが、世界展開を見据えてボカロソフトをつくっているヤマハさんとともに、いわば“ビクターさん家のZOLA”として、ひとつの解釈を示せたらと考えています。デビューシングル「トウキョウジェネレーション」は、ぺぺろんPさんの作曲。製品版で推奨されている音域よりちょっと高い音域で歌わせて街鳴りを意識したり、エレクトロ寄りのサウンドに仕上げたり、アレンジの毛蟹さんにも力を入れていただきました。まさにトウキョウから世界へ発信するユニットとして、本気で取り組んだ自信作です」(鶴谷研究員)
今回デビューする3人は、あくまでプロフェッショナルによって提示されるひとつの形であり、一般ユーザーがそれぞれ自由に作り上げていくZOLAとパラレルな存在ということだろう。3次元世界で会うことが可能で、握手もすれば喋りもし、もちろんステージでは踊るボーカロイドキャラクター。そのパフォーマンスはカリスマ振付師として知られる香瑠鼓(かおるこ)氏が担当、まさに本気の体制となっている。
「まういはリズム感がしっかりしていて、ダンスで引っ張ってくれる。みのルンは空手をやっていたせいか、動きがダイナミックで型が決まる。で、実は僕、ダンス未経験で…正直、必死です。表情など、細かな部分にも気を配らないと、ちゃんとかっこよくならないんですよね。ZOLAのソフトと同じように、クールで無機質な方向でも、熱くて本物の人間に近い方向でも、何でもこなせるようにならなきゃいけないと思っています。いつか実際に僕らがボーカルを担当しても構わないように、歌も訓練していきたいですね。中の人がこうやって外に出るのは初めてだと聞いていますので、ZOLAというボカロソフトの世界発信を少しでも手伝えるよう自分たちのパフォーマンスを磨いていきたいです」(なのっくす。)
読者モデルである彼ら3人にデビュー前からついているファン層はもちろん、若年層にとってはもはやボカロ楽曲への心理的な壁がない。ZOLAはそうした既存のボカロ音楽への入口をまたひとまわり大きく拡大することになりそうだ。
(文・及川望)
関連リンク
・VOCALOID 3 Library ZOLA PROJECT
・プロフィール/売上