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パスピエ『個性的な存在感でフェスでも話題!“女子”が鍵となる次世代シーンの注目株とは』
今までで一番、端的に紹介でき、かつ刺激的である作品に
「バンドの形態としては、よくある楽器構成なんですけどね(笑)。でも僕らとしては、人と違うことをあえてやろうと狙っていたわけではなく、自分たちがもともと興味を持っていた音楽やジャンルが、そもそも他の人とは違っていて。興味の赴くまま進んで来たことが、現在の結果に繋がったのだと思います」(成田ハネダ)
パスピエは、昨年1月にiTunesが発表した『今年ブレイクが期待できる新人アーティスト』のひとりに選出。それを受けて、数々のロックフェスに出演するほか、ワンマンツアーを行えば全会場ソールドアウトするほどの人気。急激に状況が変化するなかでも、大衆に迎合することなく、アイデンティティを貫くことで、個性が突出した。2ndフルアルバム『幕の内ISM』は、和洋折衷、時代混合。熱いロックサウンドと、それに対照的なフワフワとしたボーカル。80年代ニューウェーブを彷彿(ほうふつ)させ、歌謡曲っぽさ、アニメやゲームの曲として使われてもおかしくない壮大な楽曲もある。ボーカルの大胡田なつきから発信されるアイディアと、クラシックやメタルなどメンバー個々の音楽的ルーツを自由に表現することで、より“パスピエらしさ”を発揮した。
「今までで一番、僕らを端的に紹介できて、かつ刺激的である作品になったと思います。でも決して、世の中がこうだからこうしようとか、最初からこういう12曲を作ろうとか、何かコンセプトを考えていたわけではありません。そのときどきで、自分たちが興味を持ったことや、面白いと思った言葉をきっかけにして曲を作り、自分たちにとって新しいことをしたいと考えています。だから、基準はあくまでも自分たちです。音楽シーンや世の中ということを意識しすぎると、自分たちらしさが薄れていってしまう怖さがある。聴く人も成長し、新たなリスナーも増え、時代が変わっていく、そんななかでも変わらず一貫した僕らのアイデンティティを表現できた作品です」(成田)
「歌詞も音も、今の私たちらしさを、そのまま音にできたと思います。ライブを意識した前作とは違って、文章を推敲するみたいな感じで、歌詞や音を作った曲が多いのですが、一瞬のものはきれいで大切だけど、何度も重ねたものも同じくらいきれいだし大切だと、すごく素直に思えました」(大胡田なつき)
枠に収まり切れていない感じパスピエがやりたいこと
「そこまで考えたことはなかったですけど(笑)。私が何かを形にして表現したいと思ったのは、小学校4年生のときで、そのときに考えていたことや作った世界から、今の私ができています。当時はマンガが好きで、確かに女の子の絵をよく描いていました。女の子っていうのは、プリズムのようにすごく多面的な生き物だと思うんです。実に女の子らしい面もあれば、ときには母親の顔もあって、こっちでは素直だけど一方では嘘をついていたりとか……。私の書く歌詞は、曲ごとに自分のなかにある多面的な部分から、ひとつを取り出して書いています。だから、いたずらっぽい歌詞もあれば、恋愛をしている女の子の歌詞だったり、いろいろあって。人間の多面性を表現する上では、女の子というのは、非常に分かりやすく、人の心を表現しやすいモチーフだったのだと思います」(大胡田)
『幕の内ISM』のジャケットイラストは、幕の内弁当を食べるオリエンタルな雰囲気の女性が描かれ、非常にシュールで秀逸だ。初回限定盤パッケージは開くことができ、なかにはお馴染みのセーラ服の女の子がいたりする。
「今回は色をたくさん使いたいと思っていて、幕の内弁当から発想を広げて、曼荼羅(まんだら)をモチーフにしました。幕の内弁当からの曼荼羅って、怒られてしまいそうだけど(苦笑)。こういうアートワークを含めた表現が、パスピエです。何かを想像するきっかけみたいなものになってくれたらうれしいです」(大胡田)
「枠に収まり切れていない感じや、統制が取れていそうでいないところが、すごく大胡田らしい。でも、それこそが、パスピエがやりたいことでもあります」(成田)
音楽シーンの多様化については、考え方も様々で、意義を唱える声も確かにあるが、こういう面白い作品が聴けるなら悪くない。今後もこういう作品が、まだまだたくさん生まれてくるだろう。そんな時代において『幕の内ISM』というタイトルは、なんとも言い得て妙。どれから手を付けようか、迷ってしまうのもまた一興だ。
(文:榑林史章)
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