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武部聡志プロデュース『ジブリをうたう その2』 「熱量と愛情をかけて作られた作品は、人の心を動かすと信じています」

 幻想的な世界を舞台に、豊かな表現力で人生の喜びや悲しみを描きだしてきたスタジオジブリの作品。アニメはもちろん、物語の深みを演出する音楽も人々の心に響く名曲が多い。そんなジブリ音楽に光を当て、大きな話題となったスタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう』の第2弾『ジブリをうたう その2』が2月25日にリリースされた。プロデュースを手がけたのは、キーボーディスト、アレンジャーとして数多くのアーティストのサポートを担う作・編曲家、音楽プロデューサーの武部聡志氏だ。映画『コクリコ坂から』『アーヤと魔女』では音楽を担当するなど、スタジオジブリ作品と縁の深い武部氏が、日本の音楽シーンをけん引するアーティストに敬意を表しつつ、ジブリ音楽への愛を再び形にした。

3月には東京と大阪で『ジブリをうたう コンサート その2』も開催

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■アーティストとの信頼関係が生んだ珠玉のトリビュートアルバム

 『ジブリをうたう その2』の制作に乗り出そうと考えたのは、2024年3月に『武部聡志プロデュース「ジブリをうたう」コンサート』を開催した時だったと振り返る。

 「前作のアルバム『ジブリをうたう』は、リスナーの方からはもちろん、作品に参加していなかったアーティストの方からも好評でした。『第2弾を作るときはぜひ参加させてほしい』という声も多かったんです。それに、観客の皆さんが実に楽しそうにご覧になっていて、出演してくれたアーティストの方たちも本当に幸せいっぱいといった感じでステージに立っていたんです。その光景を見て『ジブリをうたう』の続編を作ろうと、そのコンサートの日に決めました。そして、続編を作るならば、僕が日頃から親しくしているアーティストだけではなく、注目しているミュージシャンや、一緒に音楽作りをしてみたいと考えていた方にもお声がけしたいなと思ったんです。前作以上に幅広いラインナップでお届けしたいと考えていたら、構想から2年を費やしてしまいました」(武部聡志氏/以下同)

 乃木坂46小川彩奥田いろはによる「やさしさに包まれたなら」は、武部氏たっての希望で実現した。

 「ユーミン(松任谷由実)が10代の頃に書いた楽曲で、50年以上前に作られた『やさしさに包まれたなら』を、レコーディングの時点で10代だった彼女たちに歌ってほしいと思ったんですよね。世代を超えてこの歌が歌い継がれていくことはユーミンも望んでいることでしょうし、僕もそのお手伝いができたらいいなと思いました。ちなみに、小川彩さんにはピアノも弾いてもらっています。以前、『超・乃木坂スター誕生!』(日本テレビ)という番組で、僕が彼女にピアノを教えたことがあって、横浜アリーナのライブで小川さんのピアノにのせて奥田さんが歌う、ユーミンの『春よ、来い』を披露したことがあったんです。そのパフォーマンスを僕も現地で見ていて、絶対このふたりにユーミンの曲で参加してほしい!と熱望しました」

 一方、「地球儀」はPenthouseの強いリクエストで選曲された。

 「Penthouseはいま目覚ましい活躍をしているバンドですよね。僕がパーソナリティを務めているラジオ番組にゲストでお招きして話したことはあったのですが、一緒に作品作りはしたことがなかったんです。『地球儀』は、彼らのリクエストで選んだ曲です。オリジナルを歌っている米津玄師さんに対するリスペクトがひしひしと伝わる1曲に仕上がりました」

 アイナ・ジ・エンドの「はにゅうの宿」も、彼女の申し入れで決まったという。

 「『火垂るの墓』にいたく感動したというアイナさんからこの曲を歌いたいとリクエストがあったんです。しかも、彼女はレコーディングスタジオでは録りたくないと言って、生活音やいろんな音が入った状態で、なんならスマートフォンで録りたいという話もありました。結果的に、下北沢のリハーサルスタジオで、僕はピアノを弾いて、アイナさんは床に座って歌って一発録りをしました。彼女のロックな雰囲気やリアリティも出た曲になったと思います」

 「ひこうき雲」を歌ったGLIM SPANKYからは、パイプオルガンを使いたいという要望があったと語る。

 「『ひこうき雲』はユーミンの楽曲の中でも、教会音楽の影響を受けた歌。パイプオルガンとも親和性が高いのでぜひ使おうということになったのですが、パイプオルガンの設置されているコンサートホールの使用料が高くて! でもパイプオルガンを諦めきれずにいたら、たまたまパイプオルガンのあるリハーサルスタジオをスタッフが見つけてくれて、レコーディングできたんです。ロックと教会音楽が融合した曲になりましたね」

 数多くのトリビュート作品を手がけてきた武部氏の経験とアーティストの力が融合したことによって、新たな魅力が開花した楽曲も多い。

 「『上を向いて歩こう』は、この曲がリリースされた60年代当時のムードを出しつつ、いまのDa-iCEのふたりが歌うモダンな感じをミックスしたいと思ってアレンジしました。玉井詩織さんには僕が手がけた『コクリコ坂から』の『朝ごはんの歌』を歌ってもらって、まさに朝に聴いたらぴったりの曲になったと思います。Kalafinaが歌った『Arietty’s Song』も3人のハーモニーを頭に思い描いて色付けできました。森崎ウィンくんの『世界の約束』も、彼の声にはジャジーでスウィングしたテイストが合うのではないかと思ってアレンジしたんです。どの曲もなかなかいいバランスが取れたのではないかと自負しています」

■コンサートも開催決定 ライブで魅せるジブリの世界

ジブリ音楽への愛を再び形にした武部聡志

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 1980年代からの付き合いという薬師丸ひろ子は、「いつも何度でも」を歌った。

 「昨年、久しぶりに彼女のコンサートの音楽監督をお引き受けして、ツアーの音楽をすべてアレンジし直して、薬師丸さんとの距離がまた近づいたんです。この機会に僕のプロデュース作品にも参加してほしいと思って『いつも何度でも』を歌っていただきました。彼女の透き通った歌声が堪能できる1曲になりましたね。ちなみに、薬師丸さんにオファーしたあと、NHK連続テレビ小説の『あまちゃん』つながりというわけではないのですが、のんさんのご参加が決定しました。プレーンな彼女の歌声と、SOIL&“PIMP” SESSIONSのファンキーな演奏が絶妙に掛け合わされて、最高の1曲になったと思います」

 にんじん(from ロクデナシ)とは初のタッグを組んだ。

 「いまはYouTubeやTikTokなどSNS上でバズるアーティストも多いですよね。その界隈で注目されているアーティストもピックアップしたいという想いがあり、にんじんさんにご参加いただきました。彼女の歌に合わせて僕がピアノを弾いて、同時録音で『サヨナラの夏〜コクリコ坂から〜』を制作したのですが、たぶんにんじんさんはこのレコーディング方法は初挑戦だったと思うんです。いろいろな現場の形があるということを若いミュージシャンに体験してもらいたいという気持ちもありました」

 曲順は、レコーディングをしていくうちに自然と決まっていったと振り返る。

 「1曲目の『風になる』は大原櫻子さんが歌っています。彼女はいまミュージカルや舞台にも出演していて俳優としても活躍していますが、デビュー当時のさわやかさや軽やかさを再現したいなと思って、この曲でパフォーマンスをしていただきました。できあがった彼女の歌を聴いた時、これは1曲目に決まりだなと確信しましたね」

 全14曲のちょうど真ん中にはインストゥルメンタルの「テルーの唄」が収録されている。

 「葉加瀬太郎さんの持ち味は“歌うバイオリン”だと思ったので、彼にはインストゥルメンタルの楽曲ではなく、歌詞のある歌を演奏してほしいと考えたんです。しかも、メロディが難しくてテクニックを必要とする曲ではなく、シンプルなメロディを歌うようにバイオリンで奏でてもらって、彼が弾く音色と表現を堪能していただきたいと思ったんです。それを狙って『テルーの唄』をセレクトしました。僕と太郎くんが同時に演奏して、お互いにOKテイクと思えるまで演奏したものを収録しています」

 そして、epilogueの「いのちの記憶」は武部氏のピアノソロだ。

 「『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』といった爆発的な人気作品と比べると、隠れた名作とされる作品かもしれませんが、『かぐや姫の物語』の『いのちの記憶』、名曲なんです。いつかこの曲を何らかの形でカバーしたいなとずっと思っていました。今回、アーティストの方が歌う曲の中には入らなかったので、すべてのレコーディングを終えてから最後に僕が弾きました」

 3月には、東京と大阪で『ジブリをうたう コンサート その2』も開催する。

 「コンサートには、アルバムに参加してくださったアーティストの方以外に、オリジナルアーティストとして加藤登紀子さんに出演していただきます。加藤さんが歌う『紅の豚』の『さくらんぼの実る頃』と『時には昔の話を』を、観客の皆さんに聴いていただきたいんです。そして、NEWS増田貴久さんも、昨年、彼のソロアルバム『喜怒哀楽』をお手伝いしたご縁から、今回のコンサートに出演してくださることになりました」

 膨大な時間とエネルギー、そして数えきれないほど大勢のスタッフがかかわって丁寧に制作されるスタジオジブリ作品だから、世界中にファンがいるのだろうと、武部氏は分析する。そんな彼が手がけてきた音楽も、熱量や愛情がたっぷりと込められているものばかりだ。「青臭いようだけれど、それこそが人の心を動かすはずだと信じている」と照れながら語っていたが、本作を聴けば、約50年間、ピアノを弾き、アレンジを手がけ、さまざまなアーティストとコラボレーションをしてきた武部氏のジブリ音楽への愛、そしてアーティストへの敬意がひしひしと感じられるだろう。

取材・文:森中要子

■Various Artist スタジオジブリ トリビュートアルバム
『ジブリをうたう その2』
2026年2月25日リリース

武部聡志プロデューによるスタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう その2』

武部聡志プロデューによるスタジオジブリ トリビュートアルバム『ジブリをうたう その2』

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【収録曲】
01. 風になる/大原櫻子(映画『猫の恩返し』より)
02. やさしさに包まれたなら/小川彩& 奥田いろは(乃木坂46)(映画『魔女の宅急便』より)
03. 上を向いて歩こう/大野雄大花村想太(Da-iCE)(映画『コクリコ坂から』より)
04. いつも何度でも/薬師丸ひろ子(映画『千と千尋の神隠し』より)
05. ひこうき雲/GLIM SPANKY(映画『風立ちぬ』より)
06. 地球儀/Penthouse(映画『君たちはどう生きるか』より)
07. テルーの唄(Instrumental)/葉加瀬太郎&武部聡志(映画『ゲド戦記』より)
08. 朝ごはんの歌/玉井詩織(ももいろクローバーZ)(映画『コクリコ坂から』より)
09. カントリー・ロード/のん×SOIL& “PIMP” SESSIONS(映画『耳をすませば』より)
10. さよならの夏〜コクリコ坂から〜/にんじん(from ロクデナシ)(映画『コクリコ坂から』より)
11.Arrietty’ s Song/Kalafina(映画『借りぐらしのアリエッティ』より)
12. はにゅうの宿/アイナ・ジ・エンド(映画『火垂るの墓』より)
13. 世界の約束/森崎ウィン(映画『ハウルの動く城』より)
epilogue
14. いのちの記憶(Instrumental/武部聡志(映画『かぐや姫の物語』より)
全14 曲収録

■武部聡志プロデュース『ジブリをうたう コンサート その2』
2026年3月13日(金)東京国際フォーラム ホールA(東京都)
2026年3月20日(金・祝) 大阪国際会議場 メインホール (大阪府)
【出演】大原櫻子、加藤登紀子(東京公演のみ)、Kalafina、GLIM SPANKY、玉井詩織、浪岡真太郎・大島真帆(Penthouse)、増田貴久、森崎ウィン

■『ジブリをうたう その2』特設サイト:https://ghibliwoutau.com

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  • 3月には東京と大阪で『ジブリをうたう コンサート その2』も開催
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